Places of Comfort & Chic

岩井良太が自身と向き合う シンプルモダンな鴨川の貸切茶屋

“Comfort”で“Chic”な場所とはどんな場所だろう?心地の良い音楽とゆったりした時間が流れるカフェ?歴史と情緒にあふれた宿?センスある作品を目にできる美術館?答えは人の数だけあるだろうが、それらはいずれも訪れたものの気持ちを豊かにしてくれる場所に違いない。時代のムードが変わり、豊かさ、贅沢の基準も変わってきた。高級ホテルやレストランなど、いわゆる“ラグジュアリー”とは違う心の贅沢。豊かな時間を過ごせる場所。ここからはそんな場所について、ファッションの第一線で活躍する6人のクリエイターに語ってもらった。彼らにインスピレーションを与える7つの場所は、我々をも大いに刺激してくれることだろう。

Ikehan (Kyoto)
Selected by Ryota Iwai (AURALEE)

鴨川をのぞみ茶とともに
自分の心の動きを掴む 岩井良太

「コンフォート&シック=心地よく快適でシックな場所と考えた時、まず思い浮かんだのが京都の鴨川にあるこの池半でした。完全予約制で、貸切りでお茶のコースを楽しめるお茶屋さん。数年前に京都に旅行した時に立ち寄ったのですが、その数時間の体験はとても印象に残っていて今でもその感覚はよく覚えています。中に入るととても静かで別世界のようでした。古臭さも堅苦しさも感じさせない、モダンでシンプルな美しい空間で中国、台湾、日本の厳選された数種類のお茶とお菓子をゆっくりと楽しむ。音楽もなにもなく、お湯が沸く音だけが響く中、お店の方の説明を聞きながら静かにお茶を楽しむことができます。大きな窓からは鴨川の綺麗な景色。研ぎ澄まされた空間でお茶の香りと味にだけ集中し、お茶を淹れる作業を繰り返すだけの時間は、まるで瞑想でもしているように、ほどよく頭を空っぽにすることができ不思議ととてもリラックスできました。訪れた日は外が大雨だったのですが、中に入るとあまりに静かで最初は少し緊張してしまったほど。でも次第にその緊張感も心地よくなってきて。そしてそんな空間に身を置くと、自分の心の動きをつかみやすいことに気づきました。今自分はどんなことに心を惹かれ、どんなものを無駄だと考えているのか。ただお茶を味わうだけでなく、ゆったりと流れる時間の中で自分と向き合うことができました。それ以来、お茶を飲むのが好きになったのですが、僕自身、前回訪れてから時間が経ってしまっていますので、またぜひとも訪れたいと思っています」。

「茶は服のよきやうに」をテーマに、京都・鴨川からお茶の魅力を発信し続けている池半。歴史ある京都の街と自然、そして静かな空間で丁寧に淹れられるこだわりの茶が、心安らぐひとときを演出してくれる。日本茶だけではなく、中国、台湾のお茶が楽しめるのも魅力。コースには「茶席のコース」、「点心のコース」の2つが用意されている。隣には店主が営む宿「鴨半」もあるので、気になった人はそちらにも足を運んでほしい。

茶室/茶藝室 池半
京都府京都市下京区鴨川筋五条下る都市町143-11
営業日:土、日、月、火 営業時間:春夏(3〜10月)11:00〜16:00
秋冬(11〜2月)11:00〜15:00
ikehan.kyoto@gmail.com

岩井良太
モダンでシンプルなミニマルデザインと、開発から立ち会う上質なこだわりの素材使いで定評のあるオーラリーのデザイナー。2015年ブランド設立。今年の1月にはパリでショーも行った。その丁寧なものづくりは、国内はもちろん海外からも高い注目を集めている。

Edit & Text Satoru Komura

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