Black Harlem

アメリカンカルチャーが根付く 沖縄らしいリスニングバー [ソウルバー ブラックハーレム /レコードバー]

沖縄随一の繁華街、国際通り。そんな煌びやかな中心部から少し離れた牧志駅すぐ近くの雑居ビル6階に位置するのが、1990年のオープンから人々に愛される名店、「ソウルバー ブラックハーレム」だ。入り口のドアノブが「SOUL」の文字になっている防音扉を開くと、暗い部屋の壁一面を埋め尽くす大量のレコードと巨大なスピーカー、間接照明に照らされたライブポスターが目に止まる。お店にあるレコードは10000枚を超えているというから驚きだ。職人気質なオーナーの翁長に話を聞くと家族の力とアメリカンカルチャーが根付く沖縄だからこそ出来上がった店だと分かった。

「昔の沖縄は家庭でアメリカのテレビを気軽に見ることができました。『ソウルトレイン』などの音楽番組もリアルタイムで放送されており、幼い頃から親しんできたソウルミュージックにいつの間にか兄弟全員が魅了されていました。音響マニアの父親の影響もあり、音楽への関心はさらに深まっていき、気づけば22歳の時に兄弟3人でこのお店をオープンしていました。スピーカーは父親から譲り受けたもので、父親が設計もしています。特定のメーカーのものを組み合わせるのではなく、ウーハー、低中音、高音とそれぞれ別のスピーカーを使い、それに合わせたアンプを配置しています。これによりアンプが無理をせず、最適な音域を出すことができ、息遣いも聞こえるほど繊細な音が出せるのです。兄弟で探し集めたレコードも今では10000円を超えるレアで高価なものが多いですが、当時はコザの基地から流れたものが5~10ドルで買うことができた。良い音楽と機材が揃う環境があったのです」。
とても一般人が作ったとは思えないスピーカーのクオリティに驚いたが、スピーカー設置用の穴を急に家に開け出したり、振動が針に伝わらないように200kgの重りをターンテーブルの土台として置いたりと、マニアの域を超える父親のエピソードの数々を聞いて納得がいった。そんなレコードへの興味から翁長は沖縄を飛び出し、買い付けのため本場アメリカへと渡る。その時に買い集めたのが壁に飾られているポスターの数々だ。
「アーニー・バーンズのオリジナルなど様々なものを買いましたが、一番貴重なのはグラディス・ナイトのサイン入りのポスターですね。アポロシアターへ毎日通い詰めて仲を深め、支配人から直接もらった思い出深い1枚です」。

取材を進める中でふと聞いた「この夏におすすめの曲は?」という質問。「その日の気持ちによって変わるからわからない」と答えた翁長だったが、取材が終わり1曲目に選盤したのはクール&ザ・ギャングの「サマーマッドネス」。彼の粋な計らいに、長く続くこの店の魅力を垣間見た。

本文中の「サマーマッドネス」の後にかけたのがフォープレイとチャカ・カーンによるアイズ
レーブラザーズの名曲「ビトウィーンザシーツ」のカバー。90年代特有の甘いメロディーとコ
ーラスにチャカ・カーンのジャジーな歌声は東京より少し気温が高い沖縄の夜にピッタリとハ
マり、まさにこの夏に勧めたくなる1曲だった。

Soul Bar BLACK HARLEM
沖縄県那覇市牧志2-7-22 コスモビル 6F
098-866-8912

Photo Yoshiyuki OngaInterview & Text Katsuya Kondo

Related Articles