undyed THE NORTH FACE

ザ・ノース・フェイスの 無染色素材のみのコレクション

UNDYED COLLECTIONという名前の通り、染色工程を行っていない素材を使用したコレクションがザ・ノース・フェイスより発表された。ブランド創業当初から変わらない「DO MORE WITH LESS ‒最小で最大を成す‒」をデザインフィロソフィーに掲げ、機能性や利便性、デザイン性の共存を追求し誕生するウェア群は、私たちの生活をより豊かにしてくれるとともに、着る人がそれぞれ環境保護に対して前向きに考えるきっかけを作り出してくれるプロダクトでもある。

そんな自然と向き合い、接してきたザ・ノース・フェイスからリリースされるからこそ説得力のある無染色のアイテムは、ブランドが提案する今の時代を見据えたNew Classicなプロダクトであることは間違いない。その詳細を本コレクションの企画・製作を担当したザ・ノース・フェイスライフスタイルグループマネージャーの西野美加に話を聞きながら紐解いていく。

無染色素材のみを使用した
New Classicなコレクション

ブランドの定番とも言える三層のゴアテックス素材を採用。主素材はリサイクルポリエステルの表素材を使用している。生地の強度や防水性能は従来のゴアテックスプロダクトと同様のパフォーマンスを実現している。
Jacket ¥36300 by THE NORTH FACE
気付きのきっかけを
与えるプロダクトを

「NEVER STOP EXPLORING」というタグラインの元、近年では『Exploration(冒険)』をさまざまなシーンで喚起させる製品企画や活動を行なっているザ・ノース・フェイス。極地での機能服やクライミングなどのいわゆる冒険を連想させるシーンのみならず、日常の生活の中でも様々な冒険をしてもらいたいという、ライフスタイルに根ざした意味合いも含まれている。

UNDYED COLLECTIONは、まさにそんな人々の日常に寄り添ったコンセプトが投影されている。「製品の企画を行なっていた2020年春あたりはコロナで外出もままならず、製作スタッフの中でも環境や社会に対して貢献できるものを開発したいという気持ちが高まっていました。アウトドアブランドでは環境配慮素材でデザインすることは当たり前になっていて、まずは製品が魅力的であること、ザ・ノース・フェイスらしい機能が搭載されていることを優先して開発しました。お客様が商品を手に取ってみたら実は環境配慮素材だったというように、意識的に選ばなくても、自然環境に良い商品をより人々の日常に落とし込み、身近に感じて欲しいという考えがコレクション開発の糸口となりました」。と西野は言う。

そうした考えの下開発を進めていく中で、これまでブランドとしても未開拓であった染色というキーワードが浮上してくる。「多くの洋服は染色の工程において、洗い加工によって余分な着色料や糊を落としたり、大量の水を使います。世界的にみてもアパレル業界が一二を争うほどに水を汚染してしまっているのは有名な話ですが、水の汚染をいかに減らせるかと考えた時に、無染色の素材や後加工で染めないパーツを使い少しでも貢献できるのではと考えたんです。水は世界的に見ても、石油などと同じように戦争や紛争の原因になる可能性が十分に考えられる資源となってきています。今までブランドとしてはカーボンオフセットの観点から環境保全に尽力してきましたが、今後は水という資源に対して向き合うフェーズに来ていると考えています。世間の数多くの方々に知っていただいているブランドであるからこそ、私たちが環境に対して先導してアクションをしていく必要があるんです」。

アパレルを扱うブランドが環境問題に立ち向かっていくのは微力であるかもしれない。でも誰かがアクションを起こせば、人々の気付きに繋がっていく。ザ・ノース・フェイスはサステナビリティのパイオニアとして、そんな誰かの気付きとなるプロダクト、人々の新たな日常にとってNew Classicとなるプロダクトを開発しているのだ。

今回のコレクションではブランドロゴを刺繍やプリントで施すのではなく、素材の凹凸を生かしたエンボス加工であしらった。不必要な素材は使用していないことからも、ブランドコンセプトの「DO MORE WITH LESS」の考え方を徹底して突き詰めていることが分かる。ザ・ノース・フェイスのプロダクト研究・製作を行う富山県にあるゴールドウインテックラボには、こうしたエンボス加工のプロをはじめ、あらゆるプロフェッショナルが在籍している。本アイテムもブランドが誇る優秀な開発チームの手によって試行錯誤を経て作り出されたものだ。
過去のプロダクトをベースに
最新の技術を用いてアップデート

「ジャケットは本来、数種類のパーツをつなぎ合わせて作るのが一般的ですが、2010年代にトライアンフジャケット(愛称折り紙ジャケット)という極限まで素材のパーツ数を減らしたジャケットをリリースしました。そうすることで肩の縫い線が少なくなるので防水性能も高めるというのが狙いです。根本のサステナビリティの考え方に技術を駆使することで、日常生活において気の利いた機能性をプラスしていく。そこがUNDYED COLLECTIONのコンセプトと非常に親和性があり、アノラックジャケットのボディのベースには折り紙ジャケットを応用したパターンを採用しています」。

デザインは機能性と表裏一体でなければならないという、ブランドのモノづくりにおける考え方。アウトドアやスポーツを起点に派生するデザイン哲学が根底にあるからこそ、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインに落とし込まれる。ポケットの数なども必要最低限あれば、日常生活を十分快適に過ごすことができるだろう。日常生活において人々が着用するシーンがちゃんと考え抜かれた結果が、デザインにも反映されていることがよく分かる。

「折り紙ジャケットのように、ザ・ノース・フェイスには長年培ってきた経験とノウハウがあります。10年程の時を経てボディを新しくアップデートして現代に甦らせるように、プロダクト自体も持続可能でありロングライフなんです。基本的にはこれからリリースされる新商品は環境配慮素材でないと採用しないと決めています。環境配慮素材で今までの素材以上の機能性を担保していくのは非常にハードルが高いですが、次の世代にアパレルの可能性を繋げていくために歩みを止めるわけにはいかないんです」。

技術の追求による新素材の開発、新しいプロダクトのリリース、そのすべては、ブランドが環境とともに歩んできた歴史であり、アウトドアブランドとして創業以来自然との共存を続けてきた証でもある。 UNDYED COLECTIONはTHE NORTH FACEが持てる技術を結集した現時点におけるNew Classicなアイテムであり、10年後または次の世代の人々が、New Classic を作り出していく礎となっていく。ここが最終到達点ではなく、あくまでこれからも紡ぎ続けていく偉大なる歴史の通過点に過ぎないのだ。

ザ・ノース・フェイスが2011年に開発したトライアンフジャケット(愛称折り紙ジャケット)。下はパターンのイラストであるが個別の素材ではなく、繋がったパターンを折り紙のように折り合わせることでジャケットが形作られていくのがよく分かる。

Hat ¥7150 Jacket ¥38500 by THE NORTH FACE
Pants ¥11000 by Vintage (CASE)
Shoes ¥178200 by J.M. WESTON(J.M. WESTON AOYAMA)

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◯THE NORTH FACE
https://www.goldwin.co.jp/tnf/

Photo Genki NishikawaStyling Shuhei Yamazaki (P151)
Model Moctar (P151)
Edit Shohei Kawamura

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