The Classic Shoes Crockett & Jones
ドレスから探検まで 歩み続けてきた靴
「安い靴を4足買うより、良い靴を1足買いなさい」という言葉を、イギリスの名優ケイリー・グラントは残した。ジェームズ・ボンドのモデルにもなった稀代の洒落者だ。そしてこう続けている。「上質な革で作られた1足は、質の劣る4足よりも長持ちするだろうし、きちんと手入れをすれば、どれだけ年月が経っても、あなたの優れたセンスと判断力を物語り続けるだろう」。流行を追いかける靴ではなく、履く人と一緒に時間を重ねる靴。それができるのは、やはり長い歴史に磨かれてきた名門シューズブランドの靴たちだ。

Shoes ¥132000 by CROCKETT & JONES (FRAME AOYAMA) Knit ¥34100 by NEEDLES (NEPENTHES) Shirt ¥28600 by NEEDLES for UNITED ARROWS (UNITED ARROWS ROPPONGI HILLS) T-Shirt ¥8800 [Vintage] (STEP AHEAD HARAJUKU) Pants ¥79200 by NICENESS (ELIGHT Inc.) Scarf ¥30800 by FRANCO BASSI (BEAMS F)

人気の高いタッセルスリッポンだが、この“CAVENDISH 3”というモデルはクロケット&ジョーンズのなかでも定番だ。この新型は、従来から使用している木型をベースに、日本市場からのフィッティングに関する要望を反映し、かかと周りやアーチ部分のサイズを従来より狭めた新開発のラスト“375”を採用している。これによりホールド感が一段とアップされた。チャームポイントであるタッセルも職人が一つひとつ丁寧に作り上げている。
Shoes ¥137500 by CROCKETT & JONES (FRAME AOYAMA)

流行とともに新しいシューズブランドが生まれては消えていく現代において、約150年にわたり、変わらない哲学を軸に靴をつくり続けているブランドがある。1879年、英国屈指の靴づくりの街、ノーサンプトンでジェームズ・クロケットとチャールズ・ジョーンズによって創業されたクロケット&ジョーンズだ。創業者である2人は、ともに靴づくりの家系に生まれた。ジェームズは靴職人だった祖父のもとで技術を学び、チャールズもまた、代々続く靴職人の家系の出身だったという。2人が手がけたのは、その時代の流行を追うための靴ではなく、日々履き続けるための堅牢なレザーシューズだった。優れた素材を選び、確かな技術で仕立て、長い時間をかけて完成させる。そんな彼らのものづくりに対する思想は、創業から約150年を経た現在も、ブランドの根底に息づいている。1880年代、事業の成長とともに工場を拡大したクロケット&ジョーンズは、当時としては革新的だったグッドイヤーウェルト製法のための専用機械を導入した。アッパーとインソールをウェルトと呼ばれる細い革に縫い付け、さらにウェルトとアウトソールを縫い合わせるこの製法は、高い耐久性を備えるだけでなく、ソールを交換しながら長く履き続けることを可能にする。手間も時間も必要とする製法だが、だからこそ生まれる強さと、修理を重ねながら履き続けられるという魅力がある。効率だけでは測れない価値を守り続けてきたことも、クロケット&ジョーンズというブランドを形づくる重要な要素のひとつだ。その品質がドレスシューズの世界だけで証明されてきたわけではないことも、クロケット&ジョーンズの確かなものづくりを物語っている。二度の世界大戦では、英国軍のために大量の靴やブーツを製造。また、1914年にはシャクルトンの南極探検隊の足元も支えた。このような時代に求められたのは、装飾性ではなく、確実に歩き続けるためのタフさだ。日常とはかけ離れた過酷な環境においても必要とされたという背景は、彼らが培ってきた靴づくりのオーセンティシティを物語っている。現在も、ブランドの中心には創業の地であるノーサンプトンがある。そこで受け継がれているのは、昔と同じ靴をつくり続けることだけではない。ラストの設計やフィット感を追求した履き心地、最高級の素材選びなど、時代に合わせて細かな進化を重ね続けている。“良い靴を正しくつくる”という彼らの根本的な考え方は、今も変わらない。クラシックなレザーシューズを、スーツのためだけのものだと捉える人もいる。しかし、クロケット&ジョーンズの魅力は、合わせる服をスーツに限定しないその懐の深さにもあるのかもしれない。ダニエル・クレイグが演じるジェームズ・ボンドの端正なスーツスタイルはもちろん、デニムやチノ、軍パンといったカジュアルなボトムスにも自然に馴染む。トラッドやアイビー、ワーク、ストリートまで、スタイルによって異なる表情を見せてくれる。それは、デザインそのものが時代の一瞬を切り取ったものではなく、長い時間をかけて磨き上げられてきた普遍的なバランスを備えているからだろう。流行が移り変わることは当然だ。しかし、時代を越えて残り続けるものが、何一つとして変わらないと言いたいわけではなく、時間をかけながら変えるべきところを見極め、変えてはいけないものを徹底的に守り続ける。その経験の蓄積によって、クロケット&ジョーンズは単なるクラシックなシューズブランドという枠を越え、今日のスタイルをつくるためのアイコニックな存在であり続けている。何を着るかによって靴を選ぶのではなく、一足の靴からその日のスタイルを考える。そんな楽しみを教えてくれることこそ、約150年にわたってクロケット&ジョーンズが多くの人々の足元に選ばれ続けてきた理由なのかもしれない。

Shoes ¥143000 by CROCKETT & JONES (FRAME AOYAMA) Jacket ¥49500 by Supreme®/Champion® (Supreme) Knit ¥35200 by WILLIAM LOCKIE for UNITED ARROWS (UNITED ARROWS ROPPONGI HILLS) Long Sleeve T-Shirt ¥20900 by NEEDLES (NEPENTHES) Pants ¥66000 by MARGARET HOWELL Other Items [Stylist’s Own]

クロケット&ジョーンズの“MORETON”というモデル。一見するとクラシカルなUチップのデザインは、端正でありながらもほどよいカジュアル感を醸し出しており、どんな装いにも馴染んでくれる万能な一足だ。一番の魅力といえるのが、日本人の足型にも相性が抜群のラスト“292”を採用している点。甲高幅広の足にもストレスを与えない余白を備えながら、英国靴らしい気品あるスマートなシルエットを崩さない絶妙な設計で、一足は常備しておきたいと思わせる逸品だ。
Shoes ¥154000 by CROCKETT & JONES (FRAME AOYAMA)

| Photo Masato Kawamura Styling Satoshi Kamei | Hair TAKUMI Model Eden | Edit Takayasu Yamada Ayuko Hashimoto Samuel Pattison Maki Kinoshita Text Samuel Pattison |












