Sound Gadget
最先端のガジェットで楽しむ 音楽というプリミティブな存在
音楽は生活になくてはならないものだ。紀元前にはすでに楽器が作られ、社会性、民族性を反映させながら現代まで脈々と形を変えながら受け継がれてきた。まさに人間の暮らしと密接に関わるプリミティブなものと言える。現代ではその楽しみ方も多種多様で、ライブやコンサートの生演奏はもちろんのこと、スマホひとつあればヘッドフォンやスピーカーを使いどこでも気軽に音楽を楽しむことができる。プリミティブな音楽を先進技術によってどこでも楽しませてくれるガジェットはまさにフューチャープリミティブなものと言える。
先進技術の結晶
デザインとストリートの
天才による共作
そんなガジェットの中でも注目したいのが「Cell Alpha(=セルアルファ)」。身近な音楽体験を一変させる新しいプロダクトだ。まず目に入るのはこの特徴的なデザイン。プラスチック製のケースから透けるスピーカーユニットは本当に未来からきたのではないかと錯覚さえしてしまう。それもそのはず、このプロダクトは20年以上に渡り元アップルのインダストリアルデザイナーとして活躍したクリストファー・ストリンガーとDCシューズの共同創設者であるデイモン・ウェイによって生み出されたSyng(=シング)のもの。しかし、彼らが最も追求したのは未来的なデザインではない。
単純な音質の高さはもちろんのこと、注目すべきはトリフォニックサウンドと呼ばれるシングが独自に生み出した立体音響技術だ。通常のスピーカーには指向性があり、一方向に音が進んでいくのが一般的だ。この為、最も音が鮮明に美しく聞こえる位置はスイートスポットと呼ばれている。スピーカーの置く位置に迷ったり、スイートスポットに合わせ家具を配置する人もいるのではないだろうか。だが、セルアルファは部屋そのものの大きさや構造を認識しているため、部屋全体をスイートスポットに変えてしまう。これにより、まるでお気に入りの音楽の中心に自分がいるような体験ができるという。また、同社のアプリSyngSpaceを使えば驚くほど簡単にスイートスポットの位置をコントロールすることができる。
「アーティストとリスナーの境界線を曖昧にし、すべての人に新しい表現方法と創造的な聴き方を提供することを目指します」。クリストファー・ストリンガーはトリフォニックサウンドの技術を使って比類なき聴覚体験ができる世界を目指しているという。近い将来ライブ会場と同じ興奮を自宅のリビングで体験できる日もそう遠くはないのかもしれない。
ステージの衝撃を
ホームサウンドで
プロオーディオ用スピーカーの開発でその名を馳せるタグチ。スタジオコースト、ブルーノート東京、ベントなどこだわりの音を響かせるスペースのためのオリジナルスピーカーを設計してきた。このブランドの特徴はフラットな振動板を使った平面波スピーカー。この振動板を使うことにより、通常のスピーカーに比べ音波同士が影響しにくく、より自然に近い音の再生が可能になっている。小型のスピーカーから出ているとは思えないほど重厚な低音に加え、アーティストの息遣いを感じるほど繊細なサウンドはタグチだからこそ実現可能な最新技術が詰まっている。迫力の音を自宅で体験することができる至高のプロダクトになっている。
ミニマルテクノの帝王と
作り出した新技術
アイアイアイはデンマークに本社を置き、シンプルな見た目と確かな音質、パーツの組み替え可能なモジュラー型ヘッドフォンで有名なブランドだが、ここで紹介したいのは「ミニマルテクノの帝王」と言われるリッチー・ホウティンと3年の歳月をかけて共同で開発された「W+Link」という最新技術を搭載したモデル。通常起きてしまう無線での音の遅延を極限まで抑えることにより、楽曲制作やDJプレイをワイヤレスで行うことができる。ブルートゥースの発明移行なかなか発展がなかった技術だったがこれにより大きく発展を遂げ、ワイヤレスヘッドホンの可能性を広げてくれている。
自由にカスタム可能な
オリジナルスピーカー
ガラスとスピーカーユニットだけで構成され、もはやオブジェのような佇まいのトランスペアレント。シンプルでファッション性の高い見た目からインテリアショップなどにも置かれる同アイテムだが、一番の魅力は廃棄する必要がなく、アップグレードが可能な点だろう。全パーツが取り外し可能で他のパーツとの組み替えが可能な上、故障の際もその部分のパーツだけを交換すれば廃棄量を最小限に抑えることが可能だ。「使い捨ての消費者文化を根絶したい」と創業者が言うようにアップグレードをしながら半永久的に使い続けられるこのアイテムは環境問題が叫ばれる現在において、未来に目を向けた考え方を体現したものの一つと言えるだろう。
デザインと環境問題に
真摯に向き合う
バング&オルフセンは1925年に創業されたオーディオブランド。アート作品のような見た目は多くのファンを抱えている。ここで紹介する「Beosound Level」はブランドの象徴であるデザイン性はそのままに環境問題にも真正面から向き合った製品だ。製品パーツの交換が可能であり、数十年使い続けること出来るという。その無駄の生まれないシステムが評価され、新しい環境基準として普及している「Cradle to Cradle」をエレクトロニクス業界で初めて受賞した。音質だけでなく今後の環境にも配慮しているこの製品はまさにフューチャープリミティブと言えるアイテムの一つだ。
Photo Taijun Hiramoto | Edit Katsuya Kondo |