THE THINGS CLARKS DESERT BOOT
野村訓市の“マイスタンダード” クラークス デザートブーツ

あなたの定番品って何ですか?とよく聞かれることがある。みなさん好きですよね、マイスタンダードみたいな奴が。皮肉を込めていうと、流行りだしたものを実は昔から愛用してると語りだす人たちを昔はよく雑誌で見かけたものだった。こないだまでナイキ一筋です、とかヴァンズ一筋ですとおっしゃってた方が、流行ると実は高校からニューバランスでした!とか。だからマイスタンダードを嬉々として語る人を個人的には余り信用していない。
「じゃあお前はどうなんだ?」と言われると困るのだけれど、実はちゃんとあるんですよ、私には。というよりレパートリーが少ないというか気に入ると延々と同じものばかり使い続ける癖があるので、強制的に大体がまぁスタンダードなものになってしまうのだ。なぜなのか?といえばある一つのジャンルというかものを買うときに、割とよく調べる傾向があるのですよ。色々と見比べて、まず好きな形かよく見て(形は大事!)、それから質感とか、色とか歴史とか(ウンチクというかバックストーリーも大事!)、こうまるっとね。それでこれだ!っと手を出すと、そこから先はおいそれとはほかのものに浮気しなくなる。これでいいじゃん!と。だからいっつも同じような格好してますね、とかいわれてしまうのだ。でもね、男の格好って女性よりもバリエーション少ないじゃないですか?女性にはパンツもの以外にもいろんな服がある。ワンピースだのドレスだのラップスカートだの。男は違う。基本形はパンツ、ロングとショートしかないし、あとは素材だ、ポケットの数が違うとかそんなじゃないすか?その中で好きなシルエットとかが絞り込まれてくると、どんどんと選択肢が限られてくるわけですよ。だから好きなものをサイズとかシルエット違いで延々と買い足すことになる。
俺はTシャツは1000枚かそれ以上持ってると思う。大体ジャストサイズと大きめで揃っていて、上に何か着る時はほぼジャスト、夏は大きめを着ると決まっている。暑いから、体にまとわりつくサイズだとツユダクみたいになるので嫌なわけよ。それで足元は大体クラシックなスニーカーとビーサンになる。自分の履くパンツのシルエットに、ソールの厚いスニーカーや、激しいデザインのハイテクものが合わないのが理由だ。だってそうでしょ?最早昆虫みたいにもみえるハイテク靴と、何でローテクなコットン製とかのパンツを合わせる気になるんだ?かといって全身ハイテクな素材の服を着るにはもう俺は十分に年老いている。普遍的な素材には普遍的なものが合うのだ。
で、今回は革靴が確か特集のテーマだったと思うが、俺の革靴歴は長い。幼稚園時代からそれを強要されてきたからだ。校則って奴ね。幼稚園のときは確かペニーローファーだったと思う。本当にペニー硬貨が挟まってた奴で、それをラムネの瓶のビー玉のように取りたい!と日々努力したものだった。それから小学校になると編み上げのブーツが指定だった。これはアンクル丈のブーツ型で足首周りにスナップで止めるベルトがついてる奴で、今思うとなんて渋い小学生なんだ!と思うが当時は嫌いだったね。履きづらいというか、制服の短パンになんでブーツを合わせなきゃいけないんだとものすごく疑問におもっていたわけ。バランスが悪いというか、それにランドセルだぜ?そこから中学ではまたローファーになり、高校でも指定のスタイルはないが短靴の革靴を履け!という指令が飛んだ。何を履くか?ってときに革だったらなんでもいいんだろ?と拡大解釈した年長たちが手に取ったのがクラークスだった。紳士の国イギリスのブランド、きっと彼の地のパブリックスクールの生徒も履いているに違いない、と教師も勘違いしたのか分からないがクラークスはありか無しか?となったときに「あり!」となった。クラークスには2大巨頭が存在する。それは、第2次世界大戦中、砂漠の国エジプトで売られていたブーツをイギリス軍の陸軍士官が履いていたことをインスピレーションとし1950年に発売されたデザートブーツと、モカシン構造のU字型シェイプのシンプルな靴として1966年に発売されたワラビー。どちらがいいか?ということでデザートブーツ派とワラビー派に別れ、血で血を洗う激しい抗争が繰り広げられたりはしなかったが、それなりに意見が割れることとなった。ワラビー派はとにかくその形を推す。黒のスウェード製のモカシンとしてこれほど完成度の高いものはないと。俺とて異論はなかった。確かにデザインは秀逸で、唯一無二といっていいだろう。だがしかし!俺には一つ気になる点があった。それはソールの幅が狭いこと。袋状に縫われたモカシン本体に貼り付けられたソールの幅が本体よりも細い。これが俺にはどうにも不安定に感じれたのだ。そこでデザートブーツ。チャッカブーツのフォルムを継承した完成されたデザイン、そして歩き心地のよいクレープソール。何よりワイドなソールは安定感も抜群。俺はそうしてデザートブーツ一派の急先鋒となった。これにラルフのBDシャツを合わせ、グレゴリーのバックパックを背負う。そいつは渋カジと呼ばれた若造の制服スタイルの1定番となった。
以来、手元にはずっとデザートブーツがある。制服時代はもちろん黒を履いていたが、それ以降はもっぱらサンドと呼ばれるベージュのスウェードを愛用してきた。表革モデルがでたり、いろんなカラバリが出たりするが、基本このサンドだけでいいんですよ。こいつはいわゆる万能選手という奴で何にでもよく合うが、特にデニムとの相性が大変よろしい。さらにいえば色褪せた適当なリーヴァイスとかに。XXだ、赤耳だ、縦落ちだとそんな難しい奴じゃなくて、ガンガンと履いて洗濯し、色が褪せてきた普通のリーヴァイス。そいつと合わせると無類の強さを発揮するのだ。それだけじゃシンプル過ぎてつまらないという輩には一つアドバイスを。それはシューレース、靴紐を変えるということだ。最近はニューヨークから越してしまったので随分とご無沙汰になってしまったのだけれど、ニューヨーカーのアイコンとして知られたアンディ・スペードという人がいる。亡くなってしまったが奥さんのケイトとケイト・スペードを立ち上げ、そのメンズ版のジャック・スペードを創業し、今もパジャマブランドのスリーピー・ジョーンズを経営している男。アンディはスタイルに拘りがあり、例えばシャツならJプレス、デニムなら501等、自分が思う定番を身にまとい、それに合うカバンがないからとジャック・スペードを立ち上げたのだが、彼が愛する靴がデザートブーツ。そしてそのシューレースを登山用品店で買ってきた登山用のカラフルな紐に付け替えて履いていた。白いBDシャツに501、そして素足でサンドのデザートブーツを履く。するとシューレースがいいアクセントになって映えるのだ。サンドには赤系でも青系でもなんでもよく見える。お、いいじゃんそれ、と思った読者諸君、ハンズか石井スポーツなどへGO!
野村訓市
1973年東京生まれ。編集者、ライター、内装集団Tripster主宰。J-WAVE『Traveling Without Moving』のパーソナリティも早、12年目になる。企業のクリエイティブディレクションや映画のキャスティングなど活動は多岐に渡る。
| Illustration T-zuan | 11:49 – 13:20 2nd September 2026 Seoul | From morning 3 cups of Americano A half box of Marlboro gold soft pack |











