Unique Watch Store 02 Curious Curio
キュリオスキュリオが語る ミリタリーウォッチの魅力
時計の選び方や着け方に個性があるように、時計店にもその店ならではの美学がある。ヴィンテージウォッチとひと口に言っても、ドレスやミリタリー、スポーツなどジャンルは多様だ。選択肢の広い時計の世界で、オリジナリティある専門性と審美眼を持ち、新たな価値観を提案する個性豊かな店を訪ねた。
南青山の閑静な住宅街の中に、キュリオスキュリオはひっそりと店を構えている。取材日は平日だったにも関わらず、店内は多くのお客さんであふれていた。ここは全国でも珍しいヴィンテージミリタリーウォッチの専門店としてマニアたちから高い信頼を集めるお店だ。ヴィンテージミリタリーウォッチが持つ魅力とはなんなのか、代表の萩原に話を聞いた。
「元々は設計事務所で働いていたのですが、多忙な日々の唯一の癒しがミリタリーウォッチでした。イギリス陸軍のレマニア・ダーティダースを購入したところから始まったのですが、気付けば趣味の域を超えるほど夢中になり、31歳の時に設計事務所を辞めてヴィンテージの時計店に就職しました。5~6年勤めて自分のお店をオンラインからスタートしたのですが、開業当初はお金がなく、親戚の製本業とのダブルワークをしていました。徐々に軌道に乗って、実店舗を開店したのが約10年前。少しずつ理想型に近づいてきているなと感じています」。
設計事務所を辞めるほどにヴィンテージミリタリーウィッチに魅了された萩原だが、その最大のロマンについて説明してくれた。「ヴィンテージミリタリーウォッチの魅力は、実用性ある華美な装飾を抑えた質実剛健なデザインと謎の多い裏蓋のマーキングです。国や年代によってさまざまで、軍や国のマーク、ミルスペック、管理コード、メンテナンス歴などが刻印されています。1950年代以降のNATO加盟国なら、NATOストックナンバー記載されるのですが、数字が省かれていたりすることもあります。略号や数字から、当時の軍隊構成を紐解けるものもありますが、意味がわからないものも多い。ミリタリーウォッチのコミュニティでも議論されているんですが、答えが出せないこともあります。ただ、それも面白さだと思うんです。裏蓋を見て時計を選ぶなんて、ミリタリーウォッチでしかできない楽しみ方ですよね(笑)。男性はメカやモノに詰まったストーリーにロマンを感じる生き物。ミリタリーウォッチには男心をくすぐる要素が凝縮されているんです」。
そんな彼は時計アクセサリーブランド「アキュレイトフォルム」も運営している。時計店とブランド、二足の草鞋を履くようになった理由はなんだったのだろうか。“アキュレイトフォルム”は、キュリオスキュリオの実店舗を作った時に立ち上げたブランドなのですが、当時はヴィンテージミリタリーウォッチに合うベルトが販売されていなかったんです。特にミリタリーウォッチはバネ棒ではなく、はめ殺しのものが多いのでNATOベルト以外の選択肢が少なく、それも解決したかった。色々と探している中で、昔のレザーベルトは細い糸で縫われていて、ステッチが今よりも格段に細かいことで上品な仕上がりになっていることに気がつきました。ヴィンテージの良さを残しつつ、革やディテールに改良を加えた製品作りを行なっています。今では腕時計用の台座もメイン商品として展開し、多くのお客様のニーズに応えられるようになりました」。萩原の目標はミリタリーウォッチの魅力をより多くの人に届けること。この奥深い世界を堪能するために、ぜひ一度お店を訪れてはいかがだろうか。ミリタリーウォッチの一番のファンである萩原が余すことなく、その魅力を伝えてくれるだろう。
Curious Curio
東京都港区南青山4-26-7 +8ビル 302
03-6712-6933
Photo Naoto Usami | Text & Edit Katsuya kondo |