Weaving Materials by Moe Watanabe

素材に導かれた かごのような自然の彫刻

Clockwise from Top Right
Diameter 390mm Height 400mm
Width 200mm Height 260mm Depth 200mm
Width 200mm Height 260mm Depth 200mm
Diameter 430mm Height 360mm

「『作り方というよりは、考え方でできているのかな』と初めて見た時に思いました」。アート&クラフツというテーマで作品を紹介してくれる本連載のナビゲーター南貴之は、植物のつるや樹皮でかごのような作品を作る渡部萌をこう評する。「クラフトに寄った作品が集まるグループ展で渡部さんの作品を目にしたのですが、この方は工芸の人ではないのだろうなという印象でした。だからその展示の中では異質に見えて。もちろんこれは褒め言葉で、工芸や職人ともまた異なる作家だなと。工芸には用途が明確なものが多いですが、渡部さんの作品は一見かごのようで、用途がいい意味で曖昧というか、彫刻的な作品だと感じました。人によって捉え方が異なり、置かれる場所によって存在が変わる作品だと思います」。


上の写真はアケビのつるを編み込んだもの。下は胡桃の樹皮を編み込んだもの。いづれも渡部が活動の拠点としていた山形県で身近に採取できた素材であり、素材の個体差にも向き合いながら、素材に導かれるように形を作り上げていった作品。かごとして使うも、彫刻として空間に置くも、手にした人の解釈が自由に与えられている。

一見かごのようで、そうではない。南が口にした「彫刻的」という言葉に渡部は反応した。「事実、私は美術系の学校で彫刻を学んでいました。美大ではコンセプトをまずは考えて、それを実現するためのものづくりをするという考え方が主流だったのですが、私は素材を触り、手を動かしながら形を作り出していくことの方が好きだし向いているなと徐々にわかってきました。通っていた美大が山形県にあったのですが、文化人類学や民俗学にも触れ、土着の文化やものづくりにも興味が出てきました。そして出会ったのが稲のわら細工で、地元の方に作り方を教わりました。わら細工は米作りの副産物として出るわらを使うのですが、仕事としてというよりは、好きだから作る、という気持ちの方が皆さん強いようでした。その精神性が美大に通っていた私にとって新鮮であり、ターニングポイントになりました。それからは身近で採取できる素材を探し始め、現在主に使っているアケビのつるや胡桃の樹皮に出会いました。山形県の里山でよく採れる素材なんです。これらの素材は頑丈に編み込んで実用的に昔から使われてきました。でも現代では頑丈な素材はほかにもあるので、道具を作るためではなく、『あえてこの素材を使うのであれば、何ができるだろうか』と考えてかごのような形に辿り着きました。でも何かを入れるための具体性を持たせたつもりはなくて。陶芸の壺に似ているというか、形はかごのようですが、手に取ってくれた人に自由に扱ってもらいたいと思っています。『身近な場所から素材を採って作る』ことを軸に、これからも活動していきたいと思っています」。素材に触れ、導かれるように形を編み上げていく。出来上がった形は「かごのようなもの」に見えるが、コンセプトがかごではないからこそ、解釈の自由度が高いアート&クラフツとして存在するのだ。

渡部萌
1996年、東京都生まれ。植物素材を採集して作品を制作している。2023年のロエベ財団 クラフトプライズでは特別賞を受賞。山形県や岩手県、山梨県などを渡り歩き、現地の素材採取と作品作りに取り組んでいる。

南貴之
アパレルブランドのグラフペーパーやフレッシュサービスのディレクション、ギャラリー運営、店舗や空間のプロデュースなど幅広いプロジェクトを手掛ける。近年はグラフペーパーのパリでのコレクション発表など、活動の領域を国内外で広げている。

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