Editor’s Eye KONDAYAGENBEI Yukata, Obi
京都の老舗帯匠が作る 想いの入った浴衣
ファッションアイテムや、カルチャーに関連したプロダクトなど、Silverのエディターが今気になるモノを紹介する連載企画「Editor’s Eye」。
京都の老舗帯匠が作る
想いの入った浴衣
想いの入った浴衣
前号で取材をした京都の老舗帯匠“誉田屋源兵衛”。その時に見せてもらった新作の浴衣に心が奪われた。この文字の元になったのは、石庭で有名な京都の龍安寺に置かれているつくばい。茶室に入る前に手を清めるための手水鉢であるのだが、龍安寺のつくばいに書かれた文字は「我唯足知(われただたるをしる)」。意味は、“欲張って手に入れても満たされることはないから、満足する気持ちを持ちなさい”。といったものである。
だが、この文字を逆さに向け、「足」の一文字を消した浴衣を誉田屋源兵衛は作っていた。その意図は、10代目の山口源兵衛いわく、「消費はエネルギーで、今に満足なんてしていられるか」ということ。この浴衣につけられた名前は「我唯多知」。浴衣を着ることは久しぶりではあったが、最近改めて着物を着たいと思っていたことと、今の自分に満足なんてしていられないという気持ちが合わさって購入をした。この夏も何度かこれを着て外出をしたが、どこへ行っても「素敵ですね」と褒められる。慣れない言葉に浴衣同様、頬を赤らめた。
Photo Taijun Hiramoto | Text Takayasu Yamada |