an eagle LARRY SMITH
侍の刀のように 信念を貫くシルバージュエリー LARRY SMITH

信念を貫くシルバージュエリー
デザインより
経験から文化を伝えたい
かつて日本の地で腰に刀を拵え、馬に乗る侍がいた時代。日本から9,660km離れたアメリカの荒野では、弓矢を拵え馬で走り回っていたネイティブ・アメリカンが生きた時代でもある。場所や文化に違いはあれど、幾多の世界の文明や文化に息づいてきたシンボルにイーグルがいる。地上からではほぼ肉眼で見ることができないほど高い場所を自由に舞い、太陽の光を受けて黄金に輝くその翼から、日本では犬鷲、英名ではゴールデンイーグルと命名されている。この高貴な存在をブランドのモチーフの一つとし、イーグルの一羽に物語を与えたブランドがラリースミスである。
創業者でありシルバースミスの林田吉史氏は、幼少期にアメリカにいた家族とともにネイティブアメリカン居留地やモニュメントバレー(ユタ州南部とアリゾナ州北部の境界にある、ナバホ族が管理する地域)を訪れ、強烈な感銘を受けた。ネイティブアメリカンの文化や精神にリスペクトを持ち、ネイティブアメリカンインスパイアジュエリーとして、2009年に独学で作り始めた。数え切れないほどの銀を叩き、曲げ、火を巧みに操り細工し、自身の哲学をジュエリーという素材に吹き込み続けてきた。日本人が作るネイティブアメリカンジュエリーとして、彼はどのような想いを表現しているのか。銀を叩く音と革の匂いに満ちたシルバースミスの工房を訪ねた。
「身につけてくれる人が、普段からお守りのように想い、眺めれば心が穏やかになり、身が引き締まる。そんな心の拠り所になるようなシルバージュエリーを作りたいんです。そのためにはデザインだけではなく、自分の想いや経験した文化を伝えていかなければいけない。日本の侍は、自分が身につけるものに大変こだわりがありました。なぜなら身に着けるものは、生き方の指針に見えることもあるから。それは見た目の派手さの話ではなく、眺めているだけでも心が穏やかになるような、心の拠り所になる姿形という意味です。その精神性をものづくりで形にして伝えたいんです。日本には昔からそのような高貴な文化や精神がずっと続いています」。
カゼキリフェザー
未来を切り拓く
侍にとっての刀のような、持つ人の心の拠り所になるシルバージュエリーを作る。ラリースミスのものづくりは、外見的なデザインやディテールだけではなく、見えないスピリットを削り出していく作業でもあるのだ。そうして生み出されたラリースミスのシグネチャーの一つが、「風切り羽」という犬鷲の羽をモチーフに象ったシルバージュエリーである。「鷲が空を飛行する上で重要な役割を担い、そして進みたい方向へ風を切り開く羽です。人間に例えると親指に相当する初列風切羽の美しさをモチーフにするのは必然でした。猛禽類の中で頂点に君臨し、日本でもネイティブアメリカンにとっても、鷲の羽は長い歴史の中でも高貴な人間が所有し、今でも特別な象徴です。

学術上は“かざきりばね”と呼ばれますが、ラリースミスでは“かぜきりばね”という呼称にしています。デザイン、創作する上で風は大きなテーマの一つです。自然界では風を強く受ける時がありますが、その瞬間に“生命”を強く実感します。心も常に風を感じる環境にあることが大切です。雨に濡れると水はしたたっていきますが、風は当たった面だけでなく、葉の裏側まで吹き抜けていく感覚を与えてくれます。風に抵抗するのではなく、受け入れる。これはネイティブアメリカンから学んだ教えです」。自分が身を置く状況の風、社会や時代の風を受けつつ、決して流されるのではなく自分のスタイルを貫く。風を感じ取る感性は、自分の精神状態を把握するためにも重要な要素だと語る。



余白のあるものづくりで
お客様と一緒に仕上げていく
シグネチャーアイテムとしてはカゼキリフェザーのほかにも、人との繋がりや縁を感じさせる“MUSUBI”がある。結び目をモチーフにし、結界や魔除けとして寺社仏閣に祀られる注連縄に用いられてきた精麻を取り入れ、独自のブレンド感のあるジュエリーも展開している。各コレクションは日本語の美しさをインターナショナルに広めるために、表記にもこだわりと独自性を持ちながら日本人が作るシルバージュエリーとして提案されている。

ネイティブアメリカンジュエリーと日本の文化や精神を調和させることは、先に話してくれた“風”との付き合い方にも通じる。大切にしている価値観の中に、日本特有の「余白」や「間」、「侘び寂び」、「経年変化」があるようだ。「僕が作るシルバージュエリーは、店頭に並んだ時点ではまだ未完成の状態です。なぜなら僕の技術もまだまだ発展途上。僕の使命は、素材となる銀の持ち味を最大限に楽しんで引き出すこと。銀が持っている美しさや性質を表現するために、僕は直接手を加えます。常にシンプルなものづくりを目指していますが、その最大の理由は“シンプルなものほど直せる”から。ジュエリーを手に取った人が使っていく過程で気になる部分が出てきたとしたら、その人と一緒に話し合い、より良くするようにアップデートを加えていきます。大事に所有している人と一緒に作品に寄り添っていくことを大切にしています。僕らが一生懸命作ったものを、お客様に一生懸命に使ってもらうことに喜びを感じます。技術やお客様との関係性は進化し続けている。今日と明日を比べてもきっと変わっています。そうやってお客様に育ててもらうことが僕ら作り手の仕事だと思っています。売買で終わりではなく、所有していただくことが縁の始まり。使用する中で、使い心地や使い勝手を僕は何度もヒアリングするようにしています。僕の仕事は作ることに責任があるから、お客様とコミュニケーションを取り、そのアイテムの面倒を僕が生きている限りは見続けていくつもりです。自分たちで責任が持てる範囲の量しか作ることもできないし、したくない。直しながら長く使い続けないと、作り手も買い手も時間がもったいないし、手間になってしまいます。僕はものづくりの可能性に人生をかけているので、作ったものを実際に見て、触ってもらいたい。特に自分の夢を切り拓こうとしている人に向けてのメッセージです。一張羅ではないけれど、そう思えるものに出会える人生って素敵じゃないですか。自分の夢をどれだけ大きく描けるか。その可能性をラリースミスに出会って感じてもらえると嬉しいです」。
思い描くラリースミスという壮大な夢。その夢を叶えるべく大空に舞い上がった一羽のイーグルは、カゼキリフェザーで未来を切り拓いていく。ラリースミスのスピリットが込められたジュエリーは、侍の刀のように鋭い輝きを放ち、手にした者の信念に寄り添う力が宿っている。



| Photo Masato Kawamura | Interview & Text Yutaro Okamoto |












