Interview with TAKU (Hair Stylist)

ヘアスタイリストTAKUが考える 世界に誇る東京のホスピタリティ

未完成な街だからこそ、チャレンジできる魅力
TAKU

突き抜けた独自の審美眼で、人々の個性や美しさを探求してきた世界が認めるヘアスタイリスト、TAKU。ファッションの歴史の中でも革新的なスタイルを生み出したと言われる90年代のロンドンで活動し、日本にベースを移した今もなおヘアスタイリストの最前線をリードする存在だ。そんな彼が手掛けるヘアサロン、CUTTERSは、著名人からトレンドを意識した若者まで幅広く支持され続けている。New Tokyoというテーマで東京の魅力を探る今号には外せない存在だろう。東京、南青山の大通りから逸れた閑静なエリアに佇むCUTTERS。高度な技術とハサミひとつで人々を魅了してきたTAKUの目にはどのような東京の魅力が映し出されているのだろうか。

ワクワク、ドキドキするようなムーブメントを生み出したい

「東京は完成した街のように見えますけど、可能性がまだあると感じてます。昔は60年代のみゆき族や、80年代のロックンローラー族、竹の子族といったおもしろいカルチャーがあったけど、そういったムーブメントって今はないじゃないですか。だからこそ期待してる部分があるんです。このサロンを始めたきっかけもそうですし、ビューティーコレクティブの『VOW-VOW』というエージェントを立ち上げたのも、『ワクワク、ドキドキ』するようなクリエイティブを発信していきたいと思っているからなんです」。

TAKUにとって東京は心をワクワクさせてくれる街であり、新たなアイディアをアウトプットする場所でもあるようだ。そしてこの街に秘められた可能性が、挑戦できる場所としての魅力を生み出し、CUTTERSの原動力にもなっている。

「このサロンは、イギリスのパブやビストロをイメージしてデザインしました。8年前にオープンしたんですが、流行り廃りを感じさせない。サロンによっては5年くらい経つと古臭いなって思うところもあるじゃないですか。でもここは今のカッコイイものや、新しいものとかではなく、自分にとってのスタンダードを集約した場所なんです。そういった考えがインテリアに込められてます。自分が提案するヘアもそうでありたいし、10年先に見ても良いと思えるものを作り出したい。さらにここは僕にとってホームグラウンド的な存在であり、新たなムーブメントを生み出す空間でもあります。要するに人が集まる場所にしたかったんです。お客さんをサービスするだけではなく、美にまつわるワークショップであったり、さまざまな新しい挑戦をしていきたいと思ってます」。

東京が世界に誇るホスピタリティ

時代に風化されない普遍的なヘアスタイルを提案し、ハイスタンダードを大切にする。そんな彼の確固たる価値観は、東京が世界に誇るおもてなしの精神とも通ずる部分がある。

「ホスピタリティに関してはすごく考えました。お客さんをあまり歩かせたくないとか、パーマ液が垂れて洋服が汚れないようにオリジナルのガウンを着てもらったり、席に座ったままお金を払ってもらうとか。すべてのことに意味があって、自分が思いつくホスピタリティを追求しました。今はコロナの影響で行けてないんだけど、例えば、僕がよく行ってた帝国ホテルのオールドインペリアルバーなんかは、本当にほかのバーよりお酒が美味しくて、バーテンダーのサービスも最高ですし、何よりリラックスしてゆっくり会話を楽しめる。ちょっとお酒が入って酔っ払うとリラックスして本音が出ちゃう時ってあるじゃないですか。でも本音っていうのは結構大切だと思います。そういった喋りやすくなるような雰囲気をこのサロンでも意識してます」。

ヘアスタイリストとしてのみならず、美容師としても独自のアプローチで人々の個性や美しさを最大限に引き出し、喜びを生み出す。そのこだわりやチャレンジに無駄な要素は一切存在せず、むしろそういった考えが新たなムーブメントに繋がっていくのかもしれない。人々に「ワクワク、ドキドキ」を届けるためにヘアスタイリストとして一切の妥協はない。TAKUは、可能性に満ち溢れた東京でチャレンジしていくことの大切さを改めて教えてくれた。

TAKU
今も第一線で活躍する世界的ヘアスタイリスト。ファッション誌や広告以外にも、サロンCUTTERSを運営するなどその活動は多岐にわたる。
Photo Shunya AraiInterview & Text Shunya Watanabe

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