Kondaya Genbei Osaka Store
ラグジュアリーフロアの真ん中で 勝負を挑んだ日本のプライド

京都・室町を拠点に、1738年から続く帯屋、誉田屋源兵衛。10代目当主・山口源兵衛は、帯や呉服にとどまらず、幅広い日本文化に精通する人物だ。日本的感覚を学ぶため、Silverでもこれまで幾度となく取材を重ねてきた。海外の名だたるメゾンでさえ教えを請いに通うことがあるという、まさにクリエイティブの視点から見た日本文化の生き字引といえる存在である。

そんな誉田屋源兵衛が、今年3月、大阪の阪急梅田本店に初となる直営店をオープンした。これまでは卸やポップアップでの展開はあったものの、直営という形は今回が初めてとなる。
同時期に阪急梅田本店の5・6階「HANKYU LUXURY」がリニューアルされ、その6階フロアに出店。世界中の名だたるラグジュアリーブランドがひしめき合う空間の、ほぼ中心に店を構えた。
その理由について山口はこう語る。
「日本人はこれまでヨーロッパの文化を追い続けてきた。だから、従来の呉服売り場では来てもらえない。でもここなら、日本人にも海外の人にも見てもらえるし、価値も理解してもらえる。ヨーロッパのラグジュアリーブランドと共存しながら戦う、まさに異種格闘技戦。こういう場所こそ理想でした」。

空間デザインは、デザイナーの柳原照弘氏が担当。店内は黒を基調とし、京都室町の本社にある黒蔵を彷彿とさせる。深い黒の空間の中で、帯や着物の繊細な技術と大胆な色彩が際立つ。
一方で、店頭に並ぶ商品の数は極端に少ない。これは、顧客一人ひとりに合う品を、奥から提案したいという考えによるものだ。


通路に面した看板には、ひときわ視線を引きつける孔雀の陣羽織が飾られていた。これも誉田屋源兵衛による制作だ。孔雀は毒虫を食べることから毒への耐性を持つとされ、神格化されてきた存在。孔雀明王を本尊とする孔雀経があるように、古くから厄除けとして重宝されてきた。
その延長として、戦国時代には毒矢除けのまじないとして孔雀の陣羽織が用いられていたという。
「当時、孔雀の羽を手に入れるのは非常に大変なこと。天下人クラスの財力がなければ不可能でした。私の知る限りでは、伊達政宗、井伊直政、上杉謙信といった武将が身につけていたと思います。ただし、着たからといって毒矢を避けられるわけではない。命懸けの場面だからこそ、安心感が欲しかった。いわば“まじない”のような衣装ですね」。
この孔雀の陣羽織を見るだけでも訪れる価値はあるが、更衣室に展示された白孔雀の衣装もまた圧巻の美しさを放つ。
「どうしても白孔雀で作品を作りたかった。普通の孔雀はお金を出せば手に入ることもあるけれど、白孔雀の羽はほとんど手に入らない。集めるだけでも本当に大変でした」。

店内に展示された一角にが「はかりてつくらず」と記されていた。これは誉田屋源兵衛の家訓だ。本当に良いものを作ろうとすれば、コスト計算だけでは成り立たない。 「この家訓には正直、困ることもありますが(笑)、本気でそう思っています」。


妥協なきクオリティを追求した品々。しかし一方で、ものづくりの後継者は減少し、これまで受け継がれてきた技術が失われつつあるのも現実だ。
だからこそ、この場所は単に商品を販売する場ではない。日本のものづくりが持つ本質的な価値と、その文化の豊かさを伝える場としての役割も担っていく。
誉田屋源兵衛
大阪府大阪市北区角田町8−7 阪急うめだ本店 6F HANKYU LUXURY
営業時間:10:00-20:00(阪急うめだ本店の営業日時に準ずる)
https://kondayagenbei.jp/
| Photo Yuki Onishi | Interview & Text Takayasu Yamada |












