CASIO Watch 50th Anniversary Artwork by Kosuke Kawamura

カシオの腕時計事業50周年を祝う 河村康輔のスペシャルアートワーク

「50年という時の流れや、新たな時代の1ページを切り開く、というメッセージを込めました」と河村康輔が話すカシオの腕時計事業50周年を表現したアートワーク。河村ならではのコラージュによって、復刻モデル『TRN-50』やG-SHOCK初代モデル『DW-5000C』、軽量・薄型のデジタル液晶モデル『F-91W』、3針タイプの『MQ-24』、メタルバンドが特徴的な『A168』が組み込まれ、過去の広告ビジュアルや貴重な資料も随所に散りばめられている。CASIOがいかに時代を超えたものづくりを行なってきたかを象徴している。

カシオの腕時計事業50周年を象徴する河村のアートワークをインスピレーションにしたスペシャルムービーは、新進気鋭のクリエイティブスタジオ「アムニ センター スタジオ」が手がけた。50周年という節目を祝う特別なクリエイティブとしてこのように独創的な表現を取り入れるのも、常にワクワクを大切にする企業理念を持つカシオならではだ。

カシオの腕時計事業が時を刻み始めてから、2024年で50周年という節目を迎えた。一番最初に作られたモデルである「カシオトロン」は、それまでカシオが電卓メーカーとして磨き上げてきたデジタル技術を腕時計に応用したもので、デジタルウォッチとして世界初のオートカレンダー機能を搭載した革新的な一本だった。便利さや快適さはもちろん、使うときの喜びやワクワクを大切にするカシオならではの企業理念から、その後はG-SHOCKやデータバンクなど独創的な腕時計を生み出し続けてきた。そんなカシオの腕時計事業50周年を祝し、これまでにもカシオと様々な取り組みをしてきたコラージュアーティストの河村康輔が特別なアニバーサリービジュアルを制作した。河村がこのアートワークに込めたテーマ、そしてカシオへの思いを聞いた。


アートワークのコラージュ素材となったカシオの過去の資料。カシオトロンが発売された1974年当時の様子や設計図、G-SHOCKのタフさを表すコンセプトカットなど、どれもカシオの50年の歴史の中で特に象徴的なものである。

ーアートワークに込めたテーマを教えてください。

「カシオの腕時計事業がスタートした1年目から現在の50年目、そして現在を破って51年目の新たな1ページをめくっていくという、時空を超える表現を考えました。タイムレスに身につけていられるのがカシオの腕時計の魅力だと思っています。アートワークを作るときは、いつも頭に最初に浮かんだアイディアを生かして膨らませていきます。下描きをすることもほぼありません。だから今回も、制作のお話をいただいた時に閃いたアイディアを形にしていきました。アートワークのコラージュ用素材としてカシオから過去の広告アーカイブを見せてもらったのですが、結構攻めてる表現が多くて、どれも洒落てましたね。過去の広告を1冊にまとめた本を作ってほしいぐらい面白いものが多いんです。そこから厳選して今回のアートワーク用の素材を選びました。初代カシオトロンが発売された1974年当時のお店の販売風景写真やG-SHOCKの開発資料など、どれも50年の中でカシオの腕時計事業にとって特に象徴的なものをコラージュしていきました」。

ーカシオの腕時計を最初に目にした時のことを覚えていますか?

「中学生くらいの頃ですかね。ファッションに興味を持ち始めた時期で、ストリート系のファッション誌でG-SHOCKを見たのが原体験だと思います。当時は裏原カルチャー全盛期で、そのシーンで活躍する人たちが着けていたのがかっこよくて憧れました。
僕自身が最初に手に入れたのは中学1年生の頃のデータバンクで、G-SHOCKなどカシオの時計を集めている幼馴染のお父さんが譲ってくれたんです。それからお小遣いを貯めて、中学3年生の頃にG-SHOCKを自分で買いました。16歳ぐらいになるとG-SHOCKを着ける友人が周りに増えてきたのですが、僕はほかの人と同じものをあまり身につけたくないので、その頃は逆にデータバンクを意識的に着けていましたね(笑)。地元のホームセンターにある時計コーナーで2000円ぐらいでデータバンクを売っているのを見つけて、その手頃な値段やラフさに魅力を感じたんです。いい意味でおもちゃっぽくて、ワクワクする感じがたまらなかったですね。データバンクは電卓の機能が付いていますが、G-SHOCKのゴツゴツとした強そうなフォルムにせよ、とにかく触って機能を調べることが楽しいのも魅力です」。

ーカシオの腕時計事業50周年を祝って、初代モデルであるカシオトロンが限定復刻されました。このモデルを知っていましたか?

「存在は知らなかったのですが、50年前に作られたとは思えないデザインでかっこいいです。100年先の未来でも通じるデザインだと思います。いい意味で古さも新しさも感じさせない、タイムレスなデザインとして完成されています。細部までこだわりつつ削ぎ落とされたミニマルなデザインが今見ても斬新ですし、すごく欲しいです(笑)」。

ー「REAL TOUGHNESS(G-SHOCKのコンセプト「タフネス」をテーマにしたアクションスポーツのイベント)」のアートワークを作られていましたが、タフネスというコンセプトにどのような魅力を感じますか。

「壊れない強さっていいですよね(笑)。子供心をくすぐりますし、中学生の頃にその情報を知って驚愕しました。大人になった今も、ゴツゴツした出っ張りなどタフな見た目が変わらず大好きですね。出張や旅行で海外に行くことが多いのですが、G-SHOCKのタフさはとても心強いですし、電波で現地の時間に簡単に調整できることもありがたいですね。アートワークを制作する作業中などでも、カシオの時計はいい意味で気にせずに着け続けられるので使い勝手がいいですし、傷すらも味になるのがほかのデジタル時計ブランドにはない魅力だと思います」。

ー子供から大人まで、年齢問わずで身につけられることも魅力ですよね。

「一番最初につけたのが13歳の頃で、それから30年以上経った今も変わらず同じブランドの同じシリーズをつけられるのはものすごいことですよね。完成されたタイムレスなデザインなので、時空を超えて身に付けられる。時が流れても、自分の中でもう一度かっこいいと思えるプロダクトです。
モデルやカラーバリエーション、コラボレーションが多いことも魅力の一つだと思います。色々新しい型を手に入れたくなりますし、ベーシックなものも時間が経つと新たな魅力が見えてきたりしていいんです。これまで買ったカシオの腕時計はほぼ手元に残してありますし、時間が経つと『あ、今はあれを着けたいな』という気持ちにさせてくれます」。

河村とG-SHOCK、そしてBEAMS Tのトリプルコラボの一本。G-SHOCKの原点である『DW-5600E-1』をベースに、河村のシグネチャーでもある1ドル紙幣を再構築したようなシュレッダーコラージュを時計に落とし込んでいる。時計ケースは1ドル札の束を積み上げたようなデザインで、いづれもCASIOから自由な制作環境をもらって河村が自由に発想してしたもの。

河村が所有するカシオの腕時計の一部。右は古いデータバンクで、左はファッションブランドであるNEXUSVII.の別注モデル、中央上はグラフィックデザイナーYOSHIROTTENの別注モデル。「コラボレーションモデルは、同じ型であっても全く違う個性になるのがカシオの時計の面白いところですよね。一目見れば誰とのコラボレーションなのかも大体わかる。カシオの時計はベースデザインがしっかりしているからこそ、コラボレーターの個性を最大限に引き出せる懐の深さがあるのだと思います」。

コラージュに加えて河村を象徴する作風であるシュレッダー加工を施した作品。アートワークをシュレッダーにかけて裁断し、分解された一枚一枚を河村の手作業でキャンバスに貼り付けていく。意図的にズレさせてノイズを表現することが“河村らしさ”でもある。原盤は6月末のイベントで展示予定となっている。

ーカシオはファッションやアート、音楽をクロスオーバーしてコラボレーションしています。コラージュアーティストである河村さんと親和性が高いと感じますが、過去のコラボレーションを振り返っていかがですか。

「地元にいた中学生の頃ですが、好きなブランドとG-SHOCKのコラボモデルが出るという情報を雑誌で目にして、電話したけどすぐに即完していて悔しい思いをしたりしました。だからずっと憧れの存在でした。歴代の裏原やストリートの先輩方も多くコラボレーションされていますし、僕もお話をいただけた時はすごく嬉しかったですね。これまでのコラボレーションモデルはどれも個性が強いものばかりですが、カシオのデザインはベースが完成されているからこそ柔軟性や懐の深さを感じます。同じ型なのにコラボレーションによって見え方が全然違うことも面白いです。今回は50周年のキービジュアルという歴史的な仕事をさせていただき非常に光栄でした。アイディアもいくつかあるので、次はまた時計とのコラボレーションができることを楽しみにしています」。

ものごとを再解釈し、コラージュを通して新たな文脈を提案するアーティスト、河村康輔。カシオの腕時計事業が辿ってきた50年という歴史を再解釈して表現したこのアートワークは、カシオの新たな歴史の幕開けも意味し、これからどんな革新的な腕時計が生み出されるのかとワクワクさせれられるエネルギーに満ちている。そんなカシオ腕時計50周年を祝うスペシャルなイベントが2024年6月29日(土)、30日(日)に宮下パークにあるギャラリーSAIで開催予定だ。イベント当日は河村が生み出したアートワークを用いたグッズも準備されるようだ。詳細の発表を心待ちにしつつ、カシオのホームページに公開されている特設サイト(https://www.casio.com/jp/watches/50th/)から、腕時計事業50周年を振り返るコラムや代表モデルの特集など充実したコンテンツを楽しんでみてはどうだろうか。

Movie & Photo AMNI Center Studio Interview & Text Yutaro Okamoto

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