JIMMY CHOO Interview with SANDRA & POGGY
JIMMY CHOO 小木基史(POGGY)と描く 新しいストーリー

2011年にローンチされたJIMMY CHOOのメンズコレクション。
2026年よりメンズラインのスタイルキュレーターにPOGGYを迎え、
メンズラインの本質の追求とさらなる進化を目指す。
「伝統的なイギリスの靴のマナーを守りながら、あくまでもモダンにアップデート」する。
ブランドのこれからについて、クリエイティブ・ディレクターの SANDRA CHOI とPOGGYの2人に聞いた。
ーーー まずはSANDRAさんに質問です。メンズラインのスタイルキュレーターとしてPOGGYさんといっしょにやりたかった理由を教えてください。
SANDRA(以下S):私はJIMMY CHOOのブランド全体を統括している立場でもありますので、やることは本当にたくさんあります。同時に、私のバックグラウンドはどちらかというとウィメンズ寄りでもあります。
メンズコレクションは2011年にローンチし、反応も良かったのですが、ウィメンズとメンズでは世界観も作り方もまったく違うと私は認識しています。使うランゲージが全然違うんです。
今回あらためてメンズコレクションに取り組むにあたって、もっと深い知見を持つ必要があると感じました。
そして、「なぜ、これだけ世の中にシューズがあるのに、まだシューズが必要なのか」ということを、自分自身に問いかけるタイミングでもありました。
ウィメンズは、美しいとか、キラキラしているとか、そういった表現が比較的しやすい部分がありますが、メンズはもっと狭いというか、より厳格で、使う言語がまったく異なります。
そう考えたときに、POGGYはファッションにも詳しく、何より、ものづくりや文化、スタイルに対して非常に強いこだわりを持っている方だと感じました。
彼が大事にしているのは、クラシックや伝統、そしてものづくりに対する深い見識です。
そこが非常に重要だと思いました。
また、ファッションだけでなく、文化、デザイン、アートなど、さまざまな分野での経験と知見を持っているという点も大きな要素です。
そしてもう一つ、今回のプロジェクトではビジュアルも新しくしていきたいという思いがありました。
メンズコレクションの存在感を、より立体的に、より鮮明にしていきたい。そのためにも、彼と一緒に取り組みたいと思いました。

ーーー POGGYさんは、JIMMY CHOOをどういう風に、進化させたいと思っていますか?
POGGY(以下P):2011年にJIMMY CHOOのメンズが初めて立ち上がったとき、僕はユナイテッドアローズでバイヤー兼ストアディレクターとして買い付けをさせてもらっていました。
そのとき、ストレートチップのようなクラシックなシューズがありながら、スリッポンタイプのスニーカーもあったりして、両方が共存しているのがすごくいいなと思っていたんです。
僕がロンドンをすごく好きなのは、サヴィル・ロウやジャーミン・ストリートのようなメンズファッションにとっての聖地がありながら、今のストリートカルチャーや音楽も同時に存在しているところ。
その“共存”がロンドンの魅力だと思っています。
だからこそ、その感覚をもう一度、今の時代にフィットした形でやっていきたい。
今はいろんなブランドが、ベーシックなものに変化をかけて、さらに変化を重ねて……その上にまた味付けをする、みたいな流れもあると思うんです。でも僕は、もっとシンプルで、少し味わい深いものを一緒にやりたい。
ちゃんとトラディショナルに根ざして、こねくり回すんじゃなくて、きれいに今の時代にフィットさせる。
それはイギリスの企業だからこそできることでもあると思っています。
伝統的なイギリスの靴のマナーを守りながら、現代のカルチャーやライフスタイルに根ざしながら自然にアップデートしていきたい。
それが、自分が考える進化のかたちです。

ーーー 今回発表されたキャンペーンヴィジュアルにはPOGGYさんを含め 3名のキャストが登場していますが、どんな視点で選ばれていますか?
P:クラフトマンシップを大切にしながら、同時に今のストリートカルチャーとも密接に、ちゃんと地続きで生きている人、というのがひとつの軸です。
それだけではなくて、日本の良さだったり、日本人の影響を受けている部分をどこかに持っている人。
そういう側面を持っている方々を、今回選んでいます。
伝統を理解しながらも、今という時代の空気の中でリアルに生きている人。
そういう人に、新しいJIMMY CHOO MENSを履いてもらいたいと思っています。
S:コミュニティーとしてブランドをつくり、進化させていく。そのコンセプト自体が、まず素晴らしいと思いました。今回の二人はものづくりをされています。デヴォンさんはスピーカーを制作していますが、私は彼らを単なる作り手というよりも、アーティストだと思っています。
デヴォンさんは、素材やスピーカーのサイズ、サウンドといった要素を組み合わせながら、一つのものを作り上げていく。その方向性がとても明確な方です。
何を作りたいのか、どういうものを作っていきたいのか、それをどのように表現していくのか。そのビジョンがはっきりと見えている人だと感じています。

小島鉄平さんは、盆栽というと日本では比較的ポピュラーなイメージがあるかもしれませんが、彼の素晴らしさは、最高のものを作るために“育てていく”という細やかな姿勢にあると思っています。そして従来の盆栽の枠にとどまらず、圧倒的にモダンな表現へと昇華させていることが伝わってきます。
その姿勢は、単に盆栽というコンセプトを超えたところにあるものだと感じました。

なぜ今回この二人を選んだのかというと、メンズブランド自体を表面的なデザインを超え、より深いコンセプトをもって育てていくという姿勢に共鳴したからです。それが結果としてブランドの世界観を強固にすることにもつながっていくと考えています。
そして、これはメンズだけの話ではありません。
ウィメンズにも同じ思想のプラットフォームとして広げていく可能性があると思っていますし、今回の二人の参加は、その最初の一歩だと捉えています。
POGGYは、テイストをつくり、メソッドをつくり、ルックを構築していくという点で本当に素晴らしい仕事をされています。まだ彼が手がけるブランド〈DEAR BORO〉のデニム工場には伺っていないのですが、ぜひ一度訪れてみたいと思っています。

P:僕は全然知らなかったんですけど、今『生きがい(Ikigai)』という本が世界で話題になっているらしいんです。日本に住んでいた外国の方が書かれた本だと聞いています。
お金は稼いでいるけれど、生きがいがないという人が世界中に多くて、いかに生きがいをもって生きることが大切かという内容のようです。そういうテーマって、もしかしたら今グローバルに多くの人が感じていることなのかもしれません。
今回のキャンペーンに登場してくれたメンバーは、みんな明確な生きがいを持っている人たちです。
自分が何を作りたいのか、どう生きたいのかがはっきりしている。
そういった部分も、ブランドの思想として自然に伝わっていけばいいなと思っています。
ーーー キャストの方々もJIMMY CHOOのものづくりの精神に共鳴して出演されていると思いますが、SANDRAさんにとって、そしてJIMMY CHOOにとってのクラフツマンシップのコアとは何でしょうか?
S:やはり、原材料がしっかりしていなければ、良いものは作れないと思っています。
素材にはとてもこだわりますし、その原材料が自分たちの作りたいものと本当にマッチしているかどうかを理解することが重要です。
例えば、すごくソフトなものを作りたいのに、ハードな素材を使ってしまえばうまくいかない。それと同じ原理です。ですから私は、まず素材のチョイスをとても大切にしています。
現在もクリエーションの大部分をレザーで制作していますが、それは非常に幸運なことだと思っています。一方で、ソールのコンパクトな部分にはイノベーションも取り入れていますし、この20年間でスニーカーの革新は非常に大きなものでした。
クラフト、つまりものづくりにおいて重要なのは、各プロセスをきちんと理解していることだと思います。
画家に例えるなら、一つの作品を完成させるには、絵の基礎知識が必要ですし、色と色を混ぜたときにどのようなグラデーションが生まれるのか、そうした要素を理解した上で全体を構築していく必要があります。
基礎を理解して初めて、クリエイティブは成立する。
そしてその理解があるからこそ、ものづくりに対する“尊敬”が生まれるのだと思っています。
ーーー イギリスには伝統的で優れた靴ブランドが数多くありますが、それらのブランドと比較して、JIMMY CHOOが優れていると自信を持てる点はどこにあると思いますか?
S:今まさにPOGGYと一緒に取り組んでいるということもありますが、やはりイギリスという国からの影響は大きいと思っています。
メンズにおいて私が重要だと考えているのは“男性らしさ”です。
その男性らしさは、素材や作り方の中に宿るものだと思っています。
JIMMY CHOOは多くの方にとってはレッドカーペットやグラマラスなイメージがあると思います。そのエッセンスを男性のライフスタイルに落とし込んでいくこと。それが私たちの個性ではないかと思っています。
2011年の最初のメンズコレクションで、タッセル付きのスリッポンを発表しました。POGGYさんも覚えていらっしゃると思います。あのモデルによって、JIMMY CHOO MENSのイメージがある程度固定された部分もあるかもしれません。
今でも、そのイメージを維持するためにタッセル付きのモデルを出した方がいいのではないか、と考えることもあります。しかし、私たちのブランドのDNAは、やはり英国の伝統にあります。
だからこそ、メンズコレクションでは次々と新しいものを出してサイクルを速めるのではなく、少しスローダウンして、長く愛していただけるスタイルを作っていきたい。
トレンドを追うのではなく、続いていく形をつくること。
そこに、私たちの強みがあると思っています。
P:まさにそれが、これからのメンズコレクションを確立していく上でのキーになるのではないかと思っています。 そして基本的にイギリスの靴というと、やはりどこか硬さがありますよね。伝統的で、真面目で、構築的で。でもJIMMY CHOOには、どこかにソフトさや華やかさがある。 そのバランスが大事だと思っています。 真面目すぎず、でも軽くなりすぎない。 そして華やかさがある。 それはウィメンズからスタートしたJIMMY CHOOだからこそ持っている感覚ですし、SANDRAが持っている魅力的な部分でもあると思います。
ーーー どんな人たちにJIMMY CHOO を履いてほしいですか?
S:私は女性なので、メンズのコレクションを自分で履くことはないのですが、ウィメンズの場合はリピーターの方がとても多いんです。それはやはり履き心地の良さがあるからだと思っています。
ハイヒールのように一見履きにくそうなものでも、実際にはとても履きやすい。そうやってシューズとの関係性が生まれ、また戻ってきてくださる。
メンズでも同じように、履くことでブランドとの関係性を築いていただき、自然とリピーターが増えていけば嬉しいですね。
P:そうですね。伝統的なものが好きというだけではなくて、音楽やカルチャーが好きだったり、自分なりの美意識を持っている人。
そして、生きがいがある人。
自分の生き方を靴に乗せていける人に履いてほしいですね。
英国の伝統を守りながら、静かにアップデートする。
単なるプロダクトではなく、生き方を映す一足へ。
JIMMY CHOO は今、その意味を深めながら、
新しいメンズシューズの価値観を静かに築きはじめている。
| Interview & Text Takuya Chiba |












