ART & CRAFTS Plant Sculpting YUKASETO

植物の生命美を伝える 建築的バランスの作品

Plant Sculpting
Width 130mm Height 300mm Diameter 50mm
植物の美しさを伝える形
植物と真鍮
有機と無機の建築的バランス

何学的だが自由でのびのびとした美しさも感じられる真鍮の曲線と、そこに取り付けられた見慣れない物体が一際目を惹く作品。実はこれ、“木の実”なのだ。生きるためにそうなった植物の造形美を伝えるためにと生み出されたこの作品は、京都を拠点に活動するユカセトが手がけたもの。このコンセプトを聞くと、光を求めてさまざまな角度を縫って成長したエネルギッシュな植物の姿のようにも見えてくる。本連載ナビゲーターの南貴之は、ユカセトの作品の魅力をこう話す。「最初は写真で作品を目にしたのですが、まさか植物を使っているとは思わなかったんです。それから直接お会いして作品を見る機会があったのですが、素材の組み合わせや、配置する空間とのバランス感が計算されていてすごくセンスがいい。木の実や種子、莢(さや)をどう美しく見せるかを考えて作品を作るという考え方が僕にとっては逆転の発想だったので衝撃的でした。有機的な植物と無機的な真鍮を組み合わせるアイディアや、作品の制作依頼主が配置する空間の情報も踏まえて制作するという建築的なアプローチも魅力的です(南)」。

形態は機能に従う
植物の生命美

「建築的」という言葉が南の口からこぼれたが、作家のユカセトは装飾的な美しさよりも機能的な美しさを大切にしていると話す。「小さい頃からデザインやものづくりが大好きで、専門学校では空間デザインを勉強しました。卒業後はデザインユニットを組んで活動していたのですが、東日本大震災が起こったときに『何かを作ることは、同時に壊すことでもあるんだ』と思い、ものづくりに取り組めなくなってしまったんです。それから数年はものづくりから離れていたのですが、とある時に毎日歩いていた道に生えている桜の木が急に目に飛び込んできました。それまでは何気なく通り過ぎていた木なのですが、植物は水を根から吸い上げて幹を通し、枝葉に渡らせるような仕組みになっていることや、葉は陽の光を満遍なく受けられるように交互に生えていたりと、生きるために必要で生まれたデザインが植物なのだと気づいたんです。これこそ私が求めていることで、敵わないとさえ思いました。それからは植物の研究を重ねに重ねました。そして植物を使って私がもう一度ものづくりを始めるとするなら、植物の始まりであり終わりでもある木の実を使いたいなと思ったんです。木の実は落ちた場所に根付いて芽を出し、木となり花を咲かせ、また新たな実を落とします。その生命の循環をイメージした形を私は作っています (ユカセト) 」。

Plant Sculpting Width 480mm Height 365mm Diameter 10mm
Plant Sculpting Width 180mm Height 350mm Diameter 60mm 
素材にはモダマやヤシなど様々な国の木の実や豆、莢 (さや) を、土台には黒檀のような硬くて重い木を用いている。木の実の個体一つ一つのフォルムや色合いからインスピレーションを受け、真鍮のラインの形を決めていく。

ユカセト
空間デザインを学んだ後、ものづくりの活動を始める。機能美を追求するにつれて植物の造形美に魅了され、植物コレクターとして畑や花屋での仕事、植物店のオープンなどを経験。自身の表現活動に改めて向き合った後、植物の造形美に焦点を当てた現在の作品活動を始める。

南貴之
アパレルブランドのグラフペーパーやフレッシュサービス、ギャラリー白紙や京都の小川珈琲 堺錦店など幅広いジャンルのプロジェクトを手掛けるクリエイティブディレクター。シセイドウ メンとコラボレーションしたサウナグッズも話題を呼んだ。

Select Takayuki MinamiPhoto Masayuki NakayaInterview & Text Yutaro Okamoto

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