Shaping Stories in Leather Interview with Nau Shima
島菜有が語るレザーと歩む人生

自分自身の生き様
島菜有
東京のストリート、そしてバイカーカルチャーの先頭を走る島菜有。彼の日常のそばにあるのが、ともに時を刻んだレザーの道具たちだ。それはファッションの領域を超え、彼のライフスタイルをありのままに映し出したかのように変貌を遂げていった、いわば、彼自身の人生の軌跡といえる。
ルーツにあるのは
音楽とアウトローカルチャー
ロックやパンクミュージック、アウトローカルチャーに根差したレザーの反骨精神。その根源的な魅力に導かれるように、島はレザーという素材へ身を委ねていった。「きっかけはやっぱり、10代の頃に興味を惹かれた音楽や70年代のアウトローの空気感だったと思います。イギリスだったらパンク、ニューヨークもそうですよね。レザーは不良のアイコンみたいなもので、ライダースジャケットとか。そこに惹かれたのが始まりでしたね。バイクに乗り始めたのは20代ですが、バイクに乗るからレザーを着るというわけではないんですよ。もっとレザーという素材の根源的なところに惹かれているのだと思います」。
作り手の魂とともに旅をする
ゴローズの教え
作り手の魂とともに旅に出るようなその原体験として刻まれているのがゴローズの存在だ。「ゴローズの影響は大きかったですね。レザー製品とシルバーについて深く学び、触れることができました。ネイティブアメリカンの文化に精通し、ゴローズを生み出した高橋吾郎さんがよく仰っていたのが、『自分が作ったものを人に持ってもらうということは、自分の魂とかスピリットがその人に受け継がれる』ということ。彼らがそのものを持っていろんな場所に行ったり、いろんな人と出会ったり、一緒に旅をしている、そういうネイティブアメリカンのスピリッツをものを通じて伝えてくれたんです。レザーや素材をそのまま生かした作りですから、どれも表情が違う。それは貴重な出会いなわけです」。

鑑賞のための工芸品ではなく、シンプルな道具としてのタフさ。使い込んでついた傷を記憶として肯定するそのプロセスこそが、レザーを唯一無二の伴侶へと変えていった。「この黒いディアスキンのバッグは、ゴローズのショップでああしたい、こうしたいと相談をして、少しずつ形になっていったんですよ。ストラップの横についているフリンジは、今ではゴローズのバッグによく用いられていますが、僕のバッグを使って実験的に生まれた仕様だったりもします。ストラップも使っていくうちに伸びてくるので、伸びた部分をカットして、そこからまた少しずつ馴染んでは伸びて、そうやって自分の身体に合わせていくんですよね。人と違うカスタムをするのが自分のアイデンティティというか、一つひとつ個体差があって全部違う顔をしている。黒いバッグはロードトリップで北海道や九州にも持って行きました。宿を決めずにバイクで走るような旅だと、枕代わりにもなります。ディアスキンはやっぱり魅力的です。水に浸せば浸すほど硬くなるレザーが多いなかで、ディアは揉むとすぐに柔らかくなる。しなやかで、強くて、割れがない。僕のライフスタイルには一番合っているんです。ですけど排気ガスやオイルの巻き上げとかでいずれは汚くなってしまう。でもそれがすごくいい。ストラップが切れれば修理してまた使う。これはもう完全に道具として使っていますからね。なおかつかっこよければそれ以上のことはないですよ。土砂降りのなかバイクで走っていても、後ろに積んで雨ざらしで走っても全然平気です。使えば使うほど表情が増して、全部思い出になります。あの時についた傷だとか汚れだとか、まさに自分自身を映し出した鏡みたいなものです。そういうものが醸し出す色気に惹かれますし、それが私がものを選ぶ基準かもしれません。デザインにこだわらずにね」。

生命の副産物をまとい
ともに生きるということ
自然由来のレザーとシルバーが共鳴し合うゴローズの佇まいは、人工素材では辿り着けない本質的な価値が宿っている。「昔の銀貨、モルガンコインを装飾しているゴローズのベルトは、年代別にコインを揃えるのが想像以上に大変でした。このベルトも壊れたら直して使える。それが最高ですよね。財布も、普段はゴローズですが、今回初めて自分のブランドである Timc Inc. で作りました。サドルレザーを用いているのですが、とにかくタフな素材です。お尻のポケットに入れていると手の油や汗で色の変化が出てくる。飴色になる人もいれば、僕みたいにダークブラウンになる人もいる。ゴローズの財布は長く使っていますが、お尻ポケットに入れているからバイクのガスや油を吸ってこんなに暗くなるんです。面白いですよね。シルバーとレザーというのは、どっちも天然な素材だから馴染むんですよ。人工的なものではないから、組み合わせても違和感が全くないんです」。
自然の恩恵をまとい、ともに呼吸する。それは、命の副産物としてのレザーに対するささやかな感謝でもある。「レザーは言ってみれば食料品の副産物ですよね。だから無駄にしてはいけないし、大事にしなければいけない。サステナブルさを意識して着ているわけではないですが、自然の素材に感謝しながら作るというのは私のなかでもベースにあります。いいレザーは、ちゃんといい呼吸もしますし、僕ら人間と同じで生きていますから。持っている人と一緒に成長するというか、一生をともにする感覚が常にありますね」。


気が付いたら
日々のすぐ側に
タイムレスとは、不変であることではなく、変化を受け入れながら持続すること。そんな一途な反復のなかにこそ、長く受け継がれる価値が存在するのかもしれない。「タイムレスというのは、単に寿命が長いということだけじゃなくて、引き継がれていって欲しいもの、残していかなきゃいけないものだと思うんです。例えば次の人に繋がっていくもの。日本の職人さんたちの精神にも感じるんですよね。まだスポットライトが当たっていない人たちもたくさんいると思いますが、根本的な考え方はみんな一緒。ものを作る人間は、そうあるべきだなと思います。レザーの道具やバイクも一緒で、壊れたら終わりじゃなくて、直してずっと使い続けていく。それがものの在り方ですし、私の日常の側にレザーが存在し続ける一番の理由なんだと思います」。
壊れたら直すことこそが、ものの使い方の前提ではないだろうか。この言葉は現代の大量消費社会へ訴えかけるひとつの回答のようにも響く。レザーのバッグやベルトが放つ、鈍く、それでいて力強い光は、何重にも積み重なったストーリーが放つ唯一無二の輝きである。島のレザーに対する価値観がそう教えてくれた。
| Photo Masato Kawamura | Interview & Text Samuel Pattison | Edit Yutaro Okamoto Samuel Pattison |












