LE LABO’s new store KYOTO MACHIYA

侘び寂び精神を体現した ル ラボの特別な店、京都町家

2024年3月。桜の開花も近づく春分の日に、アメリカはニューヨーク生まれのスローパフューマリー・ル ラボが新店舗を京都にオープンさせた。「ル ラボ 京都町家」と名付けられたこの店舗は、明治12年(1879年)に建造された伝統的な町家を改装。ブランドテーマとして創業時から掲げる「侘び寂びの精神」を体現した空間となっている。

ブランドが大切にしている価値観の一つとして、日本独自の美意識である「侘び寂び」の概念を「未完成の美」と解釈し、経年変化を粋な楽しみと捉えているという。フレグランスは身に纏ってこそであるし、時間と共に香りは変化していくという性質にも通ずる点を「侘び寂び」や「未完成の美」という価値観に見出したのだろうか。ル ラボは日本への出店数を年々増やしているが、京都町家店はその中でも特に重要な店となることは明らかだ。140年以上の時を経た伝統的な町家の床や梁、すりガラス、釜戸から出た煤が染みついた味わい深い壁、長年建物を支えてきた骨組みなどを生かすべく、地元の職人と共にリノベーションで新たな命を吹き込んだ。もともと備え付けられていた洗い場は、新しい銅製のパイプと共に再生され、バス&ボディ製品の体験スペースにするというアイディアで新たな役割を与えられている。

階段を上がった母屋の2階には、「調香の間」と「工匠の間」という特別な空間が設けられている。調香の間は調香師のワークスペースを再現し、多数のエッセンシャルオイルや調香師のメモを再現したノートが展示され、ル ラボの世界観への空想が広がる。工匠の間は日本の伝統工芸へのオマージュを捧げるアトリエスペースで、定期的に職人やアーティストを招いて展示やイベントが行われるという。取材時はオープンを記念して書道家の加茂学氏が在廊し、購入したフレグランスやキャンドルのラベルに一筆を入れてくれるというサービスが行われていた(サービスは時期によって変更されるため、詳しくは店舗に事前の確認が必要)。後世に受け継ぎたい伝統や匠の技を体感できる意義あるスペースだ。

母屋を抜けた敷地の中央部分には京都の町家には欠かせない坪庭が整えられている。水が滴る手水鉢や木々のゆらめき、むした苔が雅な、心が落ち着く空間を演出する。そんな庭の先には蔵を改装したカフェスペースが設けられている。日本では初出店となるこのル ラボ カフェは、テイクアウト専門のコーヒーや紅茶、ヴィーガンのペストリーを豊富に揃えられている。香りの体験を堪能した後は、坪庭や建物の風情ある景色とともにコーヒーや紅茶で一息をつく。これほど豊かな時間と空間の過ごし方が一体となったお店は京都内でも類を見ないのではないだろうか。

香水は時間の経過とともにトップノート、ミドルノート、ラストノートと香りを移ろわせるが、ル ラボ 京都町家の店舗体験や構造はまさにそれを連想させるほどバリエーションに富んでいる。そこには侘び寂びの精神が確かに宿り、ニューヨーク発のブランドでありながら京都の築140年以上の町家を店舗にしても自然に馴染んでいるル ラボというブランドに、改めて奥ゆかしさを感じた。ル ラボ 京都町家に足を運ぶことで新たな五感が刺激され、普段とは異なる香りに魅力を感じるだろう。

▼店舗情報
ル ラボ 京都町家
ル ラボ カフェ 京都町家
住所:京都府京都市中京区木屋町通四条上る2丁目下樵木町206番地
営業時間:10:00~19:00
Tel:075-708-3905

Photo LE LABO Text Yutaro Okamoto

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