I DREAM OF CHRISTMAS NORAH JONES

ノスタルジックな幸福感溢れる ノラ・ジョーンズのクリスマスソング

I DREAM OF CHRISTMAS
NORAH JONES


ノラ・ジョーンズがクリスマスアルバムをリリースすると知り、まるで思い描いていた物を形にしてもらったような、嬉しい気持ちになった。ピアノの音色と奏でられるあのスモーキーな歌声は、まさにクリスマスのムードにぴったりだ。ちょうど一年前はPJモートンの「Piano Album』を紹介していたけれど、その時同じタイミングで気に入っていた『Christmas With P.J.Morton』というアルバムがあった。そのアルバムもとても好きな作品で、去年の冬にによく聴いたレコードの一つだった。好きなアーティストがクリスマスアルバムをリリースするのは嬉しいし、何よりもその時期にしか聴けないというような特別感が、気分を高めてくれる。

ダニー・ハサウェイの「This Christmas」、ジョン・レノンの「Happy Christmas」、ヴィンス・ガランディのスヌーピーのクリスマスOST、フィル・スペクター・ワークスのアルバム『A Christmas Gift For You』どれも毎年耳にしたくなる大好きな名曲の数々。ジャズのボーカリスト達やディーン・マーティンなどが歌うオーセンティックなクリスマスソングもこの時期に欠かせない。ロック、ソウル、ジャズ、どのジャンルにも数え切れないほど沢山のクリスマスソングがあって、シーズンが終わったら次の出番はまた来年になってしまうのだけれど、クリスマスという限定された日のために聴く音楽は、毎年恒例の楽しみのひとつとして豊かな時間を楽しませてくれる。

昨年の冬のロックダウンの時に、ジェームス・ブラウンや、エルヴィス・プレスリーのクリスマスソングを聴いて気分をを落ち着かせていたというノラ・ジョーンズ。馴染みのあるそれらの曲によって自分が安心感を得ていたことに気がつき、自身でのホリデイアルバム制作に至ったという。2020年に4年ぶりのフル・アルバムとしてリリースされた『Pick Me Up of the Floor』はオリコン年間ジャズランキングで見事一位を獲得し、今年4月には初のライブアルバム『Till We Meet Again』もリリースするなど、近年も益々活躍が注目される中で制作されたこのホリデイアルバム『I Dream of Christmas』は、彼女にとっても新しい挑戦となった。

プロデューサーには『Pick Me Up of the Floor』などでも共演を果たしたレオン・ミッチェルズが起用され、カヴァーとオリジナルソングを織り交ぜた構成で作られている。「White Christmas」や「Winter Wonderland」など、誰もが耳にしたことのある定番曲のアレンジから、幸せなクリスマスを願う「Christmas Calling (Jolly Jones)」、ゆったりした幸福感に満ち溢れた「Christmas Don’t Be Late」、冷え切った心も身体も優しく包み込むような「You’re Not Alone」など、心温まるオリジナルソングが多数収録され、大切な誰かを想ったり、通じ合うことのできる喜びが表現されている。

子供の頃みたいに、朝起きたらサンタクロースからのプレゼントが、なんてことは当然ないのだけれど、その時にも感じていた喜びや幸福感のようなものは大人になっても大切にしたいものだし、子供の頃から耳にしてきた馴染みの音楽には、心地のいい安心感を感じさせてくれる。『I Dream of Christmas』は、家族や恋人、仲間達との幸せな時間を尊び、平和な将来を祈るノラ・ジョーンズからの素敵な贈り物となるだろう。

Norah Jones
1979年3月30日生まれ、ニューヨーク出身のシンガーソングライター。ジャズの名門、ブルー・ノートから2001年にデビュー。9つものグラミー賞を受賞し、ジャンルに固執しない新しいジャズのかたちで幅広い世代からの支持を集めている。

Photo Taijun Hiramoto Select & Text Mayu Kakihata

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