Truck Furniture Los Angeles

LAにも拠点を持つことで得られる ものづくりのインスピレーション

新たな刺激を受ける場所として
国外発のショールームの役割
大阪とLA
世界を跨ぐ2拠点

1997年に黄瀬徳彦と唐津裕美の2人によって大阪で誕生したトラックファニチャー。木、革、鉄などありのままの素材感を大切に、自分たちが欲しい家具をモットーにものづくりを続け、日本はもちろん世界中に根強いファンを持つ。創業当時から卸売りはせずに自身の目の届く範囲での販売を貫いており、現在でも基本的には実際に商品に触れられるのは大阪の店舗のみであるが、新たなる拠点をロサンゼルスに作り上げた。なぜ2カ所目の拠点をロサンゼルスにしたのかと尋ねると、代表の黄瀬徳彦はこう話す。「スティーブン・ケンとの出会いが1番大きな要因ですね。彼がいなかったら、ロサンゼルスを気にしてもいなかったと思う。元々このスペースを借りたのは、たまたま縁があってスティーブンと仲良くなって、この建物が気に入ったから。空きスペースが出るたびに連絡をもらっていたんです。2年近く待って、やっと借りられたのが4、5年前。僕は海外に住んだ経験がなかったので、ロサンゼルスに部屋を持って住んでいる気分が味わえたらなという思いで借りはじめました。そこから自分が使う家具を色々持ち込んだり、丸見えだったキッチンを隠すように壁を作ったりしているうちに、どんどんショールームらしくなってきてしまって(笑)。これだったら人に見せてもいいのではないかという風に思いはじめたんです。アメリカから家具の注文を受ける事もあったので、実際に見てもらえる場所があったらいいなという思いもありました。だから紆余曲折を経て、結果的にショールーム的な使い方が出来る部屋が完成したという感じです」。 本拠地である大阪では同じ敷地内に工房もあるため、空間に対してどの家具を置くか試行錯誤が可能だが、ロサンゼルスのショールームではそうした空間作りにおいて難しく感じた点もあったという。「ロサンゼルスの場合は飛行機で家具を送らなければいけないので、空間に対して気軽に家具の入れ替えがしにくいわけですよね。様子を見るために最初にとりあえずテーブルと椅子とソファーひとつを送ってみたのですが、テーブルに関してはあまりにも小さく見えすぎてしまったんです。これじゃダメだと思い急遽大きい方のテーブルをまた作って送ったこともありました」。

黄瀬が一番好きだというMADRE MESCAL。作り手の2人がショールームお披露目イベントに来た際、15年ほど前からトラックファニチャーのファンであることが発覚したのだという。そうした驚きの出会いやつながりもロサンゼルスの魅力の一つであると黄瀬は言う。
ロサンゼルス特有の新たな刺激

こと空間の構築という点では、日本とはなる状況の中苦労することも多いというが、それ以上に現地で受ける刺激が黄瀬のインスピレーションに大きく影響しているのだという。
「建築と家具づくりを行なっている、ジョンというスティーブンの友人の事務所へ行ってショールームを見せてもらったことがあったんです。全然自分とは違う感性でものづくりをしている人だったので、正直最初はあまりピンときませんでした。ただ彼がデザインしたある会社のオフィスビルの空間のサイズ感や抜け感の中で、彼が作っている家具がダイナミックに配置されているのを見ていると、そのハマり具合が本当に調和が取れていることに気づいたんです。細かい所を見れば作りは粗い部分もありましたが、アメリカ特有の“そんな事どうでもいいわ”と思わせるスケール感に圧倒されてしまいました。作りが粗いところまでをも乗り越えた格好良さに衝撃を受けたんです。それが自分のものづくりにどう活かされるかは現時点ではまだわかりませんが、数時間飛行機に乗っただけで、これだけ違う世界が広がっているのか、という感覚はやはりいつきても衝撃的ですね。ロサンゼルスにくれば自分の頭の中のいい切り替えになるし、新しい刺激を受けることができる。そういった意味ではこの場所にショールームを構えることができたことは自分たちにとってすごくプラスなんです」。コロナの期間を終えて、本格的に動き出したショールーム。今年の3月にはスペースのお披露目会と称してイベントが行われた。ここロサンゼルスではショールームを実際に尋ねる人々も個性豊かな人が多いのもポイントだという。「ショールームに来ていただくお客さんも、やはりグローバルというか個性的な人がすごく多い。ある時、詩人の方が訪ねてきたことがありました。ひと通りスペースや家具の説明を終えると、ちょっと1人でしばらく座らせてくれと言うんです。何をするかと思っていたんですが、小一時間座った後に、作った詩を披露してくれました。ヒップホップのアーティストがコーデュロイのソファーに座った後の感想をサンドウィッチに例えて説明してくれたこともありました。その説明自体が、韻を踏んでいて、音楽になっているんです。そのようにいろいろな人が自分の家具を体感して感動してくれてその人なりの伝え方で感情豊かに感想を伝えてくれる。そんな感覚は今までにはかったので楽しいです。ロサンゼルスだからこそだと思うのですが、そんな人達と会話したり触れ合えるだけでもいい刺激になっていると感じています」。
同じ家具でも、見る人が違えば異なる感想を持つ。それはもちろん当たり前のことだが、風土がまったく異なる大阪とロサンゼルスという2拠点での活動において、その土地土地の人々から得ることのできる経験は多いと語る黄瀬。そのインスピレーションは蓄積され、やがて新たなものづくりへと反映されていくだろう。実際に体験して買うという創業当時の伝統を守りながら。

仕事の合間には、友人であるスティーブン・ケンと気分転換にバイクで2、3時間ツーリングを行う。趣味の時間のゆっくりとした時の流れは、頭を切り替える手助けとなっているそう。

焚き火の前でゆっくりとお酒を飲むために作られたチェア。ショールームに友人を招く際には、中庭でこのチェアに座りながら焚き火をしながらメスカルを飲むことが定番となっているという。

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https://www.truck-furniture.co.jp/

Photo Shunya AraiCoordinate Megumi YamanoEdit & Text Shohei Kawamura

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