Imperfect Beauty of Vintage Eyewear

GIGLAMPSに聞く ヴィンテージアイウエアの美しさ

昨今人気が上がり続けるヴィンテージアイウエア。現行品とは違った魅力に惹かれて、コレクションをする人々もいるが、その魅力とは一体何なのだろうか。都内でも随一の品数とクオリティで高い評価を受けるヴィンテージアイウエア専門店、GIGLAMPSのオーナー松島慶祐に、現行では味わえないヴィンテージアイウエア独自の魅力について聞いた。

中目黒銀座商店街を抜けた雑居ビルの2Fにひっそりと店を構えるGIGLAMPS。コンパクトな店内に所狭しと並んだ希少かつ高品質なヴィンテージアイウエアの数々からは松島のこだわりを見ることができる。現行品は一切身につけないという彼が、ここまで心惹かれる理由は何なのだろうか。話を聞いていくと、そこには値段と希少性以上の“アイウエアとしての面白さ”が垣間見えてきた。

ヴィンテージアイウエアの
価値基準

「GIGLAMPSをオープンしたのが約16年前。それまではヴィンテージアイウエアに限らず、RRLや古着や革靴、スニーカーの販売や卸売も行っていました。当時から好きでヴィンテージアイウエアを集めていましたが、今のように専門店として経営できるほど認知度は高くなかった。この10年でアメリカンオプティカルをはじめ、ヴィンテージアイウエアの価値や“身につけるもの”としての理解は大きく上がったと思います。
ヴィンテージには様々な価値基準があります。時代を遡るほど手工業的アプローチが増え、流通量は自然と減るため希少性は高まります。また50年代頃までのフレンチヴィンテージに限っては現代のものに比べると小さめサイズが主流で、現存する個体では現代の日本人に合う大きさのものは少ない。セルフレームであれば、サイズや水分量、油分といった見えない部分のコンディションによって、同じ形でも価格は数万円から数百万円まで開きが出ることも稀にある。特に工業化が進む以前は、日用品というより特注品やビスポークとして作られたものも存在しており、それらの一部のスペシャルなものに関しては限られた人しか所有できませんでした。すると絶対数もサイズも限られ、かけて“かっこいい”ものを探す難易度は一気に上がります。
1950年代から1960年代頃のアメリカ製のものは1940年代から1950年代のフレンチヴィンテージと比べると比較的大きいサイズの個体が多く、現代人によりフィットするため結果的に需要が高くなり価格が上がりやすい。こうした諸条件の中で、自分に合う一本を探す。それはヴィンテージアイウエアの大変さであり、同時に一期一会を楽しめる魅力でもあります。
アイウエアは日用品なので、ディスプレイだけでは意味がない。掛けてかっこよく、飾っても様になる。ヴィンテージ探しは、デザイン・品質・価格すべてに納得のいく一本を探す“旅”のようなものなんです」。

GIGLAMPS
東京都目黒区上目黒4-9-2 NAKAMEGURO GALERIA 2階
03-6412-7958
店舗内にはデッドストックのアイウエアが所狭しと並ぶ。ヨーロッパからアメリカまでラインナップは幅広く、価格帯も10万円台から揃う。倉庫には店頭に出ていないストックもあるとのことなので、会話を楽しみながらベストな一本を見つけてほしい。
未完成だからこそ生まれる色気

ヴィンテージアイウエアにはそれぞれ個性があるが、特に着用者が感じるのは独特の“色気”だろう。知識がなくても「これは現行品ではない」と直感的にわかる、その唯一無二の魅力について松島は語る。
「ヴィンテージアイウエアの大きな魅力の一つは、各時代を生きた人々が生み出したデザインやアイディア、センスを生活の一部として身につけられることだと思います。1910年代に手工業品として始まり、50年代以降は工業製品として確立していった歴史を、肌で体感できる。美術品のような手作業が光るものから、現代まで廃れず受け継がれている普遍的な形のオリジナルまで、アイウエアという存在を通して時代の価値観に触れられるんです。
特にアイウエアは顔に近いアイテムだからこそ、細部にこだわらなければならない。そうした時代ごとのディテールを感じられるのも魅力です。また、当時のアイウエアには現代に比べて“技術的な不完全さ”があり、それが大きな魅力だと思います。
フレーム自体がアシンメトリーであったり、良い意味での歪さがあったりする。その不揃いさが人間的な温もりや愛嬌を作り出している。

1910s-1920s AMERICAN OPTICAL 14K ALL SOLID WHITE GOLD CORTLAND MASTER GRADE FULL ENGRAVED SEMI OVAL ROUND HAND MADE IN USA 42/24
第一次世界大戦後の好景気に湧く1910~1920年代に掛けてアメリカで特注品とし作られたであろう本作。14金のホワイトゴールド金無垢のボディに手彫りの彫金が施された豪華な1本は、まさに当時アイウエアが日用品であるとともに美術品としても重宝されていたことが伝わる1本になっている。ホワイトゴールドの金無垢のアイウエアの流通自体が稀な現代において、手彫りが施されている希少性はさることながら、小さいサイズのものが主流の当時のものとしては非常に珍しい一般的なアイウエアのサイズ感に即したサイズ感の一本というところもその希少性の高さの理由となっている。
Sun Glasses ¥3300000 by GIGLAMPS

1930s-1940s FRAME FRANCE 3DOT THICK FRONT KEY HOLE CELLULOID PARISIAN 42.5/25 HAND MADE IN FRANCE
アメリカ製タートオプティカルの名作FDRの源流とされる、1930~40年代フランス・オヨナ周辺の小工房で手作業で作られた芯なし3ドットパリジャン。タートオプティカルのアーネルにもどこか似た面構えのシェイプに、肉厚な6mmのキーホールフロント、3ドット鋲、芯なしテンプル、ドーム型の蝶番金具など黄金期のフレームフランスの職人技が凝縮されている。セルロイド生地の美しさとハンドメイド特有の温もりある不揃いさが魅力的。保存状態も完璧で、現在では入手困難なこの時代のフレームフランスの最上級フレームとして資料的価値も極めて高い。
Glasses ¥1386000 by GIGLAMPS

現代のアイウエアは技術が発達した分、そうした愛嬌が削ぎ落とされてしまっている気がします。その点ヴィンテージは、意図しない不完全さによって人それぞれの顔に自然と馴染んでいく。人間的な温もりや歪さがあるからこそ、左右非対称な顔に自然と調和し、結果として現行品にはない色気をまとわせてくれる。
ひとつひとつの形が違うヴィンテージアイウエアは、自分に似合う一本を見つけるのに時間がかかるかもしれませんが、見つけたときには一生の相棒になってくれるはずです」。
好きなブランドを選ぶのも良いが、選択肢としてヴィンテージを取り入れるのも面白い。価格もデザインも幅広いヴィンテージの世界では、同じ形でもサイズやディテールの違いによって多彩な選択を楽しめる。自分だけに似合う一本を探す過程は、まるで宝探しのように心をときめかせてくれるだろう。

1950s TART OPTICAL ARNEL – early type – DEMI AMBER size44/22 MADE IN USA
USA製オリジナルのタートオプティカル アーネルのアンバーカラーの中でも、1950年代頃の初期の頃のみ存在した透明感のあるアンバー生地を用いた初期製造のデッドストック個体。透き通った飴色ベースに濃いデミ柄が差した生地は一般的によく見るアンバーの個体とは雰囲気が全く異なった、奥行きのある芸術的な造形美を持っている。サイズも44/22のゴールデンサイズ。真のヴィンテージ&アメリカンカルチャー愛好家に捧げられる究極の一本とされる。
Glasses ¥3300000 by GIGLAMPS

1960s OLIVER GOLDSMITH “ZOOK” ORIGINAL BLACK size48/22 HAND MADE IN FRANCE
特にミッドセンチュリー期頃のオリバーゴールドスミスはヴィンテージ眼鏡の中でも最もコレクタブルなジャンルであり、その中でもトップクラスの完成度と再評価が近年なされつつある、当時のオリバーでも非常に珍しい”フランスメイド”の「ZOOK」。ブラウン管テレビを想起させる通称テレビジョンカットに加え、球体のような丸みを帯びた成形がなされた8mm厚フロントや極太テンプルなど、当時だからこそ可能だった圧巻の造形美を体現している。ブラック生地の個体に関しては、当時のオリジナルでもこれまでこの個体しかその存在が確認されていないほど稀少で、深い黒の高密度生地にデッドストックという奇跡的条件が揃う珠玉の一本。歴史的価値を備えた特別な個体といえるだろう。
Glasses ¥1980000 by GIGLAMPS
Photo  Junpei KatoText & Edit  Katsuya Kondo

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