Bar stereo [高田馬場]
名だたるDJたちが集う バー ステレオの魅力
選曲の自由さと美味い酒
沖野修也、須永辰緒、松浦俊夫、黒田大介、大塚広子らをはじめとした錚々たるDJたちが、こぞって毎週末イベントを行うバーがある。高田馬場に隠れ家のようにある〈Bar stereo(バーステレオ)〉だ。大通りに面していながら、学生街の喧騒からは切り離された大人の遊び場として通う人が多い。今回の企画で沖野と須永の両者がお気に入りとして挙げたこのお店。なぜ名だたるDJや音楽好きたちが集うのか。その理由を2人に聞いた。まずは沖野から。
「本来はクラブで踊らせる曲をメインにするDJとして活躍するベテランたちが、〈Bar stereo〉だとリスニングミュージックを多く流すのが最大の特徴です。これだけのメンツが、しかも高田馬場でレギュラーイベントを持っているということだけでもいかに珍しい存在かわかりますよね。オーナーの下田さんは六本木にある老舗ジャズクラブ〈ALFIE(アルフィー)〉で店長を務め、バーテンダーやサウンドシステムの担当として経験を積んだ方。音楽やお酒に対する熱意や経験が豊かで、人柄にもみんな惹かれています。ジャズクラブにいた人が、ライブではなくレコードで音楽を楽しむ空間を作り、新旧問わずいい音楽をDJたちに自由に流させている。そのコンセプトにとても共感します。僕や須永さん、松浦くんがクラブで回すときとはまた違う、〈Bar stereo〉だからこその選曲を楽しめる特別な空間です(沖野)」。
須永は自身のDJイベントのときだけでなく、仲のいい松浦俊夫が回すときなどにも足を運び、〈Bar stereo〉での音楽体験を楽しんでいるようだ。「高田馬場は再開発があまりされていなくて、昔からあるジャズクラブや飲み屋が今も多く残っています。早稲田松竹のようなミニシアターもあり、下町として今も愛され、独自の文化を形成しています。その中で〈Bar stereo〉は音楽パートを代表するお店。活気がありますね。近くにある早稲田大学のモダンジャズ研究会に代表される音楽好きな学生も熱心にDJを聴きに来てくれています。いい音が聴ける場所としてしっかり認知されていて、そんな雰囲気の中でDJをできるのは心地いいですね。音楽とお客さんへの愛に溢れた店主の下田さんも魅力的な方なので、ぜひ話しかけてみてください(須永)」。
沖野や須永をここまで魅了する〈Bar stereo〉。店主の下田自身はどのような空間を作りたかったのだろうか。「バーっぽくないお店にしたいと思っていました。開店からいろいろな出会いに恵まれ、土曜日は沖野さんや須永さんたちをお呼びしてのDJイベント、日曜日はアマチュアや若手DJに回してもらっています。平日は僕が アンビエントやジャズのレコードを流し、 穏やかな雰囲気でお酒を楽しんでもらえます。だから平日と休日では全く別店舗のようになんです。DJをしてくれる方たちは、“個人的に好きな曲や、みんなが知らないようないい曲をここでは流したいと思わせられる”と言ってくれるのが嬉しいです。そうやってDJたちの間で口コミが広がっていき、今では毎週のようにイベントをすることになりました。僕は昔、青山にあったクラブ〈BLUE(ブルー)〉によく通い、沖野さんや須永さん、松浦さんたちのDJを見ていました。それから年を取り、クラブとはまた違う場所に音楽を求めるようになりました。それが〈Bar stereo〉を始めたきっかけでもあります。だから今は彼らの曲をこの店で楽しめるのはとても贅沢だと思っています(下田)」。店のサウンドシステムは、JBL 4312のスピーカーを2種ずみ重ねたものを店の左右2箇所に置き、SANSUI(サンスイ)のアンプやCompact Disco Soundsystem(コンパクト ディスコ サウンドシステム)のミキサー、Technics(テクニクス)のターンテーブルなど国産メーカーを組み合わせている。レコード針はNAGAOKA(ナガオカ)を独自にカスタマイズして楽しんでいるようだ。そうして生み出される音は、20席程度の広くはない店内で大音量を出しても会話ができる不思議な優しさと奥行きがある。土日のイベント時にはサービスで自家製のレモンサワーやサングリアが一杯500円で振る舞われ、下田が〈ALFIE〉で磨き上げたバーテンダーとしてのお酒の腕前に舌鼓を打ちながら、名DJたちのプライベートな選曲に酔いしれることができる。
Bar stereo
東京都新宿区高田馬場2-8-3 佐々木ビル東館 2F
Bar stereo web site
Photo Masayuki Nakaya | Interview & Text Yutaro Okamoto |