Hayato Maki

眞木勇人が語る沖縄の海の魅力 [眞木勇人/サーファー、 スピアフィッシャーマン]

水中銃を持って魚が居そうな穴を探す眞木。腰に巻いたストリンガーには獲ったばかりのコロダイが。静かな水中で気配を消しながら獲物を狙う。
沖縄の海とともに生きる

沖縄ほど素晴らしい海はない

沖縄の魅力は?と聞けば、大多数の人が「海」と答えるだろう。そんな、沖縄最大の魅力である海のスペシャリストが眞木勇人
だ。北谷に海にまつわるアパレルやギア、アクティビティの店「Oceans Mercantile」を構える眞木は、サーフィンのシーンでは著名な人物で、パタゴニアのアンバサダーも務めているほどだ。父にマイク眞木を、兄に真木蔵人を持つという家庭の中で、幼い頃からキャンプから釣り、スノーボードなど自然でのアクティビティに慣れ親しんだ眞木。サーフィンは中学2年生の時に移住したハワイで兄の影響で始めたという。
「一番最初のサーフィンは、兄に連れられて。今考えるとかなり危険な場所に連れて行かれて板だけ渡されて。何も教わらず、兄は先に行ってしまうから、見よう見まねで追いかけて行ったら波に飲まれて岩に打ち付けられ、全身血だらけ(笑)。それが最初のサーフィンでした。自分で学べという教えで、悔しくて練習しているうちにのめり込んでいったんです」。
そんな眞木が、現在の沖縄に引っ越してきた理由はやはり海だったという。ハワイから帰国後は、東京や千葉でも暮らしてきたが東日本大震災を機に沖縄に家族で引っ越した。
「初めはそんなに長く沖縄にいるつもりは正直ありませんでした。でも、こっちにきてサーフィンや素潜りをしているうちに沖縄の海の魅力に惹かれていった。沖縄の海は透明度が高くて世界一綺麗だと僕は思うし、波もすごく色々なバリエーションがあってサーフィンをするにも最高なんです。台風が来ると北谷のビーチでも6メートルくらいの波が出たり。世界中の海に行っていますが、沖縄ほど素晴らしい海はないんです」。

波があればサーフィン
波がなければ素潜り

眞木は、店の経営やツアーもおこなっている傍ら、全国のイベントなどでの活動をこなす多忙な中でも、海に入らない週はまずないようだ。波があればサーフィン、なければ素潜りをするのがライフワークだという。取材日は無風で波がなかったために素潜りをおこなった。素潜りといっても眞木はダイビングのようにただ潜るだけではなく、水中銃を使用して魚を捕るというスピアフィッシングの名人でもある。あまり聞きなれないスピアフィッシングだが、どのようにおこなうのか。「これまでの経験で狙っている魚がいそうな場所を目指して船を出して、そのポイントで潜ります。今日だと水深20メートルくらいのところを潜りましたが、上から見てもよっぽど澄んでいない限り魚は見えない。底で待っていると、穴から出てきたりするので、そこを突くんです」。
30分ほどの間にこの日、眞木が捕らえた魚は、アカジン、コロダイ、カーエー、マクブの4種。どれも美味で高級魚だ。筆者は釣り好きで、釣り好きからするとなかなか魚が釣れないという状況でいかに工夫して1匹を狙うかというところに面白みがあると感じているのだが、スピアーフィッシングの面白みはどういうところか。
「今日はいないなと諦めかけた時に横を見るとものすごい大物がいたり、そういう瞬間が楽しいですね。それに泳ぐだけでも気持ちが良くてチャレンジしてみると楽しいと思ってもらえると思います。それで魚が獲れたら、みんなで食べたり。スピアーフィッシングだと、魚が一番良い状態で食べられるんです」。
それもそのはずで、魚は獲れた瞬間にいかにストレスを与えず絞めるかで鮮度が変わり、その後の美味しさに繋がるのだ。その点、スピアーフィッシングであれば魚の脳天を狙い撃ちするために、極限までストレスを与えることなく絞めることができていた。加えて、「糸や仕掛けなどどうしてもゴミが出てしまう釣りに比べて、ゴミが出ないスピアーフィッシングは環境的にも利点がある」と真木はいう。漁業権も持っているために、獲った魚を市場で卸すことができ、鮮度が良いことから眞木の魚は好評だという。眞木にとってスピアーフィッシングは、遊びではなく仕事であり、食べるために潜って魚を獲るというプリミティブな行動だ。
では、サーフィンの魅力は眞木にとってなんなのか。
「ツアーで教える時も、僕は型にハマらず波に乗る楽しさを教えています。サーフィンって自由だから、別に立たなくても良い。寝そべっても良いし、正座でも、逆立ちだって良い。とにかく、波のエネルギーに乗っかれば気持ち良い。それだけを伝えたいんです。でもいつ良い波が来るかわからないので、あまり先の予定は立てられないんです。ツアーでも2ヶ月先にサーフィンの予約が入ることがありますが、約束ができないためにタイミングさえ良ければ、という返事になってしまう。全く、波がない時は今日みたいに素潜りを勧めたりしますね」。

Left 眞木が所有している船が停められている北谷の浜川漁港から出船。海の景色が眞木にはよく似合う。取材日は無風で天気もよく、絶好の素潜り日和だった。
Right 取材時に30分ほどの時間で水中銃を使用して仕留めたアカジン(上)とコロダイ(下)。このほかにもカーエーとマクブの4匹を仕留めた。
海を楽しむための店
Oceans Mercantile
[オーシャンズマーカンタイル/
ショップ]

Oceans Mercantile
沖縄県中頭郡北谷町港 7-2
098-926-3030 @oceans_mercantile
北谷のビーチ近くに位置し、眞木がオーナーを務める店、オーシャンズマーカンタイルでは、海にまつわるアパレルやギア、体験ツアーも行う。
沖縄の海を通して
人々を健康にしたい

眞木が代表を勤めるシンプルライフアドベンチャーという、サーフィンや素潜りなど海にまつわる様々なアクティビティの体験を行う活動があるが、その体験を通して人々に環境問題への意識に繋がればいいと考えている。「都市で日々忙しく働いている人が、沖縄に来て綺麗な海に入ることでとてもリフレッシュすると思うんです。つまり海に入るだけで健康的になれる。人間も自然環境の一部だと思うし、自然が壊されているって人間が壊れているからだと僕は思う。その人間を自然的に治してくれるのが海の存在なんだと思っています。ゴミを拾うなどの活動も大事ですが、それよりも根本的に人間を直すことが、自然の健康にも繋がるのだと僕は思っています」。
例年であれば梅雨時期にも関わらず、この日は珍しく快晴。沖に出て、少しの緊張を持って初めて潜る沖縄の海は陸から見るよりも圧倒的に綺麗だった。それに加えて、視界に映る色とりどりの珊瑚や魚、なにも見えない暗い闇。ただ泳いでいるだけでリラックスできたことはいうまでもない。こんなに素晴らしい海を眞木は日々楽しみ、その魅力を世界に伝え続けているのだ。

ガレージには、サーフボードをはじめとしたサーフィンの道具から水中銃や銛などスピアフィッシングの道具などが所狭しと置かれ、体験の時にレンタルも行っている。

眞木が普段よく使用するパタゴニアのサーフボードとスピアフィッシング用の水中銃。

Photo Pedro Gomes
Photo Yuto KudoInterview & Text Takayasu Yamada

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