WALES BONNER Photo Book
ウェールズ・ボナーの 精神が垣間見える一冊
ファッションアイテムや、カルチャーに関連したプロダクトなど、Silverのエディターが今気になるモノを紹介する連載企画「Editor’s Eye」。
ジャマイカ人の母を持ち、イギリスに生まれたグレース・ウェールズ・ボナー。ヨーロッパのテーラリング技術とアフリカンカルチャーを織り交ぜた彼女のデザインからは自身のバックボーンからの強い影響と黒人文化へのリスペクトが良く分かる。そんな彼女が「ソウルフルな表現のアーカイブ」としてMoMAのコレクションとアーカイブから1冊の写真集を完成させた。マイルス・デイビスをはじめとするジャズミュージシャンのポートレートからヴォルフガング・ティルマンスの写真、戦前の黒人作家アミリ・バラカのテキストの一部など、彼女のデザインと呼応する多種多様な作品がスクラップブックのように散りばめられた本作。グレース・ウェールズ・ボナーが作る洋服には常に小説や映画、音楽などが作品のテーマとして挙げられていが、この本では彼女が多くの文化をどのように解釈し自身のデザインへと落とし込んでいるのか、その過程を垣間見ることができる。深みのあるクリエイションはこういった物事に対する多面的な知識がもたらすものだと教えてくれる1冊だ。
Photo Taijun Hiramoto | Text Katsuya Kondo |