Jaguars on Movies

映画の名シーンにジャガーあり 時代を超える名車たち

映画の中のジャガーには
スタイルや格好良さが詰まっている

車はファッション同様に自身のスタイルが表れるもの。どんな車を選ぶか=どう生きるか。ガソリンから電気へと移り変わる現代、名車と呼ばれる車たちのレガシーを改めて知ることは、これから車を選ぶに当たって大切にしていくことを見つめ直す良い機会だ。切っても切り離せない映画と名車の関係をヒントに、その魅力について考えていこう。登場人物のファッションやスタイル同様に、多くの人々を魅了し続ける映画の中の車たち。中でもイギリスのカーブランド、『ジャガー』は、その歴史や革新的なデザインによってこれまで数々の映画に劇車として登場してきた。ジャガーブランドの格好良さ、革新性を紐解いていく。

『12 Monkeys』
Jaguar XJ6
独特のステッカーカスタムが
多くの人々を魅了したXJ-6

1994年に公開された『12 Monkeys』の劇中に登場するジャガーXJ-6。謎のウィルスによりほとんどの人類が消えてしまった世界で、「12モンキーズ」という謎の言葉を頼りに真相究明を行なっていくというストーリーだが、主人公のブルース・ウィリスたちが荒廃した世界を移動する際に乗っていた車が、いたるところにステッカーカスタムが施されたXJ-6だった。高級サルーンの位置付けとして誕生したXJシリーズは、乗り心地と運動性能に優れ、80年代はイギリスの首相専用車として用いられていたほど。そんないわゆる高級車に、まるでスケートボードやピストバイクのようにステッカーを貼り付け、ラフに乗り回すシーンが印象的だった。主人公のアウトローな風貌と相まって、それまでのジャガーユーザーには想像もし得なかったこの乗り方。ストリートのマインドで高級車を乗るというスタイルが、人々の共感を得た要因のひとつなのではないだろうか。

『12 Monkeys』(1995)
監督 テリー・ギリアム
出演 ブルース・ウィリス、マデリーン・ストウ、ブラッド・ピットほか

『007 Spectre』
C-X75
技術を結集し作られた男の憧れ
コンセプトカー C-X75


言わずと知れたスパイ映画の金字塔、007(ダブルオーセブン)。この映画の中では英国車がたびたび象徴的な存在として描かれるが、ジャガーはその筆頭としてシリーズを彩ってきた。第24作目となる2015年公開のこの『スペクター』では、当時のジャガーが最新の技術を結集させて作り上げたコンセプトカー、C-X75が登場。地を這うような車高とスパルタンな見た目は、いわゆるスーパーカーと言って遜色ないスタイリングで、2010年のパリモーターショーで発表された際にも大きな話題を呼んだ。ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングと共同制作され、将来のジャガーのデザインとテクノロジーを示唆するデザインスタディモデルとして発表されたこの車。2013年には5台のプロトタイプが製造され、この作品への登場へと至る。劇中では敵役であるミスター・ヒンクスの愛車として登場し、ジェームズ・ボンドが運転するDB10とローマ市内で激しいカーチェイスが行われた。仕立て上げられたスーツに身を包んだ登場人物がスーパーカーで街中を疾走する姿は男の憧れそのもの。大人になっても変わらない、いつか自分も乗ってみたいという子供の頃からの想いを湧き上がらせてくれる1台だ。

『007 Spectre』(2015)
監督 サム・メンデス
出演 ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥほか

『Speed』
Jaguar XJ-S Convertible
ハリウッドを釘付けにした
XJ-Sの象徴的なカーチェイス

爆弾魔とSWATによる攻防を描いたノンストップ・アクション映画『スピード』。速度が80キロ以下になると爆発するように設定されたバスを、キアヌ・リーブス演じるSWAT隊員が次々と起こる問題を乗り越えながら解決していくストーリー。その手に汗握るアクションは、低迷していた当時のハリウッドのアクション映画業界に大きな反響と評価をもたらした作品としても知られている。冒頭、走行するバスに追いつこうとロサンゼルスのハイウェイを疾走する際に登場するのがジャガーのXJ-Sコンバーチブル。もはや伝説ともいえるこの名車は、ジャガーEタイプの後継車種として開発され、デザインはジャガーのCタイプやEタイプなどのデザインを手がけたマルコム・セイヤーズによるアイディアを元にしたもの。燦然と輝くLAの太陽の下で縦横無尽にハイウェイを駆け抜ける劇中のXJ-Sの姿に多くの人々が目を奪われた。ベースとなるクーペのデビューは1975年だが、劇中で使われたコンバーチブルが加わったのは1988年のこと。独特な背の低いプロポーション、ウッドと革で仕上げられた豪奢なインテリア、ハイパフォーマンスエンジンなど、まさにジャガースポーツの真骨頂ともいえる車両だ。映画は日本でも大ヒットし、国内での興行収入は70億円を記録。数多くの人々の印象に残ったジャガーの名車のひとつであることは間違いない。

『SPEED』(1994)
監督 ヤン・デ・ボン
出演 キアヌ・リーブス、デニス・ホッパー、サンドラ・ブロックほか

『Ocean’s Twelve』
XKR Convertible, C-Type
多様なジャガーのアーカイヴが
華やかな世界に彩りを添える

ジョージ・クルーニー扮する主人公ダニー・オーシャン率いる犯罪スペシャリスト集団の活躍を描いたアメリカ映画『オーシャンズ12』。マット・デイモンやブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツなど、今なお活躍する大物俳優たちが一挙にスクリーンに登場する光景は、他の映画にはない魅力がある。ヨーロッパ全土を舞台に描かれる本作では、ジャガーのアーカイヴが幾度となく登場。モンテ・カルロの街を流すXKRコンバーチブルや、コモ湖畔を走るXJ、他にもCタイプやEタイプなど往年の名車がスクリーンに華を添える。クールに一大犯罪を進める美男美女のかたわらには、常にジャガーの名車。車とともに描かれる登場人物たちの色気あるスマートな仕草を見ていると、それだけでワクワクする。ストーリーが優れていることはもちろんだが、そんな純粋な憧れの気持ちを抱かせてくれることも映画の醍醐味ではないだろうか。クラシックで品格のある多様なジャガーのアーカイヴが作品に独特の彩りを添え、間違いなく映画をひとつ上のステージに押し上げている。

『Ocean’s Twelve』(2004)
監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツほか

『Birds of Prey and the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn』
XJ-S V2
現代女性の自由の象徴
として描かれるXJ-S

ダークヒーローとして名高いバッドマンの中でも特に有名なヴィランとして名高いジョーカー。本作はそのパートナーであるハーレー・クインに焦点を当てたもの。抑圧された環境の中で、1人の女性が自由を求めて奮闘する様子が作品を通してコミカルに描かれているが、ジャガーはその中で最も象徴的なラストシーンに登場する。彼女の運転するXJ-Sがうなりを上げながら街へと消えていくこのシーンは、彼女にとっての新たなる自由への旅立ちを意味するものだ。車は行動範囲を押し広げてくれるからか、しばしば自由の象徴として描かれることが多い。2020年という現代の作品でありながらも、起用したジャガーは80年代のもので、主人公は女性。ここにこれからの映画と自動車の新たな関係性を垣間見たような気がする。これまで多く描かれてきた、格好いい車と格好いい男性の定番の組み合わせ。そんな固定概念を打ち崩す新たな時代の幕開けを象徴する本作。これまでの映画の歴史においてジャガーが密接で特別な存在であったジャガーを女性が乗るという新たな提案が、現代の人々の心を突き動かす。

『Birds of Prey and the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn』(2020)
監督 キャシー・ヤン
出演 マーゴット・ロビーほか

『How to Steal a Million』
E-Type
パリの街を彩る
鮮やかな黄色のE-Type

数多くの映画の中で象徴的な存在として描かれ続けているジャガーだが、60年代にもそんな作品が公開されていた。最も偉大な女優として名高いオードリー・ヘプバーンが主演を務める『おしゃれ泥棒』もそのひとつ。フェラーリの創業者、エンツォ・フェラーリに「これまで作られた車の中で、最も美しい車」と言わしめたEタイプが、作品の舞台となったパリの街を鮮やかに彩っている。劇中で主人公ニコルを助ける探偵の車として活躍したこの黄色のEタイプ。ジャガーの名を世界で一躍有名にしたと言っても過言ではなく、そのデザインや佇まいは今日のジャガーにも色濃く継承され、ブランドのレガシーとなっている。流れるような美麗なフォルムと卓越した運動性能を併せ持ったEタイプが当時の車業界に与えた影響は計り知れない。実際にこの作品が公開されたことが、ジャガーのアメリカでの絶大な人気に繋がったと言われている。女性のファッションアイコン的な存在であったオードリーが全身黄色に身を包み、黄色のEタイプに乗り込む姿は映画史の1ページとして強烈なインパクトを現在まで残している。

『How to Steal a Million』(2020)
監督 ウィリアム・ワイラー
出演 オードリー・ヘップバーン、ピーター・オトゥールほか

 
 

このように古くは60年代から現在に至るまでジャガーのアイコニックなデザイン、佇まい、格好良さが映画のワンシーンを形作ってきた。歴史が証明するジャガーブランドの格好良さ。映画を通して、その断片に触れることができる。そしてジャガーはこの先も変わらずに、映画を通して、もしくは実際の体験としてわたしたちに憧れや感動を届けてくれることだろう。今後ジャガーは製造する車両のEVへの移行を発表しており、これから製造される車は全く新しいデザインになるそう。これまでのレガシーを受け継ぎ、新たに生まれ変わるジャガー。2025年に発表されるジャガーブランドの新たな時代の幕開け、そして今後映画に登場する際の姿に期待せずにはいられない。

Edit & Text  Shohei Kawamura

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