Hand Me Down Watches Nanaka Yotsuya (ATTISESSION Director)

気張らず身につけたい 毎日のお守り

良い時計は数十年、数百年と時間を超えて長く愛されていく。時を経る過程で誰かから誰かへと引き継がれる時計たち。見知らぬ誰かではなく、大切な人から受け継いだ“おさがり時計”には、鮮明な記憶が刻まれ、宿る思いもいっそう深くなる。その背景にはどんな時間と、どんなストーリーがあるのだろうか。

四谷奈々可
1998年生まれ。文化服装学院ファッション流通専攻科を卒業後、ユナイテッドアローズに入社。販売員として経験を積み、2024年春夏シーズンから新たにローンチしたATTISESSIONのディレクターを務める。

手から手へ、大切に受け継がれる時計の話

Première Ref.H0001 (1987) by CHANEL
from Mother

「母がちょうど今の私と同じ27歳の時に購入したこの時計を数年前に受け継ぎ、そこから毎日欠かさず身につけています。本当は専門学校を卒業して社会人になる節目の時に母が譲ると言ってくれたのですが、その当時は自分の身の丈に合っていない気がして断ったんです。ですが実際に販売員として働きだすと、接客中はiPhoneはストックルームに置いておくようにしていたので時間が確認しにくく不便に感じていました。そこで母に『あの時計、やっぱり欲しい』と伝え譲ってもらったんです。販売員を卒業し、ディレクターという立場で目上の人と打ち合わせや会食の場も増えた中で、時間を確認するのは腕時計の方が失礼がないので、時計を着けていて良かった、と感じる場面も多々あります。また、この時計はドレスアップスタイルに合うのはもちろんですが、スウェットやデニムなどカジュアルな服装とも相性がいいので、オンオフどちらのスタイリングにもフィットするように感じます。私は髪型も高校生の頃からずっと変わらないし、リングもブレスレットもネックレスも毎日同じものを着けているので、時計も毎日寄り添ってくれるお守りのようなものとして着けているような面が大きいかもしれません。母は買い物が好きな人で洋服をたくさん持っていましたし、祖母は洋裁の先生だったこともあり物心がついた頃からファッションに興味を持っていました。ワードローブの中には、母と祖母から譲り受けた服もたくさんあります。この時計を着けはじめて7年目になりますが、ベルトのレザーがちぎれてしまっているところがあるので修理に出したいと思っています。ラグジュアリーで品がありタイムレスなデザインのこの時計を大事に使い続けて、自分に子どもができた時にまた引き継げたら良いですね」。

Photo    Asuka ItoInterview & Text    Aya Sato

Related Articles