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地産にこだわった料理と空間で ありのままの沖縄を味わう [榮料理店/レストラン]

漆喰で固めた鮮やかな赤色の瓦が美しい。強い陽射しを遮る深い雨端や、涼しい風を呼び込む大きな窓も、琉球の時代からの伝統的な建築様式。

那覇から車を40分ほど走らせて国道からそっと脇道に入ったところに、整った赤瓦が目を惹く建物が突然姿を現す。近くには牧場があり、牛の鳴き声が聞こえてくる広く静かな場所に店を構えているのが「榮料理店」だ。偶然にはたどり着けない場所だが、わざわざ足を運びたくなるような魅力が確かにそこにはある。

沖縄の食材のみを使用することにこだわって作られているという榮料理店の料理。素材にこだわるからこそ当日の漁の成果や野菜の出来によって変動するメニューもあるという。地元の食材を用い沖縄の伝統に敬意を払いながら、現代流にアップデートした料理もこの店の特徴。例えば500年も前の琉球の時代から、おもてなし料理として振る舞われてきた柔らかく煮込んだ豚足「てびち」は、表面を高温の油で素揚げすることで新たな食感に生まれ変わっているし、ジーマーミ豆腐を揚げ出しで食べるアイディアは店主 小渡栄オリジナルのもの。独自のアレンジが加えられてはいるが、決して突飛な料理になっているわけではなく、初めて食べる者にもどこか懐かしさを感じさせるようなやさしい味わいを残している。また、豊かな日差しと水を受けて育った沖縄の野菜は色が濃く、しっかりと味があるものが多い。素材の味を生かすため、味付けを最小限に抑えた素朴で滋味深い料理になっているのだ。

「先人たちが築き上げた調理法と思いを引き継ぐことを大切にしています。あまり奇抜なことをするのではなく普遍的なことを着実に続け、年を重ねたときにより味わいが出た店にしたいですね」。そう言いながら小渡が見渡す店内も、料理と同じようにやさしくあたたかな空気で満たされていた。店内の器やインテリアはできる限り沖縄のものにこだわり、テーブルや椅子などのインテリアは無垢なもので揃えられている。沖縄らしい素朴な織物も取り入れ、この地の土や木から生み出されたものたちが一体となり沖縄ならではの寛容な心地よさをつくり上げていた。

7月から営業内容が変わり、デザートを含めた8品ほどのコースを予約制で提供する形態になる。「コース料理になると、より丁寧にお客さんと向き合わないといけないけれど、ここは沖縄なのであまり堅苦しくはしたくないんです。訛った言葉で接客したっていいし、スタイリッシュにする必要はない」。料理においても接客においても“ありのまま”を大切にしている榮料理店のやさしい心地よさを、ぜひ味わってもらいたい。

Left 沖縄に縁を持つ作家による個性豊かな器が揃う。
Upper Right 自家製ジーマーミ豆腐の揚げ出しに、ドラゴンフルーツの新芽を乗せた創作料理。
Bottom Right 家庭の炒め料理をアレンジした「海ブドウのそうめんタシヤー」。しそとほうれん草のソースを和えた香り高い味。

入口に並ぶのは、継ぎ足しながら熟成させる古酒の甕や、フルーツを漬け込んだ色とりどりの果実酒たち。

榮料理店
沖縄県うるま市石川伊波 1553 463
098-964-7733
@sakae.niraicuisine

Photo Yoshiyuki OngaInterview & Text Aya Sato

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