Column of Fashion meets Car 4 Fashion Brands & Cars

車で表現するブランドカラー

車はオーナーの性格や趣味、スタイルを映し出すが、車とファッションブランドのコラボレーションにも同様のことが言える。なぜそのブランドはその車を選んだのか。数あるコラボレーションカーの中でも名作と呼べるいくつかをピックアップし、バックストーリーを読み解いていく。

Mercedes-AMG GT × sacai


ミラークロームに輝く
サカイならではのコンセプトカー

メルセデスAMGとコラボレーションした日本初のファッションブランドが、今年11月にカプセルコレクションを発表したサカイなのは納得だった(残念ながらアイテムは日本未発売)。そのインスピレーション源となったのは、Red Pig(赤い豚)の愛称で知られるメルセデス・ベンツ 300 SEL 6.8 AMG。1971年のスパ・フランコルシャン24時間レースで驚異的な走りを見せてAMGの名をレーシングカー業界に轟かせた伝説の1台で、そのデザインコードをサカイが再解釈した。コンセプトカーと作られた特注のメルセデスAMG GTもお披露目され、伝説の名車のオマージュをミラークロームのラッピングで表現するアップデートがなんともサカイらしい。シェイプやロゴはエンボス加工され、細かなディーテルまでサカイらしさが詰まっている。

Limited Edition Maybach × Virgil Abloh


建築やファッションの要素を入れた
ヴァージルらしいアプローチ

故ヴァージル・アブローがコラボレーションしたメルセデス・マイバッハ S 680 4MATIC。マイバッハはメルセデス・ベンツの中でも最もラグジュアリーなクラスの一つで、オーナー自身は運転せず後席でくつろぐような乗り方が多いと言われている。そのため後部座席は非常にゆったりとしており、居住空間さながらの広さを持つ。ヴァージルは大学で建築を専攻していたため、マイバッハの建築的な構造に惹かれてコラボレーションをしたのかもしれない。砂漠をイメージしたコロラドベージュと黒曜石のようなオブシディアンブラックのツートーンを、都会的な超高級車であるマイバッハに合わせるのもヴァージルらしくユニークだ。足元にはコロラドベージュに塗装したホイールを履かせており、スニーカーのような遊び心も感じる。

Mercedes-Benz CLK Designo × Giorgio Armani


ジョルジオ・アルマーニが
自らスタイリングした一台

モード界の帝王ジョルジオ・アルマーニ氏が自らカラーコンビネーションと素材を厳選したCLK 500 カブリオレ。メルセデス・ベンツの特別注文プログラム「デジーノ」の一環として全世界限定100台で生産されたものだ。エクステリアにはアルマーニのトレードマークである艶消しのサンドカラー「マグノ・サビア」が施され、CLKカブリオレの流麗なボディラインをより効果的に演出している。乗馬の鞍をイメージさせるブラウンの最高級本革と、高級スポーツウエアにも用いられるサビアカラーのハイテクファブリックを組み合わせたシートをはじめ、ウッドパネルに代えてシートと同系色の本革を用いたドアトリムやコンソールトリムなど、アルマーニならではのエレガントなインテリアスタイリングも見逃せない。

Mercedes-AMG × Palace Skateboards


サーキットとストリートの融合

メルセデス・ベンツのスポーツ/レースラインであるメルセデスAMGとコラボレーションを重ねるストリートブランドのパレススケートボード。自動車メカニックの装いをテーマにした限定アパレルコレクションもパレスらしく秀逸だが、ストリートブランドならではのインパクト抜群なグラフィックを施したアートカーも目を惹く。パレスの旗艦店があるロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、東京の4都市ごとに異なるモデルのメルセデスAMGをキャンバスにしたアートカーが登場した。東京限定モデルは都内でもよく見かけるGクラスで、中でもAMGが手がけたハイパフォーマンスモデル「G 63」を選んでいる。白銀のボディに描かれた宇宙空間を疾走する馬は、日本ならではのファンタジー文化をオマージュしたとか。

Mercedes-Benz G-Class × Moncler


メルセデス・ベンツ史上、最もモコモコな一台

メルセデス・ベンツとモンクレールが世界観を融合させたアート作品「プロジェクト モンド G」。Gクラスをベースボディに、ルーフとホイールにはモンクレールのダウンを彷彿とさせるパフデザインがあしらわれている。Gクラスは優れたオフロード性能を備えたSUVでありながら今や街中で走っている姿が定着しているし、都会的なダウンとして人気のモンクレールはアルピニストのために開発されたというストーリーを踏まえると、都会的でありながら本格的なアウトドアに対応できるスペックを備えた両者のコラボレーションは親和性が高い。パラシュートを付けたモンドGが月面に降り立ち、ダウンジャケットに身を包んだ宇宙飛行士たちが駆け寄るという幻想的なイメージビデオもユーモアが効いているのでぜひチェックしてみては。

LAND CRUISER PRADO NEWSCAP


サステナブルをテーマにした
トリプルネームのランドクルーザー

「1台のクルマをもっと長く愛せるようにすることで、サステナブルなクルマ社会の実現を目指す」というトヨタグループのスタイルドカーブランド「CORDE by」のコンセプトに共感したザ・ノース・フェイスとバイオベンチャー企業「スパイバー」がトリプルネームとなって開発したランドクルーザープラドのコンセプトモデル。スパイバーが開発する次世代のタンパク質素材ブリュード・プロテインをシートカバーの一部に導入した世界初の一台は、環境問題対策に対する自動車業界の大きな一歩となるコラボレーションだ。デザインはザ・ノース・フェイスが担当し、同ブランドの画期的なドーム型テントである「ジオ ドーム 4」の意匠が随所に施されている。

MINI × Paul Smith


装いそのままに電気自動車化した
美しいサステナブルカー

1998年に販売されたMINIのポール・スミス リミテッドエディションの外装をそのままに電気自動車化した「MINI Recharged」。Classic Miniを電動化する「MINI Recharged」 プロジェクトと、“伝統と革新”をブランドテーマにするポール・スミスが共鳴したことで生まれた1台だ。鮮やかなブルーの外装はポール・スミスが塗装屋に依頼するときに着ていたシャツの生地の色彩にインスピレーションを得たもので、内装は必要以上のディテールは取り除けるか見直され、スピードメーターとスマートフォン用のマグネットスタンドがダッシュボードのそのほかの計器類に代わって実装されることでモダンにアップデートされている。受け継げる部分は残し、必要な部分のみ取り替える。美しいサステナブルの成功例だと言える。

Chevrolet Chevrolet STEP VAN ×
and wander


アウトドアブランドならではの
アクティブな移動販売車

都市と自然をシームレスに繋ぐアウトドアブランド、アンドワンダー。そのブランドコンセプトを積み込んで誕生したのがこのワイルドなステップバンだ。アメリカでは古くから配達用のトラックとして親しまれた1980年代のシボレーステップバンを改装し、アンドワンダーの移動販売車となって日本の各地にコレクションを届けている。重厚感のある銀色のボディは、塗装を磨いてアルミの素地を無骨にさらけ出したもの。車体にはキッチンカーのような販売用の大きな窓が新たに取り付けられ、夜のアウトドアシーンでも開店できるよう車内には照明を完備している。アンドワンダーならではのアイディアが活かされ、お客さんも買い物をより楽しめるのではないだろうか。

1965 Chevrolet C10 Pickup Truck ×
CHERRY LOS ANGELES


世代を超えて愛される
アメリカならではのピックアップトラック

カウボーイなどのワークやオーセンティックなスポーツの要素などアメリカンクラシックなスタイルを提案するロサンゼルスのストリートブランド、チェリーロサンゼルス。Silver No.20のロサンゼルス特集でも紹介しているが、同店の店舗内に置かれていたのがこの1965年式のシボレーC10 ピックアップトラックだ。古き良きアメリカの風景を彷彿とさせるクラシックなこの車体をチョイスしているセンスが素晴らしく、チェリーロサンゼルスのブランドカラーである鮮やかなキャンディーレッドに塗装されたボディやホイールも一際目立つ。実はアメリカでは、乗用車よりもピックアップトラックの方が今も売れているという事実もあるとか。

Edit Yutaro Okamoto

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