Luft shop
自在に形を変容する 各地の作り手たちが集う場所 [ルフトショップ/セレクトショップ]
那覇市壺屋。沖縄の新旧文化が共存する浮島通りには魅力的なお店が立ち並ぶ。この通りに入ってすぐの所にルフトショップはあった。出迎えてくれたのはデザイナーの真喜志奈美と桶田千夏子。ルフトショップは二人が共同で運営するデザイン事務所“Luft”から生まれた場所。ベルリン、ソウル、東京を経て、10年前に故郷の沖縄に拠点を移したという真喜志はこう話す。「自分たちがデザインしたものをここで販売するという形が徐々にできてきて、地元の方はもちろん、観光でいらっしゃる方々にも来ていただけるようになりました。最近は私のことを知っていらっしゃる方もいたりして、思わぬ方向にいろいろと広がっていくのを感じています。沖縄の人と繋がりたいという思いが始まりだったのですが、結果的には沖縄に限らず、いろいろな方と楽しいことを共有できる場所になりつつあります。空間の使い方をいろいろ試せる実験室のような場所ですね。沖縄の作家の発表の場所となったり、時にはDJブースになったりあるいはキッチンカウンターになったりという風に。そういう自分たちのライフスタイルに合った人たちを招いたイベントを通して、この空間の使い方を変容させることにも喜びを感じている今日この頃です(真喜志)」。桶田はこの場所の魅力を“気軽さ”だという。「ここはすぐそこに市場があるなど、沖縄では珍しく歩いて回れるようなエリアなので、地元の方であれば鰹節を買いに行くついでにちょっと寄っていただけたり、旅行の方もよくいらっしゃる場所なので、何かのついでに足を運んでもらえる。ここだけを目的にするというよりは、複合的な理由で寄っていただけるような気楽な場所を目指しています(桶田)」。
ラワン合板を使用した “LAUAN SHELF SQUARE” など、Luftが手掛けてきたプロダクトはどれもミニマルで美しい。そんな素敵な品々に出会えるのもこの場所の魅力だ。では二人が考えるプロダクトデザインとは一体何だろうか。「日々の道具を作ることですね。毎日そばにあっても目障りでないものを今の感覚で作るということを心がけています。既視感があるものを作ろうと常に考えているんです。見たことがある、どこにでもありそうだけど、なぜか惹かれるから持っておきたいみたいな。そういう感覚で私たちの製品を買ってくれる人がいるんです。実は私が作るものって賛否両論あって、ありそうなものを一見何の努力もしないで作っているように見える。でもものすごく深いところでは何周も何周も考え抜いていて。それは精神的には大変かもしれない。でも、本当に共感してくれる人が頼んでくれるのですごく楽しいんです(真喜志)」。「デザインっていろんな視点があると思うんですが、その昔に聞いた、“デザインは整理”というすごく印象的な言葉があって。例えばこの場所で展示をするとき、作品自体や作家の魅力がスッと伝わるように、余計なものをそぎ落とすこともあるし、何かで包み込む場合もあるかもしれない。その本質というか核の部分が見えるようにいろいろな角度から考えて、それを抽出していくこと。それは自分たちの仕事にもすごく活かせるし、それをまた人とも共有できると幸せだなと思います(桶田)」。洗練されたプロダクトが並ぶルフトショップには、地元民から各地の作り手までが集う。目的に合わせて自在に形を変容させるこの場所は、沖縄の新たなクリエイティブスポットと呼べるだろう。
Luft shop
沖縄県那覇市壺屋1-7-16
098-988-1391
@makishi_luft
Photo Yu Zakimi | Interview & Text Shuntaro Iwasaka |