The Future of Fashion CFCL

無駄を削ぎ落とした CFCLの革新的なものづくり

環境問題への意識が高まる現代において、かけがえのない自然の魅力について改めて意識することが増えたのではないだろうか。自然と触れ合うこと、五感で感じられるもの、人間らしいプリミティブなテーマを持ったモノやコトは、今の時代に欠かすことのできない心の贅沢と言える。そうした中で、自然環境に対して負荷が多いアパレル産業なだけに、多くのブランドやメーカーが問題意識を掲げて実践を行っている。環境に配慮した生地を使うことは当たり前になりつつある今、プリミティブなものと向き合う新しいアイディアやテクノロジーも進化をし続けているのだ。そうした先を行くコンセプトを持って作られるプロダクトをこの章では紹介。これからの時代におけるもの選びの1つの指針になれば。

無駄を削ぎ落とした
革新的なものづくり

ホールガーメントによって作られたニットは、縫製によるつなぎ目がない。陶器のようなシルエットが特徴的なポッタリードレスはファーストコレクションから継続的に制作しているブランドの顔とも言えるニットドレス。これも国際認証を取得した再生糸を使用し、環境への配慮を行っている。
無駄を削ぎ落とした
革新的なものづくり

環境問題を意識することはいいことではあるが、そうした企業やブランドが増え、最近は上辺だけのサスティナブルを問題視するグリーンウォッシュという言葉が囁かれるようになってきた。どれだけ実際に循環型社会に向けてコミットしているのか、消費者はなかなか真実を知ることができないこともあり、難しい問題ではある。そんな中で、昨今注目を集めるBコープという認証制度。企業が与える公益性に対して、アメリカ、ペンシルベニア州に拠点を置くNPO団体、Bラボが行っている認証制度であるが、その判定は非常に厳しい。日本国内では、まだ認定された企業はごく僅かな中、今年7月に日本のアパレルで初めてBコープを取得したブランドがCFCLだ。代表兼クリエイティブディレクターの高橋悠介は、イッセイ ミヤケ メンの元デザイナーであり、本質を見極める革新的なものづくりは折り紙付きである。

「服造りではいつも本質とは何か?と自分自身で問い続けています。例えば、シャツをデザインするとなったらいわゆる西洋的なシャツのディテールを思い浮かべるのではなく、人間がまとうものとしてデザインをするというのが本質的です。コップで言えば、水を口に運ぶものとして捉える。そうやって深掘りをしてデザインをするということは、これだけ服が溢れている時代に服を作るという意味において非常に重要です」と高橋が話すように、CFCLは世に溢れる様々なブランドと比べると異色といえる。コレクションのラインナップをファーストシーズンから今季までニットのみで構成しているCFCLであるが、シーズンごとに原料調達から廃棄に至るまでの商品のライフサイクルにおける二酸化炭素排出量の測定など、透明性確保に向けた取り組みを報告するレポートを、ウェブサイト内で“CONSCIOUSNESS”として発信をしている。CFCLのニットは主にiPadを用いてデザインされ、3Dコンピューター・ニッティングによって、パタンナーを介すことなく出来上がる。糸をそのまま服にするこのシステムは、裁断というプロセスがないから、余りが出なく合理的だ。糸も再生素材を積極的に用い、チームにはCSO(チーフ・ストラテジー・サスティナビリティ・オフィサー)を加えるなど環境問題や持続可能なサプライチェーンへの意識はとても高い。

「環境問題への取り組みが当たり前になった現代において、問題になっているのがグリーンウォッシュ。自分達が、これは環境に良いと思っていても、違う側面で別の問題になっていることはよくあることです。例えば合成皮革などのイミテーションレザーもそうです。一時期、エシカルファッションがトレンドとなり、今まで一般的にレザーを使用してた商品にも動物の犠牲を伴わないイミテーションレザーが、エシカルという謳い文句とともに多く登場しましたが、リアルレザーと比較して耐久性が劣ると言う話を耳にします。つまり、同じ商品でもレザーよりもイミテーションレザーの方が使用できる期間が短いため、多くのゴミを出す事になります。ほかにも環境に優しいと謳われている繊維が、実は生産工程で有害な化学物質を使用しているという話も耳にします。そういうことって、お客さんはもちろんですが、僕も専門家ではないのでわからないじゃないですか。だからこそ、環境問題などに詳しい方をチームに入れて、サプライチェーン全体を把握し、客観的に数値化する必要があるんです。Bコープを取得しようと考えたのも、第三者機関の厳しい審査を受けて、太鼓判を押してもらうことが信頼度に繋がると思いました。それに、今後はBコープを持っているのが当たり前の時代へと変わってくると思います。だからこそ、改めてブランドのコアとして必要となるのは、洗練されたデザインであることだとおもいます」。

一般的なファッションブランドのオフィスとは一線を画す、シンプルなCFCLのオフィス。ブランドのアイテムをニットに絞るからこそ実現できる合理的なオフィスで、高橋はiPadを用いてデザインを行う。
現代的な生活に沿ったニットで
社会と繋がるものづくりを行う

現代生活のための衣服”をコンセプトに掲げるCFCLであるが、高橋は自身が作る服に限りなく作り手のエゴは出さない。服の表面にはロゴが見当たらなければ、削ぎ落としたデザインが魅力だ「。われわれのブランドには理想の人物像はありません。ですが、ペルソナは存在します。どういう人が着てくれるのかを考えながら服作りを進めています。CFCLの服は、その人にとって『薄皮』のようなものでありたいと思っています。現代のライフスタイルは日々進化している訳ですから、いらないものも多くなってきているはずです。例えば、数年前はポータブルプレイヤーや財布、カメラ、PCなどを持ち歩く必要がありました。ですが今は、それら全てがスマートフォンに集約されています。そうすると、たくさんのポケットが不必要になり、必然的に服の形も変わってくるはずです。」そうしたCFCLのペルソナである、現代生活を送る人々の姿を伝えるプロジェクトがある。CFCLのウェブやインスタグラム上で公開されている、“シルエット”というプロジェクトは、高橋と親交のある人々に服を着てもらい、写真家の蓮井幹生によって11×14という大判フィルムカメラでポートレートを撮影。そこには、狂言師の和泉元彌や研究者の成田悠輔、Chim ↑ Pom from Smappa! Groupのエリイ、デザイナーの三原康裕などジャンルを越えた錚々たる面々が出演する。その誰もが、高橋が「現代生活を自分らしく生きていく力」を感じる人々である。着るものとしての本質に向き合い、削ぎ落としたからこそ人の内面が表に現れる、そんなCFCLの服作りがこのプロジェクトにも表れている。テクノロジーを駆使しながら、現代の社会問題に向き合うCFCL。だが、その根底には、人間らしさや生活に沿った衣服という本質的なテーマが込められているのだ。まさに、Silver今号のテーマである、フューチャープリミティブをこのブランドから感じられる。

高橋悠介イッセイ ミヤケ メンのデザイナーを経て、2020年3Dコンピューター・ニッティングを主軸とするCFCLを開始。21年春夏にファーストコレクションVOL.1を発表。22年秋冬シーズンよりパリ・ファッションウィーク公式スケジュール上でコレクションを発表している。

◯ CFCL
https://store.cfcl.jp/

Photo Kei SakakuraInterview & Text Takayasu Yamada

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