The Weight of Time Taku Obata (Sculptor)

スタイルを持つ人に聞く 人生をともにしてきたレザー

Solovair
Oil Fat Acid Alkali
Resistant Shoes
履き込み馴染む絶妙な距離感
小畑多丘

ダンスや動きをテーマにしたアート制作を行う小畑多丘の足元は、かつてスニーカーが絶対的な存在だった。ブレイキンの激しい動きを支えるのは、決まってキャンバス地のオールスター。そんな彼がレザーという素材に触れたのは、2019年から1年ほど滞在したロンドンの地だった。「それまで革靴はあまり履いたことがなかったのですが、ロンドンにいる時に『ロンドンと言えば革靴だな』とふと思い、カムデンタウンのブリティッシュ・ブーツ・カンパニーに行ってみたんです。そこで初めてソロヴェアーという革靴メーカーを知ったのですが、これがもう驚くほど履きやすくて、スニーカー感覚で履けることに感動しました。ロンドンでは毎日歩き倒してましたし、歩道もゴツゴツしてますから、まさに最高の相棒になりましたね。それ以降さまざまなレザーシューズを履きましたが、やっぱりあのソロヴェアーが全ての入り口でした。レザーシューズは消耗品のスニーカーと違って、ソールを直せばまた使える。高校の時もリーガルのローファーを直しながら履いていたなと、最近ふと思い出したんですよね。大人になるにつれ、単にブランドとして良いものという基準だけでなく、自分との親和性や選ぶための確かな理由が必要になってきたんです」。

単に履き続けるのではなく、制作現場でも耐えうる相棒としてのタフさ。そんなレザーの特性に、彼は少しずつ信頼を置くようになった。「ソロヴェアーの靴もそうですが、誰にでも対応できるような形が自分には合っています。レザーシューズメーカーでも最高峰なジョンロブで、ビスポークも作りました。職人が山のような木型を見せ、鉛筆で型を取る。履き心地はよく、冠婚葬祭の時には履きますが、日常で履くのに惹かれるのはガシガシ履けて自分に馴染んでいくプロセスがある靴なんだと気づきました。ゴムソールやオイル感、工業製品らしいタフさがいい。ジーンズと同じで最初は作業着ですが、履き込むことでその人に合ってくる。その絶妙な距離感が好きなんです。僕がものに求めることの根底にあるのは道具として使えるか否か。レザー素材のものは、使い込むことによって自分自身でしか知り得ない細かなディティールや癖が生まれます。そんな誰も気づかないような、自分だけが納得できる理由を積み重ねていけること、そこに一番惹かれますね」。

レザーに刻まれるシワや傷は、まるで彼自身の歩みそのものだ。工業製品としての潔さと徐々に馴染むフィット感。そんな道具としてのレザーシューズは、小畑に寄り添うかのように唯一無二な表現の土台を支えている。

​​小畑多丘
ブレイクダンサーとしての身体感覚を基に、木彫やドローイングなど多岐にわたる表現を展開する彫刻家兼アーティスト。2014年以降国内外で多数の個展を開催し、現代美術とストリートカルチャーを繋ぐ独自のスタイルで世界的に高い評価を得ている。

Photo  Masato KawamuraInterview & Text  Samuel PattisonEdit  Yutaro Okamoto  Samuel Pattison

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