New Classics of the World 02 Emily Oberg

スポーティー・アンド・リッチの エミリー・オーバーグへの特別取材

タイムレスで
ノスタルジー溢れる、
現代のレトロ
スポーツウエア
エミリー・オーバーグ

現代のファッションは全て過去からの積み重なりである。過去のカルチャーやデザインをリサーチして新たな要素を加えることで、生み出されるそのプロダクツはノスタルジーを持ちつつモダンにも感じられる。

80年代の女性のヴィンテージスポーツウエアと健康なライフスタイルをブランドの軸とするエミリー・オーバーグのスポーティー・アンド・リッチもそんな魅力を持ったブランドだ。買うものの数を減らして、その分良いものを買うという「Less but better」の概念を元に、毎シーズンシンプルでエレガントなコレクションを展開している本ブランド。元々インスタグラム上でムードボードとして始まったブランドが、今では健康的なライフスタイルをテーマとするサステナブルなアパレルブランドに進化し、注目を集めている彼女はどのようにクラシックを再解釈しているのだろうか?エミリーがブランドに描く女性像とそのタイムレスな感覚に関して聞いてみた。

ロレックスデイトナとイームズマネジメントチェアにシンプルなスウェットのセットアップ。これらのアイコニックでシンプルなデザインの組み合わせこそがエミリーが考えるリラックスシックなモダンの女性像である。
モダンでシックな
健康的なライフスタイル

スポーティー・アンド・リッチのインスタグラムページを見ると、70年代から90年代のエルマガジンの見開きやカルティエタンク、プリンセス・ダイアナのパパラッチ画像やアービング・ペンのファッションポートレートなどノスタルジー溢れるクラシックな画像ばかりが並ぶ。だがよく見ると、合間にはブランドのルック画像も含まれていて、リファレンスのムードとよく馴染んでいることに気づく。そんなレトロなカルチャーから強い影響を受けているエミリーはこう話す。

「あの時代の人は真面目過ぎず、エゴやプレッシャーよりも、ピュアな楽しみでプロダクトが作られていたように見えます。投稿しているヴィンテージカーやヴィンテージウォッチ、レトロスポーツウエアは当時革命的でしたが、よく考えてデザインされていた為、今でも古く感じないと思います。私のプロダクトも同じような考えで、タイムレスで将来クラシックと思われるようなものを作ろうとしているんです」と話す。過去からインスピレーションを得るエミリーはその時代へのノスタルジーがブランドのビジュアル源とも話す。「ノスタルジーは私たちのデザインからキャンペーン、使う書体にまで影響していて、当時の雑誌や広告を見ると私は間違った時代に生まれてしまったのかと思う時もあります(笑)」。

70年代から90年代の余裕とエレガンスにあふれたビジュアルからインスパイアされているが、ブランドの軸は健康的なマインドと体を大切にするライフスタイル。今までのストリートカルチャーやファッション業界には数少なかった提案をしている。

「私たちのテーマであるウェルネスはいつになっても決して古くなる事はないと思います。将来的に健康が最も関心の高い話題になるかはわかりませんが、必ず健康を気にする人はいるし、そういう意味でブランドが長く愛されるクラシックな提案をしていると思います」。

ブランドの「ウェルネスクラブ」のブログやインスタ投稿では、オススメなエクササイズから専門家のアドバイスまで発信している。アパレルとスタイルはもちろんだが、エミリーが一番大切にしているのはブランドをサポートしてくれる人達の人生への姿勢と体の健康である。彼女の作り出している新しいクラシックはファッションだけでなく、それを含むライフスタイルでもあり、それはこれからもトレンドや時代に左右されることはないだろう。

プリンセス・ダイアナやキャロリン・ケネディーなど80年代のアイコニックな女性が持っていた余裕のあるシックさへの憧れも、スポーティー・アンド・リッチが作り上げる女性像の一部になっている。

2021年の冬のコレクションではパリの街並みでオフを過ごす女性のビジュアルを表現。コートにスウェットパンツを合わせ手首にはロレックスをフィーチャーするコーデには余裕のある休みのリラックスシックさを感じられる。
世代問わずアピールする
デザインとメッセージ

エミリーの話からよく出てくる「タイムレス」というキーワード。彼女が惹かれる憧れの女性や愛するデザインは全てそのカテゴリーに入っている。だからこそ自分が作り出すものはタイムレスであってほしいという望みが彼女にはある。

「私はトレンドを一切追っていないです。デザインしている時は『これは14歳のタイにいる女の子にも50歳の南フランスにいる女性にも伝わるかな?』と自分に問いかけながら多彩なプロダクトを作ろうとしています。また、ブランドのコミュニケーションでも自分がお客さんだったらどのようにブランドに話しかけてほしいかを考え、それを取り入れています」。

スウェットのグラフィックなどでは「Be Nice!」、「Drink Water!」、「Health is Wealth」というシンプルなメッセージをシンプルなデザインで伝えていて、世代を幅広く考えることで誰にでも分かりやすくて魅了的なブランドを作り上げている。結果的に彼女のメッセージは服を超え、日常的な人生へのアプローチとして受け入れられている。ライフスタイルはスポーティーに、マインドはリッチに。そのメッセージとデザインはいつか彼女の求めるタイムレスなクラシックとなるに違いないだろう。

レザーコレクションからのキーチェーンとカードホルダー、そして私物の90年代のロレックスデイトナと自分の頭文字でカスタムされたオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーの櫛。全てエミリーのライフスタイルの延長線であるスポーティー・アンド・リッチの世界の一部。

◯Sporty & Rich
https://www.sportyandrich.com/

エミリー・オーバーグ
カナダ出身のスポーティー・アンド・リッチの若きディレクター。20代前半はニューヨークで雑誌コンプレックスのエディトリアルディレクターやKITHのウィメンズラインのディレクターを務めていた。
@sportyandrich
@emilyoberg
Interview & Text Mikuto Murayama

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