Aloha Blossom

心と身体を解放する 沖縄のハレ着 [アロハブロッサム/アロハシャツ]

Tギャラリーであるアロハ ブロッサム イン限定で販売されるコラボレーションモデル。左上から順に、陶芸家の野口寛斉の書の作品、那覇のレストラン バカールのオーナー 仲村大輔が描くアートワーク、そして真ん中がマスクメイカー/ソフトスカルプターである村山伸が手がけた「ヘイワ(平和)」ロゴをそれぞれ落とし込んだもの。どれも現地まで足を運んででも手にしたいアートピースだ。
アロハシャツ=メッセージ

メッセージの込められたグラフィックと、 職人の手作業による手捺染。冷涼な着心地の国内産最高級レーヨン生地に、ドレス生地のように細かい運針による縫製。一つ一つの工程に美学を持って作り上げられるこのアロハシャツは、“アロハ ブロッサム”という沖縄をベースにするブランドによるもの。同ブランドを率いるのは、沖縄生まれのロックバンド MONGOL800のフロントマン上江洌清作と、シューズを中心にものづくりを行うTomo&Coのディレクター小野崎朋孝だ。

「アロハシャツは日本からハワイに移住した人が、持っていた着物を現地でも快適に着るためにシャツに仕立て直したことがルーツだと言われています。やがてデイリーウエアやワークシャツとして浸透し、今ではハレ着として着られるまでに昇華されました。日本の東洋カルチャーとアメリカの西洋アルチャーがミックスされた、エキゾチックな存在です。受け継がれてきたルーツや育まれたストーリーを大切にしつつ、僕ら自身が着たいもの、伝えたいメッセージを織り交ぜてアロハ ブロッサムとして表現しています(上江洌)」。
アロハ ブロッサムのシャツ作りは、上江洌が日々の生活やミュージシャンとしての表現活動を通して感じたことをアイディアとして、ものづくりのプロである小野崎が形にしていく。「ハワイの人たちはアロハシャツを、気を引き締めるシャツとして大切に着ています。だから土産物屋に並ぶような大量生産的なものではなく、素材や質感、作りにこだわりたかったんです。アロハシャツはダブルステッチの環縫いでカジュアルな仕上がりのものが多いのですが、アロハ ブロッサムはあえてステッチを隠し、運針も細かくしてドレスシャツのように仕上げています。上江洌が表現したいメッセージを聞いて僕がグラフィックに落とし込むのですが、ドレスシャツのような生地にプリントするからこそ、遊びのあるものにしてバランスを考えています。アロハ ブロッサムのプリントの99%は手捺染(職人の手作業によって一枚ずつ染めていくシルクスクリーンの一種)です。日本の型染めの先駆者である芹沢銈介は、沖縄の琉球紅型に多大な影響を受けたという文脈を受け継ぎ、型染めである手捺染を選びました。ですが何よりも一番魅力的なのは、着心地が最高ということです。手捺染をすると生地の裏側まで染料が馴染み、染料の厚みの分だけ立体感となって通気性を生み、涼しい着心地になるんです。波打ったような独特の生地となり、どこか懐かしい日本っぽさのある仕上がりになります(小野崎)」。

ものづくりを通して
意識せずに平和に加担する

アロハ ブロッサムのシャツは、小野崎が作り上げたシャツをキャンバスとして、上江洌がメッセージを描いていく。またコラボレーションを積極的に行うのも特徴だ。「陶芸家の野口寛斉さんや、沖縄で人気のレストラン バカールのオーナーである仲村大輔さんなど、交流があり信頼を置く人たちからメッセージをお借りする気持ちでコラボレーションしてきました。なかでもマスクメイカー/ソフトスカルプターとして世界的にも活躍されている村山伸さんとのコラボレーションは特にメッセージの強いものとなりました。村山さんが生み出した『ヘイワ(平和)』というアイコニックなグラフィックをお借りしたのですが、これは一コマでシンプルかつ強烈にメッセージを放っていることが素晴らしい。日本人として訴えるべき『平和』を、わかりやすく、そして何層にも深みを持ってまとめられています。とはいえアロハシャツとして販売すると、商品となりビジネスとなるので、お金が発生する。そのお金も平和に貢献させられないかと考え、このシャツは沖縄にあるアロハ ブロッサムのギャラリー限定で販売するようにし、売上の一部をひめゆり平和祈念資料館(実は民間の経営で、収益の9割近くが修学旅行で賄われているため、コロナ禍では経営に大きなダメージがあった)に寄付することにしました。そうやって沖縄のブランドであることにさまざまな要素を結びつけていきました。ものづくりを通して平和に貢献できることを伝えたかったのです。だからこのヘイワ アロハシャツを身に纏うことは、意識せずに平和に加担することだと言えるのです(上江洌)」。アロハシャツを羽織ることは、メッセージを纏うこと。アロハ ブロッサムは柄の数だけメッセージを持つ。その表現に共感する人は年々増え、今年ブランド設立から12年目を迎えた。さまざまなカルチャーを取り込んできた沖縄のチャンプルー文化と、アロハ ブロッサムの自由な表現は切っても切り離せないのだ。

Left 沖縄県読谷村にアロハ ブロッサムは実店舗「アロハ ブロッサム イン」を構えている。春夏シーズンしかアイテムをローンチしないが、コラボレーションアイテムを作ったときなどに不定期でオープンし、コラボレーターとなるアーティストの作品を展示するギャラリーとしても機能する。「海の家のような感覚です。秋冬の間は仕込みをして、春夏でお披露目する。風情があるといえば風情がある。後付けはたくさんできますね(笑)(上江洌)」。 (Photo Aloha Blossom)
Right ハワイのコレクターズアイテムであるフラヘッド(フラダンサーの頭を模した置き物)をオマージュしたカンプーフラヘッド(カンプーとは琉球王朝時代の琉装の髪結いのこと)。スカルプチャーアーティストのマサスカルプが原型を作り、今号でも特集している沖縄のストア オールズが陶器として形にした。「ニッチかもしれないですけど、面白くて良いものを作り続けたいです」と小野崎が話すように、いかに自由にものづくりを楽しんでいるかが伝わってくる。 (Photo Taijun Hiramoto)
Photo Makoto Nakasone Taijun HiramotoInterview & Text Yutaro Okamoto

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