Car with Styles by Fumio Ogawa Ferrari Prosangue
Ferrariの新たな時代を証明する 革新的なデザインと不変のスタイル
自動車にとって大切なことは、独自のスタイルをもつことだ。そんなスタイルある車を自身の選択肢としての視野に入れることは、より良いカーライフを実現させていく上での非常に重要な要素である。フェラーリが2022年9月に発表して、23年にイタリア北東部の山岳地帯ドロミーティでドライブさせてくれたプロサングエは好個の例だ。プロサングエは、フェラーリ初の4ドア。全高も1.6メートルちかくある。なのに、見た目はちゃんとフェラーリだ。SF90ストラダーレや296GTBといったスポーツカーとどこかで共通するデザインアイデンティティをもっている。グリルレスのフロントマスクや、豊かに盛り上がった前後のフェンダーライン。ゴツさはなくて、エレガンスと官能性を強く感じさせるのだ。イタリア北東部に位置するドロミーティは、岩山がいたるところに隆起した独特の景観。世界遺産にも指定されているほどだ。私はそこの山岳路をプロサングエで走った。「本来なら積雪路での性能ぶりを試してもたいたかったのですが」。フェラーリ本社の広報担当者が残念そうに言ったのは、プロサングエは4WDシステムを搭載して、オールマイティな走行性能を誇っているから。「地球温暖化って実際に進んでいる気がしますよね」。と広報担当者は気鬱そうに言っていた。ドロミーティの道は、そういうわけで、ドライ路面。そのぶん、きついカーブの屈曲が続く道をいいペースで走ることができた。素直な操縦性で、軽快なフットワークでカーブを曲がっていける。その理由は、48ボルトのシステムで作動する電気モーターとダンパーを組み合わせたアクティブサスペンションシステムにあるようだ。「このシステムが出来なければプロサングエは完成しなかった」。と技術部門を統括するフェラーリのジャンマリア・フルゼンツィ氏はかつて語っていた。このクルマのためにいろいろ手を加えた6.5リッターのV型12気筒エンジンを前車軸のうしろに搭載。12気筒も、フェラーリにとって大事なアイコンである。もちろん、それだけでなく、力がたっぷり。静止から時速100キロまで加速するのに要する時間は、スーパースポーツカーなみのわずか3.3秒。すごい加速力だ。前車軸と後車軸のあいだの距離であるホールベースが3メートルを超えることもあり、V12をフロントミッドシップにしていても、車内は175センチの人間が前後に座ってもまだ余裕があるぐらい。「どの席に座ってもスポーツカーに乗っている気分を味わえることがフェラーリにとっては大事です」。ヘッドオブデザインのフラビオ・マンツォーニ氏の言葉どおり、後席もしっかりからだをホールドしてくれて、ドライバーとの一体感を感じられるほどなのだ。フェラーリの存在意義は、世界最高のスポーツカーであるフェラーリを作ること。ブランドの哲学をしっかりと踏襲しながら、時代の風とともに新たなスタイルをまとい生まれたSUV。プロサングエは、そのよき証明である。
小川フミオ
自動車誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を経て、現在はフリーランスのジャーナリストとして活躍中。雑誌やウェブなど寄稿媒体多数。
Text Fumio Ogawa | Edit Shohei Kawamura |