Car with Styles by Fumio Ogawa
音楽ともうまく付き合える ミニ・カントリーマンが気持ちよい
全長×全幅×全高 = 4445 × 1845 × 1660mm/ホイール ベース 2690mm/車重 1620kg/エンジン 1995cc 4気筒 ディーゼル/最高出力 110kW/最大トルク 360Nm/価格 5130000/7 段ツインクラッチ変速機/前輪駆動(1498cc ガソリン「C」、1998ccガソリン4WD「S ALL4」、パワフルな1998ccガソリン「JCW」、バッテリー駆動の「オールエレクトリック」もラインナップ)
mini.jp/ja
今更言うまでもないけれど……クルマと音楽はたいへん密接な関係にある。乗っていて音楽を聴かない、ってひともいるようだけれど、ウインドスクリーン越しの風景と、車内の音楽とがぴったりマッチした瞬間を体験したことがある人なら、なんてもったいないって思うかも。
1950年代の米国車ではレコードプレイヤーのオプションがあった。ただしダッシュボードのスペースが限られているため、12インチのLPレコードは無理で、7インチのレコードに限られてしまっていた。盤を交換する慌ただしさったらなかっただろう。そこまでして、ひとは車内で好きな音 楽を聴きたいと思っていたのだ。
音源の進化は(ラジオはのぞいて)8トラックカセット(もう一度出てきてほしい)、コンパクトカセット、CD、ときて、いまはBluetoothを使ったスマートフォンとか、車載Wi-Fiでストリーミングが主流になってきている。
そんななか、じつにおもしろい提案をしてくれるのが、ミニだ。23年登場の「ミニ・カントリーマン」(ここで採り上げているクルマ)をはじめ、24年の「ミニ・クーパー」と「ミニ・エースマン」をして「新世代ミニ」と言う。
これら、新しい車載OS(オペレーティングシステム)を搭載したモデルでは、円形のインフォテイメントシステムが採用されているのが特徴だ。見た目のユニークさだけでなく、円形を利用して、なんとLPレコードが回っているようなディスプレイ表示が可能なのだ。長いことかけて、またレコードに戻ってきたような、懐かしいような新しいような不思議な印象だ。
「DJデッキスクリーン」と名付けられていて、音楽をかけているとき、レコードを模した表示がゆっくり回転している。それだけでなく、なんとスクラッチ可能なのだ。モニタースクリーンで回っているレコードの画像に指をあてて上下すると、まさにDJデッキの名のとおりのことができる。これはおもしろくて、私が最初にこれを体験した23年にポルトガルで開かれたメディア試乗会では、しばらく遊んでしまった。本社担当者は「若い世代に楽しんでもらいたくて(開発した)」と言っていた。あたらしい車内での音楽の楽しみ方だ。
カントリーマンには、ガソリンとディーゼル2種類のエンジンとBEV(バッテリー駆動のEV)、両方が設定されている。最新のエースマンはBEVオンリーになったので、環境的にBEVがやや使いにくいというひとには、喜ばしい設定だろう。
エンジン車もバッテリー車も、乗り心地がよく、スムーズな加速というキャラクターが共通している。上手な設定だ。しかも全長は4445ミリと都市内で使い勝手がよいサイズであるいっぽう室内は広い。かつ、ダッシュボードをはじめ、各部のデザインに凝っていて、まことに居心地がよい。クルマを超えた感じすらある。
音楽の話にもどると、東京からだと夕暮れに高速道路で西をめざす時の風景が好きで、そのとき音楽を聴くのはクルマでしか味わえない体験だと思っている。キングクリムゾンの「レッド」収録の「スターレス」とかが私の好みである。このときはDJデッキでキュッキュッはやりません。屋外でデイキャンプをやる時のために、とっておいてください。きっと楽しめるはず。
小川フミオ
自動車誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を経て、現在はフリーランスのジャーナリストとして活躍中。雑誌やウェブなど寄稿媒体多数。
Text Fumio Ogawa | Edit Takuya Chiba Katsuya Kondo |