Up & Coming Design Company NM3

世界が注目するデザインカンパニーNM3 そのブランド哲学に迫る

NM3という名を聞いたことがあるだろうか?建築家の経歴をバックグラウンドに持つ3人のイタリア人デザイナーが、2020年に共同で設立したデザインカンパニーだ。アルミ、スチールをベースに正確に計算し尽くされたソリッドな美しさを讃えるデザインの数々はファッション界からも注目を集め、名だたるファッションブランドたちと早くからコラボレーションしてきた。そんなNM3のプロダクトがこの春より日本で目にすることができるようになるという。謎多き注目ブランドのフィロソフィーを探るべく、デザイナーのニコロ・オルナギとフランチェスコ・ゾルツィに話を聞いた。

ーNM3の活動内容について教えてください。

フランチェスコ・ゾルツィ(以下フランチェスコ):建築家のニコロ・オルナギ(Nicolò Ornaghi)と私、そしてフォトグラファーのデルフィノ シスト レニャン(Delfino SistoLegnan)の3人で2020年にミラノで設立しました。当初はプロダクトデザインをするつもりはなかったのですが、建築デザインの依頼を受ける中で私たちの世界観を表現するインテリアのデザインなどにも徐々に着手するようになりました。歴史を振り返ると尊敬する数多くの建築デザイナーたちも、建築の一環としてプロダクトデザインを手がけています。今でこそ資格や学歴で“建築家”、“プロダクトデザイナー”といった肩書きが明確に分けられることが多いですが、そういったカテゴライズを取り払い、自分たちが学んできた建築を通して幅広くものづくりをしています。

そういった意味では私たち自身も自分たちの作品をカテゴライズしていません。プロダクトデザインも建築の一つと認識しており、建築で学んだ構造や組み立てと同じ考え方でアイデアを練ります。建築には、新たな技術を貪欲に取り入れていくというより、すでに存在している技術を組み合わせて新たな視点を生み出す性質があります。見たことのない形を作ることより、私たちがクールだと確信しているベースを変えることなく、新しいものを作っていくことを意識しています。

ーアルミやスチールの素材を組み合わせたソリッドで美しいデザインがブランドの特徴だと思います。素材選びやデザイン理念に対する考えを教えてください。

ニコロ・オルナギ(以下ニコロ):大学在学中の2016年頃からNM3の前身となるRaumplan(ドイツ語でSpace Planの意)というカンパニーの運営をはじめ、ミラノを中心にエキシビジョンをホストしていました。当時手掛けていたデザインはブラックのアイアンのメタルシートを組み合わせたものが軸でした。その頃から今のアイデンティティにつながるものづくりが始まっていたと思います。

私たちはブランドのキャラクターや哲学を、言語のようなものだと捉えています。新しい言語を習得しようとしても最初からうまくいくことはありません。それと同じように、デザインも時間をかけて自分たちの表現や言語を確固たるものにしていくイメージでいるので、失敗に対して恐怖を抱かずに試行錯誤を繰り返しながら良いものを作っていこうと考えています。

ー建築ではなく、プロダクト単体で空間に存在するときのことをどのようにイメージしていますか?

フランチェスコ:私たちがつくっているものは力強いアートピースではないので、その空間に美しく馴染むものであることが一番の理想です。これまでさまざまな世界観の場所にプロダクトが置かれる姿を見てきましたが、モダンな空間にとてもよくフィットするのはもちろんのこと、クラシカルな空間にNM3のプロダクトを置いても特別な見え方になります。私たち自身の経験からも、あらゆる場所に溶け込むピースであるということを噛み締めて感じています。

ーそれがまさに、ファッション界からの反響が多い理由なのではないでしょうか。

ニコロ:ファッションブランドの服やプロダクトを映えさせる什器として魅力的に感じてもらえることはとても嬉しいこと。私たちはミラノを拠点にしているので、物理的にファッションのクリエイターたちと出会う機会が多いんです。通常の建築の仕事は構想してから形になるまでに数年かかりますが、ファッションの業界はシーズンに合わせて動くのでスピード感が早く、そこに合わせてプロダクトデザインを作り上げていくのはとても楽しいことだと感じています。

フランチェスコ:数々の素敵なクリエイターたちと仕事をしてきましたが、中でもNM3の設立初期である2021年にヴァージル・アブローから直接声をかけてもらいオフホワイトとコラボレーションしたことは印象的です。それは当時の私たちにとっては初めてのビッグプロジェクトで、とても光栄だったのと同時にデザインを通して新たな挑戦ができた経験になりました。鉄とガラスを組み合わせたオブジェクトに、たくさんの植物とグラフィティのアートワークを施してヴァージルの世界観を表現しました。

フランチェスコ:最近は、スラム ジャムとイル・ストゥディオとのコラボレーションでタイムカプセルのインスタレーションを制作しました。イル・ストゥディオのドキュメンタリーに登場する宇宙船のデザインからインスピレーションを受けたもの。中には37人のアーティストの作品が入っていて、実際にタイムカプセルとして50年後の2074年に再度公開する予定です。

ファッションシーンとのコラボレーションは、声をかけてもらう時点で私たちの言語(キャラクターや哲学)を理解してくれているケースが多いので、とても良いプロセスで仲を深めていくことができます。世代の近いクリエイターも多く、プロジェクトを進める中で趣味などの共通点を見つけてシェアできるので、一緒にやっていくことが楽しいです。

ーCIBONEで日本で本格的な取り扱いが始まります。日本の人はどんなことを感じて欲しいですか?

ニコロ:実は私たちはまだ日本に行ったことがないのですが、ヨーロッパのクリエイターに日本のことを聞くと、口を揃えてCIBONEに並んでいる作品の話をしていました。とてもモダンでセンスのあるお店だと聞いたので、ミラノのデザインウィークでCIBONEチームに出会い、私たちの作品をお店に置いてもらえることになった時はとても嬉しく思いました。
日本人のものづくりに対しての姿勢やディテールへの丁寧な作業は素晴らしく、日本の建築とプロダクトデザインに大きなリスペクトを持っています。日本の人たちにも私たちのディテールに対しての情熱やマテリアルに対しての気持ちを感じ取ってもらうことができたら幸いです。

【INFO】
NM3 LAUNCH EXHIBITION
展示会期:2025年3月1日(土) – 3月16日(日)
会場:CIBONE
住所:150-0001 東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE B1F

彼らの作品がファッション界をはじめとして多くの人々の心にダイレクトに刺さるのは、建築を背景に持つ彼らのスタイルがブレることなく、全ての作品に共通して反映されているからなのではないだろうか。今回CIBONEでの本格ローンチを記念して、スツールからキャビネット、ダイニングテーブルなどの大型作品を含む約15アイテムが一同に会する展示が開催される。CIBONEがセレクトする2025年春夏シーズンのファッションアイテムとともに展示となる本展。NM3のプロダクトの洗練された美しさと、ファッションとの融合をぜひ実際に目で見て確かめてほしい。

Interview Yutaro OkamotoTranslate Kosuke AdamText & Edit Aya Sato

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