Interview with Shuhei Uesugi (Actor / Musician)
表現者、上杉柊平に聞く 東京のクリエイティブスポット
上杉柊平
東京、世田谷にルーツを持ち、俳優として華やかな舞台で活躍しながら「KANDYTOWN」のメンバーとしてラッパーとして一面を持つ表現者、上杉柊平。音楽やファッションといったカルチャーに深く根ざし、独自のセンスであらゆるシーンから確固たる支持を集めている。そんな彼のクリエイティブな才能を引き出す東京の魅力とはどういったところなのだろうか。
変わりゆく良さと
変わらぬ良さの共存
「東京ってブロックごとにカルチャーやスタイルが全然違う。昔からずっと変わらない街の部分と変化していく街の差がすごいなと感じてます。海外の人からしたら東京っていうひとつのシティかもしれないですが、実際に住んでみるとすごく細分化されていて。エリアごとにもっと区別していいほど僕にとっては興味深い街ですね」。
変わりゆく良さと変わらぬ良さが共存し、実にさまざまな表情を持つ東京。その絶妙なアンバランスさが独特な雰囲気や文化を生み出している。世田谷をローカルに持ちながら異なるカルチャーや、街のコントラストを楽しむ上杉にとって欠かせないエリアが常にカルチャーを生み出していく街、渋谷だ。
「東京でどこが面白いかとなったら渋谷は外せないですね。昔、働いていた場所や通っていた大学、そして遊びを覚えたのも渋谷だった。そこで出会った人たちと今も一緒にいますし、そういった方々に育てられてきたことが、自分のベースにも影響してると感じてます。世界的に見ても常に新しい情報が飛び交っていて、街の変わり方も早いし、外を歩いているだけで世界の情報をいち早く知ることができる。人のスタイルが区別できる街は多いけど、渋谷には多様な個性が集まっていて本当に独創的な街だなと思います」。
最先端カルチャーを
発信する特別なスポット
こうした最先端の情報が交差する環境に揉まれ、そこに行き交うさまざまな人との出会いを大切にしながらスタイルを模索してきた上杉だが、歳を重ねるごとに年々渋谷を訪れる機会は減ってきていると話す。そんな中、彼を再び呼び戻すきっかけとなった特別なスポットがある。それがミュージックバー、不眠遊戯ライオンだ。80年代の某百貨店を彷彿させるどこか懐かしくも非日常的な雰囲気が広がる店内には、アートピース、本格なカクテルに世界基準のサウンドシステムが洗練された空間を彩っている。
「この場所に来たのは、あまり渋谷に来なくなっていた時に、KANDY TOWNのDJ MASATOとDJ MinnesotahがDJをしていたイベントに顔を出したのがきっかけでした。入った瞬間内装にしびれましたね。それ以来いつもお店に来た時はバーカウンターに座って、ひとりでゆったりとお酒を楽しみながら少し人と話して情報を収集したりしています。この場所は流行に敏感な人が多いですね。ファッションや音楽、どんなジャンルにせよ、そういうのに一番敏感で、最先端を追ってる人たちがここに集まっている。そういった人たちの中でも、ただ流行を追いかけてるわけじゃなく、それぞれのベースを大事にしながら先を見据えてる人々が交差してるんです。だからこそ興味深い話をいろいろ聞くことができますし、影響されることもあります。例えば先輩方がやっている新しいプロジェクトのことだったり、異なるジャンルの人たちが繋がって新たなクリエイティブを生み出したりとか、この場所では常にさまざまな化学反応が起きているんです。でも基本的には外からの情報が直接的に自分のアウトプットに繋がることってないんですよ。きっと間接的には影響されてるんですけど、誰かのマインドに引っ張られることは本当になくて。多分自然と何らかの形でアウトプットされてる部分はあるし、さまざまな人の助言が僕の活動の原動力になってるのかもしれない。でもそれは自分の意識とは違うところで発生しています。誰かに憧れることが僕はないからこそ、いろんな人の話を聞いたり、本を読んだり、映画を見たりっていうことが現在の自分を間接的に形成してると思います。今はコロナの影響もあってあまり来れてないですけど、個性豊かでクリエイティブなマインドを持った人々が入り混じるライオンは、東京のこれからのシーンを創造する場所になっていくと思います」。
距離を置くからこそ
見えてくる東京の魅力
東京を拠点に活動し続ける上杉だが、いつかは東京から離れて変わりゆく街の姿を俯瞰的に眺めてみたいと言う。進化のスピードが早い街から距離を置くからこそ、普段見失いがちな風景や物事を再認識することができるのだ。そしてそれが新たな魅力の発見に繋がっていく。
「僕は脱東京がしたいです。2時間ぐらいでできる脱東京。ずっと住んできたからっていうのもありますけど、たまに来て知る東京のおもしろさも分かってるんで。自分の中でやりたいことが固まってる部分がたくさんあるから、ちょっと離れて懐かしいなって感じられるようなところに行きたい。そしてインプットしたものを一回整理してアウトプットできるようになったらまた来るぐらいの拠点にしていきたいですね。これからの東京の変化に関与せずに生活するっていうのは理想なのかもしれないです。そうなったとしても絶対にまた戻ってきますし。やっぱり東京に来る理由って人に会いに来ることだと思います。自然と人を引きつける力が東京にはあるんです」。
人との繋がりを通してさまざまな情報をインプットしてきた上杉だからこそ感じられる東京のおもしろさがあるようだ。昨今、東京を離れて生活をする人々が増えつつあるが、そういった行動が東京の地理的な枠を超え、定義としての東京、まさしくNew Tokyoを生み出していくに違いない。
上杉柊平
俳優として活躍する一方で、東京を代表するヒップホップクルー、KANDYTOWNのメンバーとしても活動中。音楽シーンはもちろんファッションシーンなどその活動は多岐にわたる。
Photo Yusuke Yamatani | Interview & Text Shunya Watanabe |