Interview with Lambda Takahashi (Stylist / R.M GANG)
スタイリスト髙橋ラムダが 考える東京の魅力
Silverでも多数のファッションビジュアルを手がけるスタイリスト、高橋ラムダ。コロナ以前から長く彼と仕事をし続けている我々は、彼のライフスタイルを見続けてきたが、ここ最近の様子を見るとガラッと変化があるようだ。以前は仕事に加え、街や飲みの場での遊びの時間を全力で楽しんでいたがコロナ禍をきっかけに激変したという。
「毎日、朝5時に目が覚めて、家の周りを掃き掃除。それが終わると1時間くらいウォーキングして、戻ってくる頃には子どもたちが起きてくるから、朝食を作って一緒に食べて、それから仕事。なので、22時くらいになるともう眠くて。人間らしいサイクルになってきました」。
高橋が自宅とアトリエを構える駒場は、都心であるにも関わらず公園が多く緑豊かで閑静なエリア。ウォーキングをしてもリラックスできる道が多いという。リラックスということが高橋にとっても大事なようで、散歩コースにある駒場のCBD(coffee)はよく立ち寄るスポットのようだ。車と違いゆっくりと街を歩くことは、興味の湧く店を見つけたり、入ることがしやすいのも魅力。
「車で動かなくなったことで、ランニングしたりウォーキングしたり、自転車で動くことによって普段通らない道だったり、車が入り込めないローカルな商店街を通るようになったんです。そうすると、昔ながらの洋品店だったり畳屋、バーバーとかの跡地を若い人がリノベーションして、古着屋や喫茶店にしている店を見つけることも多い。古くからある民家には、よく軒先に年代物の自転車が停まっていたりするんですが、気になったらドアをノックして『譲ってもらえないか?』と声をかけたり。そういうことを最近はよくしています。この間も三軒茶屋の商店街にある民家にTZRや古いバイクが停まっていたので、勇気を出して声をかけたら、『絶対ダメだね』と言われました。でも、『話を聞くよ』と言われ、家に上がって、その人と酒を飲みながら話をしていると、その人は昔、バイクのメカニックをやっていた人で、今はもうバイクを乗らなくなったけれど、思い入れがあるから譲れないということを言っていました」。
都市開発により街が綺麗になることが多い昨今だが、よく行くという三軒茶屋や池ノ上はまだそういった昭和の余韻が残っているエリアだ。高橋はそういった街を散策し、周りの音を聴きながら感覚を研ぎ澄ませて宝探しをしているという。
「コロナ前はそういう感覚をすっかり忘れていた。最近は子どもと過ごす時間も増えて、目線も下がってきたように思う。家の周りは自然も豊かなので、動物や虫を捕まえては生き物飼育にもハマっている。捕まえてきたザリガニ、金魚、鯉、カブトムシを飼っていて、庭のオレンジの鉢には蝶々やカマキリが来る。家の庭でできる範囲のことを今楽しんでいて、生き物もそうだし、自転車いじりや家庭菜園など、質素な楽しみですが今そういうことが一番面白いんです」。
庭で育ているトマトの色味が青から赤に変わった、カブトムシが孵化した、そういった小さな変化を家族と楽しむのが最近の充実した時間だと話す。そういった生活の変化は、自身がデザインするブランド“アールエムギャング”にも影響を与えているようだ。
「次の2021秋冬シーズンでは、子どもと遊んで汚れても気にならないくらい染色したスウェットのセットアップを作っていますし、かなりシンプルなアイテムも作っています。染色も、業者に頼むのではなく、地元で染めをやっている後輩に頼んで作ってもらったり、僕にとって本当に近いところでのものづくりをしています」。
特別どこかに行かなくても、家の周りでも見方を変えれば十分に楽しむことができる。今の東京だからこそ気づける豊かさを高橋は感じながら、街を遊び、クリエイションしているようだ。
高橋ラムダ
ジャンルを問わず様々なファッションをミックスする提案にファンの多いスタイリスト。近年は、自身のブランドR.M GANGやYoutubeチャンネルDELIVERY STYLINGなど表現の幅を広げている。
Photo Yusuke Yamatani | Interview & Text Takayasu Yamada | Special thanks CBD (coffee) |