A Timeless Armani Jacket
鴨志田康人(ユナイテッドアローズ)が語る ジョルジオ アルマーニの功績

Getty Images
ジョルジオ アルマーニ
というエレガンス
ジャケットを特集する上で、ジョルジオ・アルマーニがもたらした功績を避けては通れない。今の時代にジャケットをカジュアルに楽しむことにはなんの疑いももたないが、その価値観を生んだのがジョルジオ・アルマーニにほかならないからだ。しかしそれは、ただただ快適なジャケットを作り出したがために影響力があるのではなく、ジョルジオ・アルマーニが服を通して提案し続けてきたことが“タイムレスな価値”であるからだ。そう教えてくれたのが、ユナイテッドアローズの創業者の1人である鴨志田康人。同社で80年代から豊かで上質なライフスタイルを提案し続けてきた鴨志田だからこそ、ジョルジオ・アルマーニが提案したジャケットの真の価値を明快に読み解いてくれた。「ジョルジオ・アルマーニは芯地や肩パッドなどのジャケットの内部構造を見直し、素材を徹底的に開発し、テーラードスーツの伝統に囚われないフォルムで快適な着心地と刺激的なスタイルを作り上げました。それが1970年代のことです。当時は英国流の仕立てと素材感で重く堅苦しいスタイルが主流でしたから、彼が提案したジャケットは非常に革新的だった。ただ着やすいだけではなく、エレガントであったことも魅力の一つでしょう。『エレガントであるために必要なのは、生活の中で常に必要としているもの、つまりスタイルや嗜好へのセンスです』と本人が語っていますが、彼のいうエレガントとは、伝統や歴史を重んじつつ、独自の美的感覚で新しいスタイルを提案することにあります。当時はパリがモードの震源地でしたが、ジョルジオ アルマーニが登場したことによりミラノがモードの中心になったほどです。ジョルジオ アルマーニのジャケットの特徴である、ゴージ位置の低いラペルや肩幅の広いフォルム、ワイドトラウザースなどは、彼が敬愛していたウィンザー公やフレッドアステアのスタイルに影響されています。着込まれた服のような風合いになるように生地開発に取組んだのも彼らの身体に馴染んだ服の美しさに魅了されたのだと解釈します。ジョルジオ アルマーニの独自性は、テーラードの歴史や伝統を否定するのではなく、普遍的な価値を受け継いだ上でアップデートした創造性にあります」。ジョルジオ アルマーニの独自の世界観は、時代を超越した普遍的な価値を受け継ぎ、そしてアップデートする創造性にオリジナリティが存在する。だからこそジョルジオ・アルマーニの哲学は時代の系譜に刻まれ、タイムレスな存在として今も確固たる地位を確立しているのだろう。


Courtesy of Giorgio Armani
「色褪せないですよね。一貫性のあるアルマーニイズムがずっと続いていて、それが現代まで普遍的な価値のあるものとして根付いている。ジョルジオ アルマーニ以降のイタリアンモードには表層的なデザインも多く見受けられましたが、ジョルジオ アルマーニのデザインや価値観は奥ゆかしいエレガントを追求した結果なのだと思います。『エレガンスとは、人の目を引くことではなく、人の心に残ることである』という言葉をジョルジオ・アルマーニは残しています。彼が作る服は映画の衣装としても人気でしたが、『アメリカン・ジゴロ』のリチャード・ギアが着ていたジャケットよりも、『アンタッチャブル』のショーン・コネリーやケビン・コスナー、アンディ・ガルシアたちの装いの方がジョルジオ アルマーニのアンダーステイトメントで奥ゆかしい佇まいを感じます。はるか未来を見通す力もあったのでしょう」。ジャケットはブルジョワ階級のための装いであった。しかしジョルジオ・アルマーニは庶民に向けた、日常生活というリアリティの中でエレガンスを楽しむアイテムとしてジャケットを再解釈したのだ。だからこそ彼が提案したジャケットスタイルは革命であり、今日の大半のジャケットのベースとなっているのは明らかだ。ジョルジオ・アルマーニがこの世を去って半年が経とうとするが、彼が生み出したエレガンスはこれから先もジョルジオ アルマーニ流のクラシックスタイルとして長く生き続けることは間違いない。

鴨志田康人
1957年東京生まれ。多摩美術大学で建築を学んだのちビームスに入社。ユナイテッドアローズ設立時に同社へ移り、クリエイティブディレクターとしてバイイング・商品企画の中核を担う。現在はクリエイティブ・アドバイザーとしてユナイテッドアローズの監修業務を担当。
| Photo Masayuki Nakaya |











