The Classic Shoes J.M. WESTON

履く人と一緒に時間を重ねる 名門シューズブランドの靴たち

「安い靴を4足買うより、良い靴を1足買いなさい」という言葉を、イギリスの名優ケイリー・グラントは残した。ジェームズ・ボンドのモデルにもなった稀代の洒落者だ。そしてこう続けている。「上質な革で作られた1足は、質の劣る4足よりも長持ちするだろうし、きちんと手入れをすれば、どれだけ年月が経っても、あなたの優れたセンスと判断力を物語り続けるだろう」。流行を追いかける靴ではなく、履く人と一緒に時間を重ねる靴。それができるのは、やはり長い歴史に磨かれてきた名門シューズブランドの靴たちだ。

Side Gore Boots #705
Shoes ¥209000 by J.M. WESTON (J.M. WESTON AOYAMA) Coat ¥74690 by GOSHA RUBCHINSKIY (MATT.) Knit ¥68200 by STUDIO NICHOLSON (STUDIO NICHOLSON AOYAMA) Pants ¥29700 by Supreme Scarf ¥42900 by Joshua Ellis (MASHIMO&CO.,LTD)

Yacht #690
船上で履くために生まれたデッキシューズは、濡れた甲板でも滑りにくいようにラバーソールを採用している。カジュアルなスタイリングにも取り入れやすい一足だ。
Shoes ¥176000 by J.M. WESTON (J.M. WESTON AOYAMA)

モデルの中には工程が150を超えるものもあり、一足を作るまでに2ヶ月ほどを費やす。

フランスらしいモダンで上品な佇まいが、タイムレスに私たちを魅了しつづけるジェイエムウエストンのレザーシューズ。その魅力を探ってみると、伝統を守ることと、時代の流れを反映すること、その見事なバランスが見えてくる。遡ること1891年、パリから少し南に位置し、革を用いた産業が盛んなリモージュ地方で、エドゥアール・ブランシャールという人物が靴工場を建てたことがブランドの始まりとなる。その工場を大きく飛躍させたのがエドゥアールの息子、ユージェーヌだ。彼はいち早くアメリカの技術に注目して渡米し、今でもブランドの靴作りの根幹となっているグッドイヤーウェルト製法の技術を学ぶ。帰国後、ユージェーヌはパリ社交界の顔であるジャン・ヴィアールと競馬場で偶然知り合った。靴作りに全力を注ぐ純朴な青年ユージェーヌと華やかなヴィアール。この2人の出会いが、伝統とパリの洒落た感性を融合させ、現代にも通ずるブランドのスタイルを形作っていく。そして1922年、ユージェーヌが靴作りを学んだボストン近郊のウエストンという地名にちなんで「ジェイエムウエストン」と名づけられたブランドがスタートし、パリに1号店をオープンした。ジェイエムウエストンは、ソールの革をなめす工房を自社で持つ唯一のシューメーカーだ。ブランドが生まれたリモージュ地方の近郊に工房はあり、そこでブランドのソールとなるレザーを作っている。植物タンニンなめしという伝統的な製法を用いており、栗の粉や樹木の樹脂などから抽出されるタンニン液のなかに、濃度を徐々に高めながらレザーを順に浸していく。その後、屋外にあるなめし槽に、レザーとオーク樹皮を何層にも重ねて水を注ぎ、8〜10か月間放置してタンニンが皮に浸透するのを待つ。この待つ時間が、取り替える必要が滅多にないと言われるほど耐久性が高く、足馴染みの良いレザーソールを作り出す。ジェイエムウエストンといえば、1946年に生まれた“シグニチャーローファー #180”が代表的な形として思い浮かぶだろう。200足以上もの試作を経て作られた一足は、なんと現在まで変わらずに同じラストと製法が使われている。“シグニチャーローファー #180”が今のように知られていく背景には、当時のパリの若者たちの存在があった。彼らは“Bande du Drugstore”(ドラッグストアのギャング)と呼ばれ、デニムに合わせて父親の“シグニチャーローファ #180”を裸足で履き、シャンゼリゼ大通りのドラッグストアにたむろした。当時はおじさんが履くフォーマルなものというイメージだったローファーを、若者が取り入れることによって反骨の意思を表明したのである。その後、当時のカウンターカルチャーを代表するアイテムとして、より幅広い層に親しまれるようになる。長く履けてサステナブルと言われているレザーシューズだが、ジェイエムウエストンには『ウエストン・ヴィンテージ』という面白いプロジェクトがあることをご存知だろうか。もう履かなくなったジェイエムウエストンの靴をブランドが下取りし、それをリモージュの工場で修繕して、新品よりもリーズナブルに販売するのだ。クオリティ面は新品と変わらない上に、一足として同じものがないヴィンテージの風合いが心をくすぐる。昔から変わらない技法が土台としてありながら、その時の空気を軽やかに取り入れ新たな魅力へと変えていく。その柔軟さこそが、長く愛され続ける理由なのだろう。

Golf #641
Shoes ¥187000 by J.M. WESTON (J.M. WESTON AOYAMA) Jacket ¥742500 by visvim (F.I.L. OMOTESANDO) Vest ¥41800 by Jamieson’s Knitwear (BEAMS F) Pants ¥176000 by AURALEE Other Items [Stylist’s Own]

Signature Loafer #180
今年で誕生80年を迎えるブランドのアイコン的なシューズ。カモメのシルエットの様なストラップのあしらいが優雅な印象をもたらす。
Shoes ¥165000 by J.M. WESTON (J.M. WESTON AOYAMA)

およそ500人からなるフランス共和国親衛隊の騎馬部隊が履く乗馬ブーツも1975年から作り続けている。
Photo  Masato Kawamura
Styling  Satoshi Kamei
Hair TAKUMI
Model  Eythan
Edit  Takayasu Yamada  Ayuko Hashimoto
Samuel Pattison  Maki Kinoshita
Text  Ayuko Hashimoto

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