NICENESS Jacket
裏地に込めた 見えない美学
ファッションアイテムや、カルチャーに関連したプロダクトなど、Silverのエディターが今気になるモノを紹介する連載企画「Editor’s Eye」。

Jacket ¥132000 by NICENESS (ELIGHT Inc.)
あまりにも暑すぎる夏だった。少しでも涼しくなるためにTシャツ一枚で過ごすという味気ない日々が続いてしまったからこそ、秋になったらシャツはもちろんジャケットも羽織りたい気分が高まっている。そんなときに見つけたのが、ナイスネスのストライプ柄のテーラードジャケットだった。1920~30年代のジャケットをインスピレーションにしたデザインは、当時の人間味溢れるものづくりの良さが表現されつつ、現代のシックさも感じられる。とりわけ惹かれたディテールは、「万能の天才」と称されるレオナルド・ダ・ヴィンチのデッサンをモチーフにした総柄が落とし込まれた裏地だ。裏地といえば日本男児のルーツには馴染み深いもので、江戸時代に奢侈禁止令が出されていた状況で、少しでもお洒落をしようと考えた粋な江戸っ子たちが思い思いの絵柄を裏地や長襦袢に忍ばせ楽しんだ“見えない美学”に通じる。ジャケットでクールやジェントルマンを演じながら、森羅万象を追い求めたダ・ヴィンチのデッサンを、誰に見せるでもなく背中にそっと忍ばせるのはとても粋だ。
| Photo Taijun Hiramoto | Text Yutaro Okamoto | 

















