Who is Colin Dodgson

自然とファッションを愛する コリン・ドッジソンとは

今号の巻頭にて自然を軸に壮大なフォトストーリーを描いてくれたフォトグラファー コリン・ドッジソン。カリフォルニアとヨーロッパを拠点とし、Vogueやi-Dなどの雑誌からルイ・ヴィトンやディオール、ステューシーなど、メゾンブランドからストリートまで、ジャンルを超えて引く手あまたの存在でありながら、環境保護を目的とした写真集も複数発刊。ファッションとランドスケープドキュメンタリーという2面性を併せ持つ彼はどのような人物なのだろうか。

コリン・ドッジソンは、アメリカ・カリフォルニア州オックスナードの豊かな自然に囲まれて育った。少年時代の彼はサーフィンに没頭し、20歳頃まではプロサーファーになることを夢見ていたという。しかし、偶然35mmフィルムのカメラに触れたことで人生が一変する。写真の持つ美しさに魅了された彼は、名門「ブルックス写真研究所」へ入学し、本格的に技術と感性を磨き始めた。2006年には活動の拠点をニューヨークへ移し、アート・カルチャー誌での活動や個展の開催を経て頭角を現す。その後、ニューヨーク・タイムズ紙からのオファーをきっかけに、『Vogue』や『i-D』といった世界的なファッション誌へと活動の場を広げていった。
彼のキャリアにおける大きな特徴は、クライアントワークの圧倒的な幅広さにある。地元カリフォルニアを代表するストリートブランド ステューシーから、シモーネ・ロシャ、さらにはグッチやルイ・ヴィトンといったハイエンドなラグジュアリーメゾンまで境界線は存在しない。これは彼がブランド側に合わせているのではなく、むしろ数多くのブランドが彼の持つ唯一無二の作家性に魅了された結果と言えるだろう。
また、ファッション写真と並んで彼が情熱を注ぐのがドキュメンタリープロジェクトだ。2018年に環境保護団体「ワールド・ランド・トラスト」の依頼でベリーズの自然保護区を撮影した「Deeper Green」を皮切りに、南米やマレーシアなど世界中の自然の美しさを捉え続けている。撮影を通して環境破壊へ警鐘を鳴らすだけでなく、作品の売上金を寄付することで実質的な自然保護活動にも貢献している。
デジタル全盛期の現代において、彼の作風はひときわ異彩を放つ。フィルム特有の粒子感と偶然を狙ったかのような自然な被写体の動きは、写真を単なる“記録媒体”から、温かみを伝える“触覚的なメディア”へと変化させている。カリフォルニアの夜明けや日暮れを思わせる深いオレンジの色合い、そして波の上で過ごした経験から培われた独特の光の切り撮り方は、一目で彼の作品だと分かる圧倒的な個性を感じさせる。
それは、詩人ウィリアム・ワーズワースの一節から引用した本誌テーマ「Let Nature Be Your Teacher(自然を師とせよ)」を具現化するかのようだ。彼の写真は私たちに自然の豊かさを教え、それをクリエイティビティへ昇華したときに生まれる美しさを象徴している。

自然や人物の美しさと厳しさを
伝えるドキュメンタリー性のある写真群

Deeper Green
環境保護団体「ワールド・ランド・トラスト(World Land Trust: WLT)」のアンバサダーを務めるジョニー・ルーの誘いを受け、10日間にわたり、中央アメリカ ユカタン半島にあるベリーズの自然保護区へと足を運ぶ。この写真集で特徴的なのは、単なる美しいランドスケープだけでなく、現地の森林で働く人々や、車などのリアルな様子が描写されていることだろう。自然の中には密漁や森林火災といった生々しい現実があることを如実に映し出している。この作品を機に、自然の中にある美しさと厳しさの両面を捉え、人々へ環境保全を訴えかける彼の作品作りが始まった。この作品の売り上げは全額WLTに寄付されている。

Ciento por Ciento
ベリーズでの成功を経て、2022年からコリンは再びWLTとタッグを組み、南米パタゴニアへの2週間の旅へと向かった。現地の保全組織が取り組む活動に密着したコリンは、パタゴニアの風が吹き荒れる大地の中で、人間と自然が共生する瞬間を写真に収めた。本作では絶滅寸前のカエルやペンギン、イワナなどの多くの生物が柔らかな光の中で撮影され、幻想的ながら、我々が破壊する自然には多くの動植物がいることを暗に伝えている。この作品の売り上げも同じくWLTへ寄付された。

California Raisonné
ほか2作品が中央アメリカや南米などで撮影されたのに対し、この作品は2012年から2020年にかけて地元カリフォルニアのみで撮影された作品をまとめたものである。彼のスタイルでもあるフィルム写真のみを用い、76枚全てをハンドプリントで行うというアナログの美しさが詰まった1冊。さらにこの作品集は商業出版物ではなく、限定1部(+作家保有の1部)しか発行されないという、まさに彼の私的な総作品目録=Raisonnéに相応しい幻の一冊となっている。

Souvenir St. Moritz Dodgson
アルプス山脈の高級リゾート地、サンモリッツに1人のアーティストを迎え、滞在制作した作品を元に、「お土産(Souvenir)」として500部の限定出版を行う年刊式プロジェクト『Souvenir』。グローバルな写真家が「彼らの目から見たサンモリッツ」を自由に滞在制作・撮影してもらう内容だが、高級リゾートを舞台にした作品でありながら、コリンが映し出す世界はまるでロードトリップのようで、リアルなスイスの山々や湖が余白をたっぷりと取りながら撮影されており、想像力を掻き立てられる内容になっている。
Photo  Colin DodgsonText & Edit  Katsuya Kondo

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