C.P. COMPANY
帆に使われる防水生地を用いた シーピー カンパニーのガーメントダイ
Goggle Jacket
Stefano Polato
染色への挑戦をし続け
未来のアーカイブを作る
かつてから染色にこだわりを持つシーピーカンパニーだが、今季のコレクションには一段と驚いた。元々は帆船の帆に使われる防水生地である、ハリー・スティーブンソン製ワックスドコットン地で作ったウエアを染色していたからだ。同ブランドの代表的な染色技術に、ガーメントダイという、糸や生地の状態で染めるのではなく、服になってから染める技法がある。ガーメントダイによって染められた服は、同じ染料でも服に使われる部位ごとの素材の違いによって色の出方が変わってくる。
それによって生まれる色味は美しくユニーク。だが、生地によっては染まりにくいものもあれば、縮率が違うために染色による工程をコントロールすることはとても難しい。そんな同ブランドには、ファブリッククリエイターという役職がある。シーピーカンパニーにおいてファブリッククリエイターは、生地を作るだけではなく、デザインや営業面まで見る特別な役職。それだけ、同ブランドでファブリックが重要視されていることがわかる。ファブリッククリエイターを務めるステファノ・ポラトは、シーピーカンパニーの生地についてこう話す。
「私の主な役割は、服の機能性を高めることと同時に、美しく手触りの良い生地を作ることです。その為には、工業技術の知識と美的感覚を組み合わせることが重要。シーピーカンパニーが拘っている染色に対する情熱は、創業者であるマッシモ・オスティから続くブランドのDNAと言えます。マッシモ・オスティは、同じ色で商品を作り続けるという従来の生産ルールに従わず、自分達の色を作り出すことに努力を続けていました。ブランドを代表するガーメントダイは、工業規模では再現が難しい色合いを少量からでも作ることができ、ずっと自分のワードローブとして存在していたような生地の質感を出すことができるのです」。
新品なのに、まるで使い込んだような味のある雰囲気はガーメントダイだからこそ。ステファノ・ポラトが大切にするデザインの哲学は、生地作りにおいて「第二の皮膚を作ること」だと言うが、ガーメントダイをすることで着古したような質感が表れ、身体に馴染み、まさに人の肌とも言えるような自然な不完全さが生地に出る。しかし、染まりやすい無加工のコットンであればまだしも、化学繊維など染まりづらい生地にまで染色をする同ブランド。ましてや今期は、前述したようにハリー・スティーブンソンやゴアテックスといった、本来は撥水を目的に作られたために、染料を弾いて染めることが困難な生地にさえもガーメントダイを行っている。
「染料は衣服に使われる繊維によってたくさんの種類があり、実現したい色彩によって様々です。今回、ナイロン100%を使用した特殊生地であるゴアテックスと、ハリー・スティーブンソンのコットン100%を使用した生地に挑戦をしましたが、この2つは全く違う生地ではありますが、“相反するもの同士は引き合う”という考えで同じシーズンにこの2種類のジャケットを加えています。ハリー・スティーブンソンの生地はヴィンテージな雰囲気があり、ゴアテックスの生地はテクニカルな見た目ですが、どちらも雨風から身を守る為に作られ、そして深いアウトドア精神を持って誕生しています」。
染色方法については、企業秘密の部分が多いために詳しくは言及できないが、ステファノ・ポラトや科学者、職人など様々な分野の専門家が集い、絶え間ない研究と挑戦の結果、自社工場で染められる。創業から続く、このチャレンジスピリットには驚きだ。「一昨年でブランドは50年を迎えましたが、これからのシーピーカンパニーは新しい章が始まるわけでもなく物語の続きです。これからも完璧で、決して手放したくない衣服を探し続けていきます」とステファノ・ポラトが話すように、循環型社会によって、環境負荷が注目される現代において最も重要なことはモノを長く使うこと。
シーピーカンパニーの服は、ヴィンテージ市場でもアーカイブが人気を集めていることが物語っているように、これからも時を経ても手放したくない、それどころか価値が上がっていくような服作りを目指す。それこそが循環型経済の最良の方法であるとステファノ・ポラトは考える。「現代のテクノロジーを素材に使い、衣服の構築に活用をし続けます。ですが、作るのは機械ではなく、常に人であるということを忘れてはいけないと考えています」。
ステファノ・ポラト1987年、シーピーカンパニー入社。創業者であるマッシモ・オスティの元で、同ブランドにおける服作りを学び現在ではファブリッククリエイターとして活躍。デザインにまつわる全てのプロセスに関わる。
Photo Taijun Hiramoto | Translate Shunya Watanabe | Interview & Text Takayasu Yamada |
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Tristate Japan cpcompany.com
Photo Shunya Arai | Model Romain Styling Hayato Takada | Edit Takayasu Yamada Rikako Goto |