ASASHI (Hair Stylist)
身体の一部になった感覚 ASASHI (Hair Stylist)
アメリカンスピリットが宿る名作、ベンチュラ。ダイヤルの中央にある稲妻マークは世界初の電池式腕時計であることを象徴している。ベルトはフレックスブレスレットのため着脱がしやすく、ゴールドアクセサリーのような個性も強めている。
無意識に惹かれるのは
いつも50年代のもの
硬派で男らしいアットラストのデニムセットアップで揃えたコーディネート。腕元に光るゴールドのハミルトン ベンチュラ。ヘアスタイリストのアサシはブレることなくこのスタイルを貫き、自身がオーナーを務めるバーバーの店先や撮影の現場に立っている。彼が愛用するベンチュラは、1957年に誕生し、盾をモチーフにした左右非対称の革新的なデザイン性や、世界初の電池駆動の腕時計であることから時代を超えたマスターピースとして時計史に名を刻んでいる。キング・オブ・ロックンロールことエルヴィス・プレスリーも愛用していた逸話を持つベンチュラだが、その魅力をアサシはこう話す。「昔からロカビリーや50年代のものが好きなのですが、マニアのように情報に詳しいわけではなく、純粋に心が惹かれたものを手に取るとたまたまそういうものであることが多いんです。アンティークマーケットに行っても、気になって手に取るのは50年代のものばかり。
このハミルトンのベンチュラは友人が着けていたものなのですが、かっこいいなとずっと思っていて、彼が手放すタイミングで譲ってもらいました。トライアングルのシェイプはほかにないですし、周りに着けている人をあまり見かけないのもいい。手に入れてから知ったのですが、デザインしたリチャード・アービブはアメ車の代表格であるキャデラックをデザインした鬼才で、私が好きな50年代の古き良きアメリカの世界観と通じていたんです。その事実に驚くと同時に、だからこの時計に惹かれたのだと納得しました。憧れのプレスリーもベンチュラを着けていたということさえ後から知りました」。
もはや身体の一部
好きな世界が一貫しているからこそ、必然のようにベンチュラのデザインや存在感に惹かれたアサシ。ゴールドの色合いも魅力だという。「ベンチュラのゴールドは少し鈍いというか、50年代の時代感があるゴールドで好みの色です。私は目の色が薄く肌の色は若干濃いので、シルバーよりゴールドの方が馴染むと思っています。だからといってどんなゴールドでもいいというわけではない。ベンチュラのゴールドは洗練されていてセクシーな印象があるので好きなんです。個性的なデザインはカジュアルな洋服にアクセントを加え、スーツのように引き算のスタイリングをするときに着けてチラッと袖口から見えるのもかっこいいなと思います。もう10年以上使い続けているのですが、着け忘れてしまった日は身体のバランスがどこか崩れるような感覚さえあります。かっこいいなと憧れて手に入れましたが、もはやファッションスタイルというよりも、身体の一部のようでさえあります」。憧れていたものがいつしか自分の一部になる感覚。それは自分の“スタイル”になったということ。アサシのベンチュラが輝いて見えるのは、ファッションであること以上にスタイルになっているからなのだ。
アサシ
ヘアスタイリスト。1998年に渡英し、ファッション誌やファッションショー、広告など幅広い分野で活躍。虎ノ門のオフィス街の一角には「ASASHI BARBER TORANOMON」を構える。
@asashibarber
Photo Masato Kawamura | Interview & Text Yutaro Okamoto |