BAR Inc [心斎橋・大阪]
ハイブリッドに味わう 最先端の音と上質な酒
ハウスやテクノの新譜、いわゆるダンスミュージックを浴びるために訪れた場所で、趣向を凝らしたお酒の美味しさに驚いた経験が今までにあっただろうか。正直なところ、そういった場面でお酒が持つ意味は深まっていく夜を盛り上げるため、酔うためのものにとどまっているように思う。大阪の中心地である心斎橋に位置する〈BAR Inc(バー インク)〉は、訪れる者すべてに感動を与えるドリンクのクオリティが担保されている。2024年2月にオープンしたばかりのここは、前出の〈INC&SONS〉や〈INC COCKTAILS〉の系列として、神戸で2008年に幕を開けた初号店(現在は閉店)の名を引き継ぐ形でスタートした。ヴィンテージ要素が散りばめられたほかの2店とは一線を画す、ソリッドなムードが漂うクラブのような空間で、確かな腕のあるバーテンダーがカウンターに立ち、系列の店舗でレシピをシェアしているこだわりのお酒を提供する。
音楽を浴びることだけを目的に来れば、本格的なお酒の美味しさに衝撃を受けるし、上質なお酒を求めて足を運べば追求された音質の良さに圧倒される。そのハイブリッドな魅力こそが、ここでしか感じられない特別感を生み出している。
居心地の良い音の中で
お酒と向き合う非日常空間
打ちっ放しコンクリートの壁とあらわになった天井の配管。店の作りはインダストリアルな第一印象だが、INCグループならではのヴィンテージへのこだわりはこの店にも確実に息づいている。「DJが入る日はダンスミュージックが中心ですが、ほかの日はラウンジのようなアンビエントが流れることもあります。どんな音楽にもフィットする内装にしようとすると、必然的にソリッドな方向性に定まっていきました。ただ削ぎ落とすのではなく、ほどよく古さを感じるものも組み合わせています。たとえばバーカウンターの照明は1930年ごろにドイツの工場で作られたもの。空間の構想が完成したときにこの照明がフィットすると感じ、知り合い伝いで個人のコレクターの方に辿り着き、福岡にあるご自宅まで車で伺って購入しました」。マネージャーの大西が語る店が完成するまでの経緯からは、地下一階という立地や元銀行金庫ならではの天井の高さも相まった非日常的な空間を心地良い場所に仕上げるためにどれだけ心血を注いだかを感じることができる。座ってお酒を味わうも、お酒を片手にDJブースの前で音に揺れるも自由。それぞれの過ごし方に寄り添う上質な音楽と、確固たるクオリティのドリンク、その両方が居心地の良さを作り上げる。そして歩ける範囲に系列の焼き鳥店〈FREDDIE BIRD〉と〈INC&SONS〉があり、各店が異なる目的に応える。大阪のナイトライフがINCを中心にさらに濃度の高いものになっていくことは間違いないだろう。
大阪府大阪市中央区南船場3-10-19 銀泉心斎橋ビルB1F 06-6210-2277
@bar_inc_osaka
AUDIO DATA
MAIN SPEAKER : d&b audiotechnik ALi60 Loudspeaker, Yi-SUB Subwoofer
AMPLIFIER : d&b audiotechnik 40D 4-ch Amplifer NL4
FOLLOW SPEAKER : d&b audiotechnik 8S Loudspeaker
FOLLOW AMPLIFIER : d&b audiotechnik 10D 4-ch Amplifer
TURNTABLE : TECHNICS SL-1200MK7
CARTRIDGE : 100SOUNDS RC-DJ100
CDJ : PIONEER CDJ-3000
MIXER : PIONEER DJM-A9, ISONOE ISO420
ESSENTIAL MUSIC
BAR Incを象徴する10曲
01 Alex Kassian『A Reference To E2- E4 By Manuel Gottsching』
02 NicolaCruz『Kinesia』
03 Wata Igarashi『Agartha』
04 Aoki Takamasa『SSP』
05 Ge-Ology feat.Mark De Clive-Lowe -『 Moon Circuitry 』
06 Dego『LoveWasNeverYourGoal』
07 Benedek『Zebrano』
08 Satoshi Tomiie『MagicHour』
09 Mogwaa『 07307』
10 Tornardo Wallace『 Lonely Planet 』
Photo Asuka Ito | Interview & Text Aya Sato |