Layer of Experience CAREERING SALON
松田翔太と藤原ヒロシが語る “拡張”という更新

松田翔太と藤原ヒロシが語る
“拡張”という更新
松田翔太がアートディレクターを務めるピアスブランド キャリアリングが、ヘアサロンという新天地へ乗り出してから一年あまり。2024年7月のオープン以来、表参道という街の空気と共鳴しながら、「キャリアリング サロン バイ ケイトテイラー」は静かに存在感を増してきた。
そして来たる2026年1月5日、サロンは新たに下階へと拡張され、より立体的な空間として再スタートを切る。仕掛け人である松田と藤原ヒロシの二人に、オープンからの手応えから今回の空間設計、そして新たに挑戦したプロダクト開発の裏側まで話を聞いた。
─オープンから1年以上が経ちました。サロンの“今”をどう見ていますか?
松田 僕自身はデザイン周りの仕事が中心で、日々の営業はヘアスタイリストの木下さんに任せていますが、いつ来てもお客さんが入っているので、素直にありがたいなと思っています。このあたりはヴィンテージショップが多く海外からの観光客も集まるエリア。海外の方が通りがかりで「髪を切りたい」と入ってくるケースもかなりあるようで、そういう意味では、街の“ヴィンテージ・ストリート”のムードとキャリアリング サロンが自然に繋がってきた実感があります。
─今回、1階フロアを増床することになったきっかけについて教えてください。
松田 これは本当にタイミングがすべてでした。僕らが2階にサロンをオープンした直後に1階のスペースも借りられることになり、これはもう「やるしかないでしょ」と。考えるより先に決まったような感覚でした。
藤原 出来上がった空間を見たときに、最初から1階と2階をセットでデザインしたんじゃないかっていうくらい、自然な一体感がありましたね。前がどんなお店だったのかを思い出せないくらい、馴染んで見えました。

─1階は2階と比べて、外との距離感がぐっと近い印象です。どのようなイメージでデザインを作りあげていったのでしょうか?
藤原 店舗作りは、扉を境に“外”と“内”をはっきり分けるのが一般的。外から入った時にお店の世界観を感じられるよう、扉で空間を区切るような作りになっていることが多いんです。でもキャリアリング サロンの1階では、その逆をやってみたかった。外観のタイルと室内のタイルがシームレスにつながっていて、外からそのまま延長線上で“店”が中に広がっている。リビングからテラスがフラットに繋がる間取りのマンションが私は好きで、それに近い感覚です。ありそうでない作り方なんですよね。
松田 外と繋がっている感覚が気持ちよくて、店内も開放的で居心地がいいんですよね。タイルにしたのは、単純に僕が好きなマテリアルだという理由。タイル・ガラス・鏡という3つの素材を軸に空間を組み立てるのが楽しくて、結果として、キャリアリングのピアスが持つ“清潔な佇まい”とも相性のいい空気が生まれた気がします。
─タイルの色や配分はどのように決めていったのでしょうか?
松田 タイル選びは本当に悩みました。並べてみないと想像ができないので、画面上で繰り返しシミュレーションしてみたり。僕は割と感覚で選ぶタイプなので直感で色を決め、最終的な黒と白のバランスは、ほとんどヒロシさんの配分に委ねました。柱や天井のラインを白にするのか黒にするのかだけで、空間の軽やかさが全く異なります。個人的には全部を黒で埋めたくなるところをグッと堪えて、要素を減らしていく。そのヒロシさんの引き算のバランスは本当にすごいなと。
藤原 タイルって、本当はもっと柄を作ったり、色を足したり、デザインする上で欲張りになりやすい素材です。でもそこで逆に削ぎ落としていくと、デザインとして強度が出てきます。「ここまで引き算できるのか」というくらいまで削ぎ落としつつ、ちゃんと目的は果たしている。その冷静な雰囲気がキャリアリングらしくなったと思います。

─出来上がった1階を体感してみていかがですか?
松田 2階に比べて天井が低くなるのが不安要素ではありましたが、それがかえって落ち着きを与えてくれています。鏡で空間が左右対称に見えて、広がりも感じられるし。“整然としているけれど、冷たすぎない”というか。ごちゃっとした印象には絶対ならないだろうな、という安心感があります。
将来的にギャラリーのような使い方もできるように想定していて、梁の裏に照明を仕込めるようにしていたり、椅子も動かせるようにしています。夜は、外観の黒いタイルの一部にスポットライトを当てて、抽象的な看板のように見せる演出も考えています。髪を切った後に写真を撮る背景としても活用してほしいですね。
藤原 黒のタイルで埋めた壁が、想像していたよりも光を反射するんです。外から店内のヘアスタイリストさんの動きがよく見える作りになっているので、サロンに集まる一流のスタッフたちに、より焦点が当たるといいな、と思っています。
─一年前のインタビューでは、「キャリアリングは自分にとって大学で、藤原さんは教授のような存在」と松田さんが仰っていました。今回の拡張では、その関係性がどのように作用しましたか?
松田 ヒロシさんは僕にとっては変わらず先生です。タイル選びひとつとっても、「これはヒロシさんが好きそうだな」と思っていると、「あ、こっちを選ぶんだ」と驚かされることもあって。自分の感覚とヒロシさんの感覚を照らし合わせていくのが楽しいんです。完成した空間を見ながら、「ここはメモしておこう」と思う瞬間もたくさんあります。
藤原 僕からすると、ひたすら翔太くんの壮大な遊びに付き合わされている感じです(笑)。それがありがたいというか、自分ひとりでは思いつかないことを、キャリアリングというフィルターを通して一緒に形にしている感覚がありますね。
松田 このサロンのオーナーでもある木下さんも含めて、僕たちには共通して“整っているものが好き”っていう感覚が近いんです。タイルがきっちり並んでいる感じとか、生理的に気持ちいいと思うポイントが似ていて。結果的に、それがこのサロンの一体感に繋がっている気がします。

─藤原さんが携わるフレグランスブランド リトゥとのコラボレーションで、新しく手がけたプロダクトについても教えてください。
松田 シャンプーは、木下さんと一緒に成分から調合して、「美容室でシャンプーしてもらったときのクオリティ」をそのまま家庭用のボトルに落とし込む、というのを目標に作りました。
藤原 すごく良くて正直本当にびっくりしました。ボトルデザインや質感も含めて、ちゃんと「キャリアリングのプロダクト」として成立していましたね。髪が本当にサラサラになるし、香りもいい。
松田 ローズをベースに少しスパイスを足したような香りです。僕が心地いいと思えるバランスの香りに仕上げてもらいました。ユニセックスで使える仕上がりになっていると思います。スタイリングバームもすでに完成していて、拡張オープンに合わせてリリースします。実際にサロンでは、ほぼ全てのお客さんに最後のスタイリングでこのバームを使っているくらい、現場でも手応えのあるアイテムです。ゆくゆくは香りを3種類くらいつくって、お客さんに選んでもらえるようにするのも面白いなと思っています。

キャリアリングが最初に作ったフープピアス「PLACEBO」は、“気分を変える小さなおまじない”のような存在だった。今回の拡張で生まれた1階フロアは、その感覚をさらに大きく広げてくれる空間だ。
外観のタイルからそのまま店内へとシームレスに繋がり、鏡が光をやわらかく反射する。髪を切る前から、すでに気分が整っていくような、静かな心地よさがある。新しく加わったシャンプーやバームの香りと質感も、ここで過ごす時間を柔らかく包んでくれる。

キャリアリング サロン バイ ケイトテイラーは、ただ髪を切る場所ではなく、“日々のスイッチを入れ直すための場所”として進化し続けている。松田と藤原の趣味を延長させた遊び場であり、新しい階層を得たこのサロンで、ふっと気分が変わる静かな瞬間を体験してみてほしい。

CAREERING SALON by KATETAYLOR
東京都渋⾕区神宮前5-2-7 1,2F
03-6419-7679
月・木・金 11:00~20:00
土・日・祝 10:00~19:00
| Photo piczo | Interview Takuya Chiba Yutaro Okamoto | Text & Edit Aya Sato |











