Interview with Glenn Martens About New DIESEL

実験的でサステナブルな ディーゼルのデニム作り

グレン・マーティンスが志す
実験的でサステナブルなデニム作り

デニムを中心としたハイクオリティかつ尖ったデザインのウエアで、ラグジュアリーでもカジュアルでもない“プレミアム・カジュアル・ウエア”というカテゴリーを築き上げ、世界中にファンを持つディーゼル(DIESEL)。変化を恐れず、自由な発想とチャレンジ精神を大事にする本ブランドは、常にその理念に忠実にアクションを起こし続けている。昨秋発表されたグレン・マーティンス(Glenn Martens)のクリエイティブ・ディレクター起用もそんなスピリットの表れだろう。ワイ・プロジェクト(Y/Project)で培ってきたコンセプチュアルで実験的なマインドを、彼はどのようにディーゼルのプロダクトに活かしていくのか。

6月にお披露目となった就任後初となる2022年春夏コレクションムービーも世界中で話題となったが、本コレクションがオンラインストアや一部ポップアップストアにて先行発売がスタートする今、彼は何を思うのか。新たなスタートを切ったグレン・マーティンスが考えるディーゼルの将来とは?世界的なブランドのディレクターとして何を意識しているか聞いてみた。

ーまず、ファッション業界で働こうと思ったのは何故ですか?

高校を卒業した時、何かクリエイティブなことをしないといけないと思い、インテリア・アーキテクチャを勉強しにアントワープ(ベルギー)へ行ったのですが、その時に初めて有名なファッション学校(アントワープ王立芸術アカデミー)が近くにあることを知りました。そこからあっという間にファッションという新しい世界に惚れてしまい、進学しました。

ーディーゼルで働き始めてから驚いたことはなんでしょう?

このブランドで最も驚くのは、“誰でもディーゼルの魅力を感じられる”ということ。これはディーゼルのとても個性的なポイントだと思います。私が16歳の頃、初めて意識して買った服がディーゼルのものでした。当時ディーゼルのデニムがどうしても欲しかったのです。私がブランドのアイテムに対して強い欲望を感じた初めての経験でした。この気持ちは、「ディーゼルはマスト!」と思って育った世代の人々が共通にもつ感覚だと思います。

ーこれまでワイ・プロジェクトのディレクターとして主にパリを拠点として活動されてきましたが、現在はイタリアのディーゼル本社でも活動されています。フランスからイタリアへのトランジションはどのようなものであり、これまでの短期間でどのようなことを学びましたか?

とても興奮していて、誇りに思っています!DIESELは40年間以上高パフォーマンスを記録している大企業ですが、今も成長を続けていて、ブランドとしてますます強くなっているように感じます。就任した直後、すべてが猛スピードで動いていたので、ディーゼルが今までどのようなビジネスをしてきたかを学ぶために少し時間が必要でした。また、これからブランドの価値観をどのようなかたちで定義していくのかも考えていました。

ーワイ・プロジェクトと比べて、コレクションをデザインする出発点はどのように違いますか?

各ブランドのクリエイティブ フォーカスが非常に異なっていて、表現も全く違うので、両方のブランドで平行作業するのは大変ではありません。ディーゼルでは服の表面に関する素材、色、グラフィックなどで実験して、着やすいようにシンプルなシルエットにまとめていますが、ワイ・プロジェクトではシンプルな生地を使って、服の構図や制作技法で実験しています。

ーワイ・プロジェクトでの小さなデザインチームからディーゼルでの大きいデザインハウスへシフトする上で、デザイン過程はどのように変化しましたか?

ディーゼルは、主にカジュアルウエアを扱う世界的な人気ブランドとして知られていますが、そうしたアイテムに私のノウハウ、リサーチ、実験的精神を融合させ、コンセプチュアルに仕上げることは難しいことではありません。私はエクスペリメンタル(=実験的)な服を作ることで知られていますが、ディーゼルでの実験は、ウエアや服の表面だけでなく、ウォッシュ、加工、混合素材、色、グラフィックにまで及びます。今回の2022春夏コレクションには、ブランドの基本的な価値観と伝統である楽しさ、革新、成功、アクティブなどの要素がミックスされています。とてもエクレクティックで、ジェンダーレスなアプローチを持って作りました。

—クリエイティブ・ディレクターに就任してから、この短期間でより環境や社会に配慮したサプライチェーンに移行することを重要視してきました。デニム・ライブラリーの設立や、QRコードタグによる製造工程の透明化など、すでに大きな一歩を踏み出していると感じます。なぜこうしたことを大切にするのでしょうか?また、環境に関する責任において、どのような目標を持っていますか?

昨年秋からサプライチェーンを改良することに心掛けてきました。これからも長い道のりではありますが、覚悟はできていて、そのことに全力を尽くしてやって行こうと思います。そこで開発したのが、DIESELの基礎でもあるデニムのDIESEL LIBRARYです。これはブランドのエッセンシャルと考えられるデニムアイテム(5ポケット、ドレス、ジャケット、その他)をいつかは完全にサステナブルな製造を目指すためのコレクションです。6ヶ月という短い期間の中で実現できました。このスピードには驚きましたね。

ー長く着られる服作りはサステナブルという視点においても、現代の社会にとても重要だと考えています。長く着られる服、長く愛される服とはどのような服だと思いますか?

私にとって、それはデニムですね。着れば着るほど、味が出てきて、着心地もよくなります。ユニバーサルで、愛着がわく頑丈なデニムは長年穿き続けられるので、そういう意味でもサステナブルです。誰もが知る生地であり、いつでも着やすいデニムは、昔も今も、そしてこれからもディーゼルにとって、ブランドのエンジンです。ブランドの製造過程を買い手に伝えることも私達のサステナビリティの旅の一部でもあるので、ディーゼルが作るデニムは可能な限りクリーンに作っていきたいと思います。

ー6月に公開された Spring/Summer ’22 コレクションのショートフィルムは、フランク・レボンとクリストファー・シモンズと一緒に制作されていました。デビューコレクションで彼らと一緒に仕事したいと思ったのは何故ですか?

彼らを選んだのは、彼らのプロセスと考え方が好きだからです。ディーゼルは楽しくてラディカルさを持つ、エクレクティックで、オルタナティブなブランドで、メインストリームの業界には属していません。他のブランドでは作れないような、一風変わったビデオを作りたかったのです。

ーショートフィルムは現実のハウスパーティーから非現実の惑星へとトランジションし、最終的にショートフィルムの最初のシーンへとループします。ファッションプレゼンテーションを見ているというより、映画のように感じました。このショートフィルムはどのようなメッセージを込めて作りましたか?また、最後ループし、ショートフィルムの最初のシーンへ戻るように作られたのはなぜでしょう?

このフィルムは、現実と夢の境界線をぼかしています。深夜の家のシーンから始まり、都会の道、そしてエレベーターに乗っているシーン、そして最後は深い赤のフィルターがかかったトリッピーで異質な部屋で締めくくられている。これら4つの異なる環境は、主人公の進化と変化を表しています。パンデミックによってひっくり返された社会が新たなあり方を探っている現実も反映しました。ディーゼルでは、アートとの融合を幅広く人に届けられることを楽しんでいます。

22 SPRING SUMMER COLLECTION SHORT MOVIE BEHIND THE SCENE

22 SPRING SUMMER COLLECTION SHORT MOVIE BEHIND THE SCENE
ー500店舗以上持つディーゼルへ就職することで、今までになかった国際的なリーチを得たと思います。ディーゼルのデザインやメッセージが多くの人に届くと知った上で、特に意識していることはありますか?

ディーゼルと共に働きたいと決めた理由の一つでもあるのですが、この会社のヘリテージには社会的な役割を果たすという文化があります。このような国際的なブランドのトップに立つと、その力を持つことで、偉大な責任を持つことになります。その力でどのようなインパクトを世界に与えたいか、考え直しました。ただ、美しい服を作るだけでは足りない。私にとってこれからの一番大きなチャレンジは、ブランドとして大勢の買い手へ話しかけている責任を理解して、社会や環境のサステナビリティに関して求める変化を加速させることだと考えています。

ーディーゼルの魅力はどのようなところにあると思いますか?また、今後どのように進化させていきたいと考えていますか

ディーゼルはアクティブに人生を楽しむと同時に、実験的に思わぬ方法で刺激を与えることを目指しているブランドです。デザインのインスピレーションは、実際にディーゼルのアーカイブから得ていますが、そのほとんどは、私が18歳だった頃の記憶にも残っているものです。それらが今でも、関連性を持って現代的に感じるのに驚かされています。そんなアーカイブから得たストーリー、カルチャーを受け継ぎつつ、私たちがデニムに関しての知識が世界トップクラスであることを理解して、社会的にも環境的にも持続可能なブランドであることを目指していきたいと思います


グレン・マーティンスのファーストコレクションのショールックの一部は、現在公式オンラインストア及び限定ポップアップストアにて先行販売がスタートしている。彼が生み出す新たなディーゼルの姿をぜひその目で確かめて欲しい。

■特設サイト
https://www.diesel.co.jp/ss22show-invite/

■オンラインストア
https://www.diesel.co.jp

■ポップアップストア<DIESEL BY GLENN MARTENS POP UP STORE>
阪急メンズ大阪2階=GARAGEプロモーションスペース(9月22日(水)〜28日(火))
伊勢丹新宿店メンズ館6階=メンズコンテンポラリー(9月22日(水)~28日(火))
GR8 https://gr8.jp/(9月20日(月)~9月26日(日))

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Interview Satoru KomuraText & Translation Mikuto Murayama

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