Hand Me Down Watches SUMIRE (Actor, Model, Artist)
祖父の遊び心を 自分のスタイルに馴染ませて
良い時計は数十年、数百年と時間を超えて長く愛されていく。時を経る過程で誰かから誰かへと引き継がれる時計たち。見知らぬ誰かではなく、大切な人から受け継いだ“おさがり時計”には、鮮明な記憶が刻まれ、宿る思いもいっそう深くなる。その背景にはどんな時間と、どんなストーリーがあるのだろうか。
SUMIRE
1995年7月4日生まれ。2014年から2023年まで「装苑」専属モデルを務めた。数々の映画やドラマ、CM、ミュージックビデオなどで活躍中。趣味はキャンバスに絵を描くこと。
Oyster Perpetual Datejust Ref.62523HD18 (1980s) by Rolex
from Grandfather
「1ヶ月ほど前、家族で食事をした後に私の運転する車で祖父を送っていたところ、突然『この時計格好良いだろ、着けてみる?』という会話になり、そのまま私に譲ってくれたものです。以前から時計に興味は持っていましたが、やはりとても価値のあるものだからこそ、自分に合う時計をなかなか見極められずにいました。長年悩んでいたなかでの出来事だったのでとても嬉しかったです。祖父が時計好きの知人から数年前に譲り受けたもので、その当時から針は動いていませんでしたが、ファッション好きな祖父は特に修理をせず、時計としてではなく完全にアクセサリーとして腕に巻いていたようです。軽やかな気持ちでファッションを楽しむ、祖父の遊び心には幼い頃から憧れていたので、時計を受け継ぐことでそういったマインドも自分の中に芽生えたような気がします。父方の祖父母がお洒落好きでものをとても大事に使っているので、祖父の服や靴を弟が譲り受けることも ありますし、祖母と私は背格好が近いので 受け継ぐものは多いです。二人にとっても、思い出の詰まったものを家族に引き継ぐことはきっと嬉しいことなんだと思います。今はまだ壊れたままで、サイズも大きく緩いのですが、7月に30歳の誕生日を迎えるタイミングでロレックスの店舗へ修理に出し、長く使っていきたいと思っています。今はまだ私にとって、ロレックスというブランド名が大きくて、背伸びをするような感覚ですが、だからと言って合わせるファッションも高級なものにはしたくない。普段の自分らしい、古着やカジュアルなスタイリングに合わせたいです。この時計は、新品で買うよりもゴールドとシルバーの輝きが落ち着いて、これまで辿ってきた時間の長さを感じるようなくすんだ風合いも好き。自分の服装にもしっくりきますし、等身大の私にナチュラルに馴染んで寄り添ってくれているような気がします。『あげるよ』とだけ言われてさらっと渡されたものですが、この時計をつけることで素敵な大人になってほしい、という祖父の願いを感じます。あまり多くを語らない人ですが、言葉がなくても伝えられる思いがあるって格好良いです」。
Photo Asuka Ito | Hair & Make-up Yuko Aika | Interview & Text Aya Sato |