Leica 100th Anniversary Vol.4

写真家・阿部祐介は なぜライカを選ぶのか

カメラ好きな人々は口々に言う、「ライカかそれ以外か」。カメラの特集をするうえで避けては通れない存在だ。数々の名機を生み出したライカが初めて、35mm版フィルムフォーマットを採用した初の量産モデル“ライカI”を生み出してから今年でちょうど100周年。そんな記念すべきタイミングにあたって、“なぜ人はライカを選ぶのか”を、4人の写真家のインタビューを通して考えたい。

ライカは、撮っても良い人になれる
阿部祐介

Leica M6 + Summaron 35mm f2.8
ネパールにある標高4000メートル級の村で出会った老婆。出会った瞬間、撮りたい欲求に駆られたが、老婆が仕事中だったこともあり2時間くらい待って、やっと撮ることができた1枚。

辺境の地での美しい景色、そこで力強く生きる人々。まるで音や匂いまでしてくるような臨場感のあるドキュメンタリーフォトを中心に活動し続ける写真家、阿部裕介。彼が最も多く使用するカメラはライカである。
旅先からファッション撮影まで、阿部はライカを使い続けてきた。その理由は、一言で言うと「自分の生き方と一番相性がいいカメラだから」という。
「技術や性能もありますが、それ以上に、サイズ感やシャッター音、デザイン、そしてライカが持っている思想が自分の写真との距離感にちょうどいいんです」。
阿部が最初にライカを手にしたのは大学生の頃。友人の父親からライカ M6を貸してもらうきっかけがあり、そこで初めてライカを手に取った。「最初は正直、良さがわかりませんでした。周りの友人たちはみんな一眼レフで『パシャッ』と気持ちよく撮っているのに、自分だけ音の静かなレンジファインダー。ピント合わせも難しいし、『なんで俺はこれを使っているんだろう……』とさえ思っていました。でも山に行って風景を撮影するようになってから、その違いが分かるようになりました。軽くて、小さくて、電池がなくても撮れる。シャッター音も『チッ』と小さいから、山小屋や民族の家で話を聞いている時でも、相手をびっくりさせずに撮れる。威圧感がなくて、そっとそこにあるカメラ。それが自分の撮りたいドキュメンタリーにはすごく合っているんだと思います」。
フィルムだけではなく、ライカ M11やライカ Q2のようなデジタルも幅広く使用する阿部。撮影に持っていくカメラのルールとしては、「充電ができる旅先であればデジタル、数日間充電できないような場所に行く時はフィルム」と決めている。「画質とか質感の差は、正直いまの時代だと理由の数パーセントでしかなくて。それよりも、旅先で電源が入らなくて『鉄の塊』にならないことの方が重要なんです。だから、山や辺境では電池がなくてもシャッターが切れるM4やM6のような機械式のボディを信頼しています」。
山でも街でもライカを常に持ち歩いている阿部。シャッターを切らない日はないようだ。毎日持ち歩くからこそ、見た目も重要だと話す。「正直、見た目はかなり大きな理由です。毎日首から下げて歩きたいかどうかって、結構重要じゃないですか。ライカの小さいレンズとシンプルなボディは、まず見た目が良く、気持ちが上がって、それだけで外に出て撮るきっかけになる。傷つくのを怖がってしまうより、ガシガシ使ってなんぼだと思っています。それに、コミュニケーションのきっかけにもなります。昔、友人のお父さんに『ライカは人との距離を縮めるカメラだ』と言われて、半信半疑だったけど、旅を重ねるうちに本当にそうだなと思うようになりました。どこの国に行っても、クラシックな見た目のおかげで『それ何?』、『撮っていいよ』と言ってもらえることが多い。良い写真が撮れるかどうかの前に『撮ってもいい人になれるカメラ』というのはドキュメンタリーを続ける上ですごく大事な要素なんです」。
ライカの中でもMシリーズをメインに使い続けるのに、もう1つ阿部にとって大事な理由がある。「一生の定点観測の道具」にしたいという気持ちだ。学生の頃から20代、30代と基本的に同じシステムで撮り続ける。カメラを頻繁に変えないことで、「自分の変化や写っている人たちの時間の流れがよりはっきりと見えてくる気がする」と阿部はいう。
「今はスマホでも十分綺麗に撮れるし、他社のカメラも本当に素晴らしい。でも、自分が毎日持ち歩きたいか、旅に連れて行きたいか、人に向けた時に『撮って良いよ』と言ってもらえるか。そこまで含めて考えた時に、やっぱり僕にとっての答えはライカなんだと思います。学生の頃から使っているこのMのシリーズで一生を撮り切りたい。それが、僕が今もライカを選び続けている一番の理由です」。

阿部裕介
大学在学中より、アジアやヨーロッパを旅し、写真家として活動を開始する。 2024年には、ライカギャラリー表参道にてバラナシの街を記録した個展「Shanti Shanti」を開催。俳優・仲野太賀、映像作家・上出遼平とともに「Midnight Pizza Club」を主宰。

Photo  Yusuke AbeInterview & Text  Takayasu Yamada

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