EXHIBITION “New Approaching to Different Journey”

ジュエリー、服、写真、家具、音楽で 表現するENCOMINGのプロジェクト

制作途中に存在する
未完成な美しいもの

英国でファッションデザインを学んだデザイナー加藤大気による新進気鋭なブランド“ENCOMING(インカミング)”。春夏と秋冬、年に2回発表されるコレクションとは別にインカミングではシーズンレスに、加藤が気の向くままに手掛けているプロジェクトの第二弾が発表された。

今回、インスタレーション空間として発表される当プロジェクトは、ジュエリー作家Satsuki Sasagase (サツキ ササガセ)の笹ヶ瀬皐と共作したジュエリー、そしてそれを撮影したフォトグラファー工藤佑斗の写真、インスタレーションの場所であるes quart galerie(エスコートギャラリー)の家具という様々な要素の表現によって、10月28日(土)から開催される。

今回のプロジェクトとして加藤が用いたタイトルは、“New Approaching to Different Journey”という。直訳して、様々な旅への新しいアプローチを意味するこのタイトル。これには、加藤がブランドをスタートした2020年より続けている“素材への探求”との繋がりを感じるタイトルである。加藤に今回、笹ヶ瀬とジュエリーを作った経緯を聞くとこう答える。

「インカミングでは、制作途中のプロセスをどう具現化するか、を考えて普段からものづくりをしています。そんな中、笹ヶ瀬さんと出会い、彼がジュエリー作りで行う制作のアプローチに共感をしてコラボレーションが始まりました。洋服だけではなく、すべてのプロダクトには制作する過程があり、完成はされていなくても“綺麗なもの”や“どこか惹かれる部分”というものがあると僕は思っています。今回のコラボレーションを通して、少しでも色々な方々にそうした“目には見えない価値”を感じてもらい、それぞれの解釈で考えてもらえるきっかけになってほしいと思っています(加藤)」。

工藤佑斗が撮影した、いくつかの静物写真を観るとザラザラとしたテクスチャーを感じるリングとそれを作る途中で発生したであろう“型”の残欠のようなものが写し出されている。笹ヶ瀬は、普段から表情が豊かなテクスチャーのジュエリーを生み出しているデザイナーだが、今回のコラボレーションはどう表現したのか。

「自分で作品を作るときは、元々のアイディアにフィットするような素材を探しています。インカミングでは、生地の段階から洋服作りをしているのですが、そこに共感をして、原型に使う素材を作るところからスタートをさせました。実際に加藤さんが服で使っている生地そのものを型としてリングを作っています。生地によっては、リングを作る上で扱いづらいものがあって、特徴を噛み砕いて試行錯誤をすることが難しく、それが新たな発見に繋がりました(笹ヶ瀬)」。

不均一な生地の型から生み出されたリングのテクスチャーは、計算し尽くせないからこそ生まれる自然で繊細な美しさが表れている。写真家の工藤は出来上がったリングを観て、「作品そのままを素直に撮るべきだと感じた」と話している。裏話だが、インカミング、サツキ ササガセ、そして今回の展示会場であるエスコートギャラリーのそれぞれの写真をこれまでも撮影してきたのが工藤であり、今回のコラボレーションを撮影することは自然なことであったようだ。

今回のインスタレーションは、10月28日(土)からエスコートギャラリーにて開始される。初日は、オープニングとして、Maya Ongakuによる演奏もあるようだ。オーガナイズされた空間の中で、気鋭のアーティストたちによるジュエリー、服、写真、家具という表現のコラボレーションを体感してみてほしい。

会期:10/29 (日) – 11/5 (日) 12:00 – 19:00
10/28(土)はフリーエントランスでオープニングイベントを16:00-19:00
で開催。

場所:es quart Galerie 東京都台東区千束3-4-3

ENCOMING
デザイナー加藤大気。1993年生まれ。2021年春夏シーズンから始動。ロンドンのキングストン大学を卒業後、ニコラスデイリーにてシニアデザイナーとして2年間勤務の後に帰国。日常的な普遍的要素を、アートを通じ、違和感を投じる。”Something Weired”をブランドテーマとし、シーズン通して製作を続ける。 @encoming_official

Satsuki Sasagase
ジュエリー作家として活動。”多くの試行錯誤や実験的な切り口から生み出される作品群は、予測不可能な性質をもち、まるで自然が一時として同じものではいられないように、違う表情をもちます。変化し続けていく空間や形状、素材感の追求、歪さの中に潜んでいる美しさをジュエリーとして落とし込む。 @satsukisasagase

Yuto Kudo
フォトグラファー。1983年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。 松原博子氏に師事の後に、2016 年独立。 @youtojah

es quart / Sadanori Suzuki
1988年生まれ。2012年にセットデザイナー松本千広に師事後、Object d artにてマネージャーとして勤務の後、2020年にe s quartとして独立。展示企画、内装デザインやインテリアコーディネート、商品開発を経験し、現在は、esquartにて、海外からアンティーク家具の販売を中心に国内外の コンテンポラリープロダクトのセレクト販売や、オリジナル家具の商品開発を行っている。 @esquart_galerie

Photo Yuto KudoText Takayasu Yamada

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