Creator’s New Authentic Shinsuke Nakada (Unlikely)
中田慎介(Unlikely)の考える ニューオーセンティック
「ニューオーセンティック」とひと言でまとめても、その解釈とアウトプットは人それぞれ。ファッションシーンで活躍し続けるクリエイターが考える、新しい時代の信頼できるものとは。現代のオーセンティックと呼べるプロダクトを生み出し続けるデザイナーに、話を聞いた。
生まれる新たな品
王道は好きなんですが
王道のままじゃつまらない
「自分が今まで学んできた映画や音楽などのカルチャーやアメリカンクラシックの部分を土台に、いまの時代性に合わせた機能を合わせて新しい解釈をもたらす。それが僕がモノを作る上で大切にしていることであり、ブランドのテーマです」。そう話すのは長年ビームスのディレクターとして活躍し、昨年自身のブランド、アンライクリーを立ち上げた中田慎介だ。彼のものづくりの根底には、異なる要素を掛け合わせて、今の世の中に新たな提案をするというスタイルがある。それはマウンテンパーカの素材を裏地に使用したツイードジャケットをみてもよくわかる。また、ディテールワークも彼のクリエイティブの特徴だ。「僕は、特にディテールには手を抜きません。ジャケットひとつとってみても、このポケットはどのように使う想定でデザインされたのかなどを掘り下げながら、どうしたら現代に昇華できるのかをいつも考えます。機能美や用の美とも共通する考え方ですが、何かの目的のためにデザインされているものは美しいんです。見た目だけのデザインではなく、必然的に作り出されたデザインに魅力を感じます。そしてそんなストーリーを今の世の中に活かす形で地続きにすることがとても好きなんです。これまでの洋服の歴史の中の素晴らしいディテールに新しい解釈を加えて進化させるということは、すなわちこれから先の時代も長く着ていけるアイテムを作っているということにほかならないですからね」。ディテールをはじめ、カルチャーやカテゴリーの横断など、何かと何かを掛け合わせることで、この先の未来に残っていくプロダクトを生み出し続ける中田。そのものづくりの源は、幼い頃からの影響やバイヤー時代の経験から得た、アメリカのカルチャーにあるという。ハンドメイドではなく、大量生産方式のレディーメイドの概念に多く触れたことで、たどり着いた中田なりのモノづくり。「王道は好きなんですが、王道のままじゃつまらない。それが僕のもの選びやものづくりに対して共通する考え方です。試行錯誤を繰り返しながら、要素をツイストして生まれる化学反応を入れないと気が済まない。そこから生まれるデザインが面白いなと思うんです」。その考え方に基づき、生み出される洋服は、まさにニューオーセンティックと呼ぶにふさわしい。
中田慎介
2000年よりビームスのバイヤー、ディレクターを歴任後、2023年より自身のブランド「Unlikely(アンライクリー)」を立ち上げる。アメリカントラディショナルを基軸に、様々なプロジェクトや商品企画に携わっている。
Photo Asuka Ito | Edit & Text Satoru Komura Shohei Kawamura |